激動
"ミカエル八聖剣"その言葉を聞いた特戦員の人たちの顔は類を見ないほどに深く沈んでいた。
「ミカエル八聖剣…戦闘力はデスターとは訳が違うで、それに加えて元魔将筆頭…あまりにも部が悪すぎる……!」
ロディオさんは苦悶の表情を浮かべていた。
「援軍は!…援軍を要請することはできないんですか?」
ユーキが思いつくと同時に声を上げた。
「ダメだそれじゃあバレる可能性だって出てくるそしてそんな連絡なんてしてる時間がねぇ」
「そんな……じゃあ一体どうすれば…」
ユーキからいつもの明るさが一瞬で消えた。沈黙が続く中それを破ったのは
「そんなの決まってるでしょ…俺が!そのミカエル八聖剣とかいうやつを止めますよ!」
(俺が、俺だけは悩んじゃダメだ!)
俺が勢いよくそう豪語した。それを聞いた特戦員の人たちは少し固まった。
「ハッハッハッハお前そんなこというやつだったかのか?……だけど確かにそうだ俺らが止めなかったら誰が止めるんだって話だよなぁ!」
ビリーさんが大きく笑い俺を肯定してくれた。
「少し雑やが確かにそうやな」
粋がった発言ではあったがその言葉は確かに特戦員の人たちの士気を大きく上げた。
「と言ってもどうすんだよ相手の行動も掴めないのによぉ」
「その点に関しては!相手の行動が掴めない以上守りの陣形を固めるしかないと!私!思います!」
リルールさんが声高らかに述べた。
「確かに下手に攻めても返り討ちに合うだけか…かといって攻めなかったらタイミングはあっち側が持ってしまうか……」
ロルキさんは良策を考えるため頭を悩ませていた。
「じゃあ守りも攻めもやったらいいんじゃ?」
「簡単にゆーてくれなユーキそんなんできたら苦労しやん」
ユーキの提案を却下したロディオさんだったが思わぬ発案が出た。
「いや、アリかもしれないよ」
ルアイスさんが久しぶりに口を開いた。
「何やと?」
「相手がいつ攻めてくるのかわからない以上迂闊に出るのは危険だ、しかし捜索というていで行けばいざ見つかった時には防衛を任されてる人らを呼んでこちらが先手を切ればいいし捜索の人材も少なく済む」
「た、確かにどこから攻めてくるかわからないなら攻めてくる場所を捜してあわよくば討伐…場所も事前に報告できるから援軍も行きやすい」
思いがけない良策に一同唖然とした。
「だ、だとしても人選はどうすんだよ」
「最も実力とスピードのある2人を防衛にそれ以外を捜索班兼攻撃班にという形が無難でしょう」
「最も実力とスピードがある2人か…」
考えを巡らせていると会議室の扉が大きい音を立てて開いた。
「あの…俺も参加していいですか?」
「アル!でもなんで急に?」
「魔将筆頭として経験がなさすぎると思っただけだ」
(経験って、こいつ無傷でデスター3体倒してんのに…)
「おお、お前も入れよう思っとったから好都合や、それに相手には元魔将筆頭がおるこっちも魔将筆頭がおった方がええやろ」
「軽すぎです、相手は四大魔王にもなれた男です。立場が同じなだけで戦闘力が同じとは限りませんよ」
「まぁそういうんやない、とりあえず戦力が上がったんは事実やからな」
ロディオさんはアルの肩を叩いた。
「ですけど、一つ条件があります。俺は一人で戦うので誰も共闘はしないでください」
その言葉で場は静まり返った。
「俺は攻撃班に入りますから、伝えたいことは以上です」
そう言い残しアルは会議室を出ていった。
「なんや?最近のやつは今時思春期かいな?なぁユーキ?」
「同年代だから言わせてもらいますけど違います」
「ともかく!防衛班を決めねぇと話が進まねぇからとっとと決めんぞ」
「そう…ですね」
「あの!俺!推薦したい人がいるんですど!」
「お、奇遇やなショーン俺もおんねん」
「ま、この2人なら文句ねぇだろ」
そして特戦員の人たちはある2人に顔をやった。
翌夜
「じゃあここは任せたで…パルジー、リルール」
ロディオさんは2人に顔を向けた。
「了解しました」
「私!リルール・エルガット!この防衛という役割謹んでお受けいたします!」
「なんかあったら連絡すっから気ぃ抜くんじゃねぇぞ」
「皆様方も!ご武運を…」
そしてロディオさんが指揮をとる。
「ええか、これからやるんはデスターの弾圧とは訳がちゃう16年ぶりの魔人と天使の"戦争"や気ぃ張れや」
俺らはその声と共に夜の街から出ていった。
「ロディオさん」
「ん?なんや?ルーシー」
「なんで夜に動く必要があるんですか?昼とかの方が視界も良くていいと思うんですけど」
「昼よりも夜の方が魔力がよく飛ぶねん連絡のとき俺の記憶を俺の雷の魔力に乗せてあっちの2人に送るんや」
「な、なるほど?」
聞いたのに悪いが俺には理解できない内容だった
「あいつの話振んのはやめとけ理解できねぇぞ」
「ビリーさんがロディオさんに話振ることとかあるんですか?」
「ねぇよ」
(無いのかよ!)
