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Day 2

 食べ終わると店の裏に呼ばれた。

「吸うか?」

 店主が差し出した煙草を素直に受け取った。久しぶりの煙草が心地よい痺れをもたらして目を閉じた。

「そのままでいい、聞いてくれ」

 店主はゆっくりとした口調で言った。

「うちの店と契約して食べ残しを食う係をやって欲しい。もちろん賃金は払う」

 突然の申し出におれは飲み込みかけた煙草を吐き出して咽せた。


「飲食店の食品廃棄はかなりの量になる。少なめと言える客ばかりじゃないし、自分が食べられる適量すら把握していない客も少なく無い」

 油の多いスープを流したりするからグリストラップの清掃も小まめにやらなきゃならない、と苦々しい顔で店長は続けた。

「君みたいな人がいてくれると助かる」

「でも月に一万だと、ちょっと……」

 図々しいのは百も承知でそう言いかけたおれを、店主が手で制した。

「分かっている。近所の飲食店にも掛け合ってみる。みんな協力してくれるはずだ」


 次の日からおれは食事に困らなくなった。

 契約を結んだ飲食店を周り、客が残した食事を飲み込んだ。

 これが賃金の発生する労働だと思えば羞恥心も何も無かった。時折りアルバイトの大学生が嘲笑するような視線を寄越したが、意識の高い女子大生なんかは「フードロスの時代に素晴らしい」と目に涙を浮かべて腰を振った。


 やがて噂が噂を呼び、おれひとりでは手に負えなくなってきた。

 失職した友人を呼び、二人であらゆる食べ残しを片付けた。

 腹が満ちて感謝されながら金を貰える。

 こんな仕事があるだろうか?

 おれは夢を見ているみたいだった。あの無職だった、空腹に革財布を齧っていた日々は何だったのだろう?


 思い切って「ウォーキング・ディスポーザー」という会社を興したおれは、胃に自信のある人間を雇って首都圏に展開した。

 実演すれば契約は簡単だった。そして行政や業者に払う処理費用より安く契約していく。

 食品廃棄率の低下と反比例するように業績は上がっていった。おれたちは食って食って食いまくった。


 そしてとうとう、株式会社「ウォーキング・ディスポーザー」は東証プライムに上場した。

 祝賀会場に並べられた数々の料理や酒を愉しむ来賓客たち。

 我々社員一同は腹を鳴らしながらも宝石のように輝く食事には手を伸ばさない。

 笑顔で食べる来賓客たちはやがて皿を置いて宴会場を出て行った。おれたちはその背中を見送りつつ手袋をはめる。

 来賓のひとりが声をかけてきた。

「あなたたちは食べないんですか?」

 おれはそろばんを弾きながら答えた。

「皆様が食べ終えるのを待っていたんですよ」

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