怪事
「離してくださいッ!」
デスター侵攻から2時間後俺は2人の魔兵に取り押さえられられていた。
「全く怪我が完治してないんだッ!安静にしててくれッ!」
「黒幕の正体がわかったかもしれないんですよ!いかせてください!」
「あんたほんとに死ぬぞ!」
魔兵の人たちと揉めていたら聞きなれた声が耳に入った。
「全く…安静にしてろと言われているのにバカなのか?お前は」
「アル!」
「よくもそんな重体で大声出せる気力があるな」
アルは呆れながらそう言った。
「2体倒したからな流石にキツイけど…」
「おっ!ルーシーにアルやないかぁ生きとったかぁ」
「よかったぁ2人とも生きてたんだね」
その時俺ら2人に声をかけた人物がいた。
「ロディオさんとユーキ!2人とも無事だったんですね!」
「まぁな、それにしてもえらい重体やなぁルーシーお前ら2人何体倒したんや?」
「俺は2体ですね」
少し自信あり気に答えたがその自信は一瞬で消え去った。
「俺は3体です」
(さささ3体?!ほぼ無傷なのに3体も…)
それを聞いたユーキが嬉々とした声を上げた。
「すごいよ!2人とも!ルーシーくんは私と同じだしアルくんに関しては3体も!」
「こりゃ最強の世代かもしれへんな…ところでお前ら2人これから緊急会合なんやがお前ら2人くるやろ」
そう聞かれたが魔兵の人がが叫んだ。
「ロディオさん!この人は数え切れないほどの骨が折れてるですよ!今は安静にしてないと!」
ロディオさんがダルそうにそう答えた。
「わーったわーったほな俺が治したる」
(治す?この怪我を?)
その時ロディオさんが右手の甲に紋章の様なものを書いてその右手を俺の額にかざした。その瞬間ロディオさんの手の甲にある紋章と俺の額が光った。
パチンッ
不思議に思ったのも束の間、俺は額を平手で叩かれた。
「痛っ!…何するんですか!」
「まぁ怒んなやどうや体の具合は」
(あれ?体が軽い?…治ってる!?)
「多少な完治やないから無理したらあかんで」
(どういう原理なんだ?)
「ほな体も治ったことやし会合いくけ」
その時アルが口を挟んだ。
「俺は魔将なので聞く権利はありません」
あまりにも真面目なのでアルに少し呆れそうになった。
「まぁまぁそんなこと言わずに!アルくんも今回戦線に立ったんだから聞く権利あるって!」
「ち、ちょっと!」
そしてアルはユーキに手を引かれ強引に会合に参加させられた。
そうして特戦員9名と魔将1名の緊急会合が始まった。まず最初に発言したのはロルキさんだった。
「えーまずはみんな今回過去最多数のデスター侵攻でしたがお疲れ様でした。被害も最小限に抑えられていて市民からの信頼も格段に上がったと思います。ユーキくんひとまず戦績報告だけしてもらってもいいかな?」
そう命じられユーキは淡々と資料を読み上げた。
「はい!では多い順から報告していきます。リルール・エルガット討伐数5体」
(ご、5体!?まじかよ)
早速規格外な数字が出て心底驚いた。
「次にパルル・ジーアス討伐数4体。ロディオ討伐数3体。アル・グランス・ロブロート討伐数同じくらい3体。ショーン・オルセム討伐数2体。ビリー・フルトーテム討伐数同じく2体。そして私セレグ・ユーキ討伐数同じく2体。」
「チッ!クソが!近くにデスターがいなかったんだよ!なんで俺がロディオ負けねぇといけねぇんだよ!」
舌打ちと怒号が混じった声でビリーさんは怒りを露わにしていた。
「ご愁傷様〜」
「ロディオ!ゴラァ!」
「ビリー!やめて」
「続けます。ルーシー討伐数2体。ルアイス・グンテル討伐数同じく2体。以上です。」
「すごいですね5体も倒すなんて」
感心を込めてリルールさんを褒めた。
「まぁ運がよかっただけです!ヘラ様ならば!討伐数7体はくだらないでしょう!」
「か、顔が近いです」
皆が自由に発言してる中でロルキさんが会話に割って入り話を続けた。
「じゃあみなさん知ってると思いますけど"黒幕"についてロディオさん報告してもらってもいいですか?」
今までヘラヘラしていたロディオさんの空気が少し変わった。
「あれは俺が3体目討伐した後やな黒いフード被った男がおったんや」
(フード!……アリスさんとシェリーの仇!)