その時ルアイスさんの足が止まった。
「あれ?どうしました?」
様子を確認するとルアイスさんは大量の汗を流して震えていた。
「ど、どうしたんですか!」
「おかしい……」
「え?」
「おかしい、なんでデスターが一匹もいないんだ?」
その言葉を聞いても慌てている理由が全くわからなかった。
「どういうことや?ルアイス、説明せい」
「ああ、どうしてかデスターが侵攻してくるのはいつも夜奴らは夜に動くものだと思っていた……しかしどうだここにはデスターが"一体もいない"」
「そ、そんなのたまたまいねぇだけかもしれねぇだろ」
「そう思いたいねだけど奴ら過去12度の侵攻で攻めてきたデスターの数は180にも上るこれだけ減らしているのに減少するどころか最近は最多侵攻数だったそんな奴らがこの地平線で一体も見えないのはおかしすぎる」
一同その事実に納得した、というより納得できてしまった。
「それじゃあ今デスターはどこに?」
恐る恐るユーキがルアイスさんに問いかけた。
「この前ビリーいっていたね裏で手を回してる奴がいるって」
「ああ、いった」
「当たってるよ確実にしかも多分天使だ、先程のユーキの質問に答えようきっと今までの侵攻もデスターがここにいないのも何者かの指示だどこか遠くで我々の動きを見ていたのかわからないが奴らは僕らの存在を知り一気に姿を消した。もし今そのデスターがどこかにいるとしたら敵陣の方か、或いは……僕らが出たあの街だろう」
その瞬間ロディオさんの目の色が変わり俺らに指示を飛ばした。
「戻るで!今すぐ!」
「ケケッやっと隙が生まれたね」
聞き覚えのない声がしたと同時に俺らの立っている場所がぬかるみのように液状化した。
「何っ!?」
「これは!まずい!」
どんどん沈んでいく体はいうことを聞かず俺ら8人の姿は闇夜の地上から消えた。
同刻
「大丈夫ですかね、攻撃班の皆さん…あなたも心配でしょうジーアス!」
「不必要な会話だ、会話を拒否する」
「……それにしても住民の最低限の避難は終えたとしても少し静かすぎますねー……ッ!」
その時リルールとパルジーは並々ならぬ気配を感じた。
「気づいてますか!ジーアス!多いですよこれは……」
「想定数約30体」
2人が気づいた時には建物の屋根にゾロゾロとデスターが現れていた。
「はぁ、面倒くさいですね!全く…ま!これを乗り越えればヘラ様に会えると思って頑張りますか!」
そうして2人は背中合わせでデスターのほうに剣を構えた。
「んぐぐぐ!」
液状の中では呼吸ができずもがき苦しんでいた。
「ぷはぁ!はぁはぁ」
脱出できたのか放り出されたのかわからなかったが俺はなんとか空気のある空間へと出れた。
「ここは?」
(何か建物みたいなところだなぁ)
「ん?あれは?」
その時俺は俺以外に人がいるがわかった。
「アル!」
「ゲホッゲホッ!ここは一体?」
「わかんねぇけど他の特戦員の人たちとはぐれちまったすぐに合流しないと」
その時建物の奥から獣がうめくような声が聞こえた。
「クソッ!こんな時に!」
その姿は紛れもなくデスターだった。わかったのも束の間奥からゾロゾロとデスターが出てきた。
「7体……おい!アル立て!一緒にここを切り抜けるぞ!」
アルにそう言ったがアルは立ち上がるとすぐに俺の横を通り過ぎた。
「言っただろ、俺と共闘すんなって」
そして一人でデスターの方へと向かっていった。




