5話 霊安室・呻き声と霧切の限界
00:20頃
「霊安室の前です」
【視聴中:1,591人】
『1500人越えキター!!!』
『これは歴史』
『絶対記録残せ』
『逃げんな』
(霧切、ドアノブに手をかける。手が震えている)
「……開けます」
(室内。冷蔵庫のような扉が並んでいる)
「遺体安置用の設備ですね。
全て空です」
(床に、線香の燃えかすと、枯れた花束)
「……これは、最近のものです」
『誰が?』
『墓参り?』
『遺族?』
「分かりません。ただ、
ここに人が来ていた証拠ではあります」
(その時、奥から微かな音)
――ウゥゥゥ……
『何???』
『声!!!』
『人いる?』
「音の確認のため、少しライトを消します」
『マジか』
『勇気ある』
『無理すんな』
(ライトを消す。完全な暗闇)
――ウゥゥゥ……
『動物?』
『猫?』
『いや人だろ』
(霧切、呼吸が荒くなる)
「……耳鳴りが、します」
『大丈夫?』
『顔色ヤバい』
『吐き気は?』
「吐き気も……あります」
(声が震える。初めて、明確な動揺)
「頭痛も……ひどいです」
【心配派】
『もう切れ!』
『自分が大事だよ!』
『無理するな!!』
『救急車呼べ!!』
【煽り派】
『ここで逃げるの?www』
『銀盾目前だぞ』
『チキンすぎるwww』
『登録解除するわ』
『5万人いけるぞこれ!!』
『逃げたら一生ネタにするわw』
『せめて、フォロワー1000は超えねぇとなw』
『スパチャ10万投げてやるぜwww』
(ライトを再点灯。奥の通気口から)
――ニャァァ……
「……猫、ですね」
『猫かよwww』
『そういうことか』
『ホッとした』
『でも体調は?』
「動物が迷い込んでいただけです。
ただ、僕の体調は……限界です」
「これで、全ての記録を取りました。
今から外に出ます」
『お疲れ!』
『よく頑張った』
『無事でよかった!』
『伝説だわこれ!!』
(霧切、階段を上がり始める。足取りが不安定)
「この病院には、確かに歴史がありました。
戦時中の記録、隠された事実。
ただ……」
(立ち止まる)
「分からないものは、分からないままです」
『それでいい』
『記録は残った』
『十分だよ』
『お前はよくやった!勇者だ!!』
(外に出る。夜明け前の空気)
「……外の空気が、気持ちいいです」
【最高同時視聴者数:2,347人】
配信終了。
第5話(00:20-01:00)
∙ 開始:1,591人
∙ 最高:2,347人(霊安室突入時)
∙ 終了:1,984人