自分の中で一瞬腑が煮えくりほどの怒りを感じた。
「周囲の魔力に特に違和感も感じひんかったからあいつは魔人やそんで俺はしっかり顔も見たで青紫の瞳で右目にでっかい切り傷がついとったで」
それを聞いたロルキさんが素早く発言した。
「それ!ヴィジュランじゃないですか?」
知らない名前が出てきて皆キョトンとしていた。
「せやな俺もそう思った」
「あの!ヴィジュランって誰なんですか?」
自分の仇かもしれない奴の名前を聞かされてたまらず問いかけた。
「ヴィジュラン…そいつは魔界を追放された元魔将筆頭だよ」
「魔将筆頭!?」
「あぁ元魔将筆頭で四大魔王候補の1人でもあった、だが奴は四大魔王には選ばれなかった…激昂した奴は乱暴を繰り返す様になり魔界を追放された、最近の殺傷事件の犯人も奴だと僕は思ってる」
「殺傷事件の犯人か……」
重い空気のままその会合は幕を閉じた。
その日の夜どうも寝付けなかったので宿屋の外に出た。
「ふぅ」
軽く深呼吸し今日あったことを思い出していた。
(あの時のあの感覚今までに何度か感じたことはあったけど今回のは"黒い炎"?みたいなのを纏ってたよな…ありゃなんなんだ?)
そう考えながらひとけのないひらけた場所に出た。
「シュゥゥ」
あの時と同じように細く息を吐き拳に全神経を集中させてみた。すると、今までと同じく拳に何かが纏う感覚を感じた。
「ッ!」
そのまま俺は拳を前に勢いよく突き出した。その瞬間空気が少し揺れたのを肌で感じた。
(意外とできるもんだな…)
案外あっさりできてしまったので少し驚いた。
「こんな時間まで特訓とは…やっぱり今世代は期待の星ばかりだね」
その時急に俺に話しかけてくる男がいた。
(フードを深く被ってる…けど流石に違うか…)
「あなたは?」
「あれ?覚えてなかった?お前がここに来た時アルと一緒にいたんだけどな」
そう言われた瞬間思い出した。
「あ!あの四大魔王の!」
「そ!ロザリオ・オットボルトだ…それはそうとお前すごい魔力出力だな…」
「魔力出力?」
(魔力量については何度か褒められてきたけど魔力出力について言われたのは初めてだな)
「あぁ知らない感じか魔力出力っていうのはいわゆる魔力攻撃の威力とかのことだ」
「なるほど…でもなんで受けてもないのに威力がわかるんですか?」
そう問いかけるとロザリオさんはキョトンとしていた。
「お前がデスターとやりあってる時に近くでみてたんだけどな気づいてなかったのか?」
「あの時は必死でしたからね…というか!いたんだったらちょっとぐらい助けてくれればよかったじゃないですか!俺死にかけたんですよ!」
少し怒った口調でそういうとロザリオさんは笑っていった。
「お前の成長を止めるべきではないと思ったからな、本気でヤバそうだったら助けてたよ」
「成長?確かにあの時は今までにないくらい魔力というものを掴めた気がしましたけどなんか変わりました?」
疑問に思いそう尋ねるとロザリオさんは身を乗り出した。
「そこだよ!魔力を一度でも掴んでしまえば後はもう一度つかむだけ探す必要がないんだよ」
「ん?どういうことですか?」
「つまりは自分にあった魔力の出力や密度そして量それを模索するのが一番しんどい過程なんだよ、それはお前はもう見つけてるまずまずあんだけの出力出したのにお前の拳はぶっ壊れてないだろ」
言われてみれば確かにそうだったあれだけの威力の魔力を放ったのに拳に被害は出ていなかった。
「つまり後はもう一度掴んで二度と離さなければいいだけ」
「そうするにはどうすればいいんですか?」
自分が強くなれるその方法が今ここにある聞かない理由はなかった。
「簡単だ死線を潜り抜けばいい…お前みたいなタイプは死線を潜れば潜るほど成長していく」
「死線を潜る…」
「だがいくらお前が特戦員といえど死線と出会うには限りがあるだから…」
「だから?」
「死線を作るそれが一番手っ取り早い…強くなりたいだろ」
「はい!強くなりたいです!」
(死線を作る?)
「じゃあ決まりだ!じゃあいくぞ!」
そういうとホロギスさんは俺に向けて拳を構え一瞬でこっちに向かってきた。
「え?」
本日二度目…体が宙を舞った。




