修練
殴られた瞬間俺の意識は体と共に飛んだ、しかしその時は運良く意識が戻り空中で体をひねり地面に安全に着地した。
「きゅ、急に何するですか!」
怒りを露わにしてロザリオさんにそう言った。
「だから言っただろ死線を作るって」
「それにしても急すぎるでしょ!」
「わかったわかったそんなキレんなって…じゃあ今伝えるぞ俺はお前を今から…"殺す"」
ロザリオさんが低い姿勢になり拳を構えた……そこからは一瞬だった一気に距離を詰められ拳が眼前に現れた。
「ッ!」
俺は咄嗟に顔の前に腕を入れ直撃を免れた、数メートル吹っ飛ばされ俺は地面を転がった。
(くッ!腕を入れてなかったら絶対死んでた!…やべぇこの人、マジで俺のこと殺す気じゃん)
俺は立ち上がり構えを整えた。
「おっ!やる気になったかじゃあマジでいくぞ」
その瞬間視界からロザリオさんの姿が消えた。
(魔力だ!魔力で感じ取れ!)
そして俺は全神経を集中させロザリオさんの魔力を探した。そしてほんの一瞬空気が揺らめくのを感じた。
「ここ!」
魔力を強く拳に込めてその部分に渾身の一撃を叩き込んだ…はずだった。
「マジ…かよ」
完全に当たったと思ったその拳は空を切っていた。そして俺の背後にはロザリオさんが立っていた。
「目では見れないから魔力で探したのはいい判断だった、だが…遅い」
(まずい!防御!)
「それも遅い」
咄嗟に腕を十字に組み体を守ったがそれは無意味とかしたた。一瞬で背後に回られ背中を一文字に蹴り抜かれた。
「カハァッ!」
呼吸ができなくなりほとんどの臓器の活動が一瞬止まったのがわかった。自分の体が地面を転がり壁に激突した。
(これ背中じゃなかったらやばかったんじゃ…)
「ふぅー…ふぅー」
呼吸を整えなんとか自分の体を起こし真正面を向いた、激突したことで上がった土煙からロザリオさんが現れた。
「おいおい…ほんとに殺しちまうぞ」
「元から殺す気でやってるでしょ!」
「じゃあお前にいいことを教えてやる…魔力はな全身に流れる血液みたいなもんだ」
「どういうことですか?」
「つまり魔力を込められるのは拳だけじゃないってことだ」
(魔力を込められるのは拳だけじゃない?)
それを聞いた瞬間頭の中にあらゆる発想が出てきた。そして一つの"動き"が頭の中に強く残った。
「なるほど…わかりました」
「そうか…せいぜい死ぬなよ」
「ロザリオさんも死なないようにしてください」
俺は不敵に笑ってそう言うとロザリオさんの口角が少し上がった。
俺は足に全神経を集中させた、その時あの何かを纏った感覚が足にも感じ足を踏み締めると地面にヒビが入った。その瞬間俺の体はその場から消えていた。同時に俺はロザリオさんの目の前に移動していた。
「シュゥゥ」
あの時と同じように細く息を吐き後ろに構えた状態の拳を前方に一気に突き出した。その拳は確かにロザリオさんを捉えていた…だが俺の拳はロザリオさんの手のひらで抑え込まれていた。
(嘘だろ…全力で魔力を込めたのに片手で…)
「威力も速さも申し分ないな、だが!俺にはまだ!届かない!」
拳を手で掴まれた状態で俺の体は振り回され投げ飛ばされた。
「くッ!」
空中で体勢を立て直し後ろに進む体をなんとか足と手で抑え込めた。
「足に魔力を込めて高速移動を可能にしたか、よくやった!…よくやった褒美にお前のやりたがってたやつの先を見してやるよ」
そういうとロザリオさんは手を俺の前にかざした。そしてその手には信じられない程の魔力が集まっていくのがわかった。
「なんか!やばい!」
俺は全身に魔力を込め完全防御体勢に入った。ロザリオさんの手に集まった魔力は赤く染まっていきそれはまるで炎のように燃え上がった。
「ルーシー…これが魔力だ」
ロザリオさんの手に集まった魔力はまるで太陽のようだった。
「す、すごい」
そう思ったのも束の間その魔力弾は自分めがけて飛んできた。
(防御で被害を最小限にする!)
だがその判断が間違っていたことにすぐに気付かされた。
(いや、こんなの俺が防御したところで受けきれないんじゃ?)
気づいた時にはもう遅くその魔力弾は自分の目の前に来ていた。
(やばい…死ぬ…)
「諦めんな!」
「ッ!」
その時ロザリオさんの声が耳に入った。
「強くなるんだろ!強くなってかなえる夢があるんだろ!お前の夢はなんだ!」
その言葉に俺は背中を押されたような気がした。
「俺は……俺は!」
その時俺の拳には確かに纏っていた"黒い炎"が。
「うぉおお!」
そして俺は全身全霊を込めてその拳を魔力弾めがけて突き出した。あたりには黒い炎の魔力とロザリオさん魔力弾のが入り混じり魔力は打ち消し合うかのように爆発し消えていった。立ち上った土煙であたりは何も見えなくなった。しかし晴れた煙の中に確かに俺は2本の足で立っていた。
「はぁ、はぁ俺は"誰も泣かない世界"を作る」
その姿を見たロザリオさんは口角を上げた。
「上出来だ!やっぱりな死線を作ればお前は成長する、できると思ってたぞルーシー」
「ロザリオさん……でもあれは流石にやりすぎですよね普通に死んでもおかしくなかったですよ?」
結構マジで危なかったから真面目に怒っといた。
「うぉ…ご、ごめん…でも、お前はきっともうすでにあの"黒い炎"を我が物にしてるやってみろ」
そう言われて先ほどと魔力を纏わせるのと同じよう集中した。しかし"黒い炎"は纏わずただ魔力が纏っただけだった。
「あれ?…できない」
できないことに肩を落としたがロザリオさんが口を開いた。
「違う違うそこまではあってるけどもう一段階体の奥にある魔力を込める感じだよ」
「もう一段階?」
言われるがままに体の奥にある魔力を込めるように集中した。その時全身の血が拳に集まるような感じがしたと同時に俺の拳には炎が纏っていた。
「できた!でも黒くない」
「体に二つの血液があるものだと思って一つはその炎もう一つは闇それを込める感じだ」
「もう一つの闇の力」
目を閉じ神経を研ぎ澄ませ体の奥にあるもう一つの魔力を拳に押し出した。すると赤く染まっていた炎は黒く染まり今まで見てきた"黒い炎"へと姿を変えた。
「できた!ほんとにできた!」
だが少し気掛かりがあった。
「これロザリオさんが教えてくれたからできたのであって死線とか潜る必要あったんですか?」
「あるに決まってるだろー逆に俺がただ口で説明しただけで掴みやがったんだ…ちなみにルーシーその技の名前なんていうんだ?」
「技名?」
考えたこともなかったので少し固まった。
「なんだよ決めてないのか技名は大事だぞ連携にだって役立つからな…そして何よりかっこいい」
「えぇ…まぁでも確かに連携には使えそうですね」
「悩んでるなら俺がつけてやるようーん…」
そして少し悩んだ末にロザリオさんが自身ありげに口を開いた。
「終局なんてどうだ?」
「ずいぶんと暗い感じの名前ですね」
「そんなことないぞチェックメイトは詰みという意味でエンドは終わりという意味つまり"詰みが終わる"ピンチがなくなるみたいな意味だ」
それを聞くと何かしっくりきたような感じがした。
「終局か…」
「さあ!ルーシー感心してる場合じゃないぞ!」
妙に急いでいる感じだったので少し疑問に思った。
「え?なんでですか?」
「見てみろ…さっきの爆発音を聞いて魔兵が集まってきてる…こんなとこ見られたら絶対怒られる!逃げるぞ!」
「えぇー!ちょっと!」
ロザリオさんに引かれるように俺はその場を後にした。
数日後
「よし!怪我もすっかり治ったことだしそろそろ特戦員の人たちに会いにいくか」
そう決め館の方へと向かっていったがその道中で見知った顔があった。
(ん?あれは確か…)
「特戦員第4官パルル・ジーアス!」
「俺に何か用か?」
「いやー久しぶり?でいいのかな?こんなとこで何してんの?」
「その質問に答えて何か不利益があるわけでもないので答えようこれから俺は家に帰るところだ」
相変わらず機械のように淡々と話すのでやりにくさを感じつつも馴れ合うために話を続けた。
「あのさ、俺もお前の家行ってみてもいいかな?」
「なぜだ?理由を答えろ」
「えーっと一応同僚だからさお互い馴れとかないとなって思って」
そう答えると彼は少し考えて答えた。
「承諾するでは、ついてこい」
「あ、ありがとう」
そして俺は彼についていった。しばらく歩いた後一軒の家に着いた。
「ここ?」
「ここが俺の家だ」
意外と普通な家なんだなと思ったその時こちらに話しかけてくる声があった。
「あ!パルジーおかえり!」
その女の子は俺らの方を見ると小走りでこちらに向かってきた。
「あれ?隣の人は?」
「この人は俺の同僚のルーシーだ」
「へぇーじゃあつまり特戦員ってこと!すごーい…あっ!紹介が遅れちゃった。私はエリー・メルトよろしくパルジーのことはもう知ってると思うけどパルジーって呼んであげてください」
そういうとエリーは無邪気に笑った。
「どうぞどうぞ中に入って」
エリーに連れられ家の中に入った。だが入ったと同時に椅子が飛んできた。
「うぉ!なんだ?!」
飛んできた方に目を向けるとそこには片腕のない男が座っていた。
「何しに帰ってきやがった!パルジー!」




