悪魔
〜魔光とシアル〜 第13話 悪魔
「な、なんだよ……こいつ」
その時その場にいた4人は目の前にある未知の脅威に萎縮し体を動かせていなかった。
その時リュウザが鬼気迫る表情で叫んだ。
「戦闘準備だっ!今すぐ!」
その気迫に突き動かされるように俺らはその怪物から距離をとった。
「な、なんなのよ!あいつ!」
「わかんねぇ!けどあいつは絶対にやばい!」
俺ら4人はその怪物から距離をとった。
「ルーシャ!マードル!お前らは後方支援に回れ!俺とアルが前に出る!」
「了解!」
俺はリュウザと共に怪物の後ろに回り込んだ。
その瞬間その図体では考えられないほどのスピードでその怪物はマードル達に突進していった。
「速すぎだろ!」
そのスピードに俺とリュウザは完全に置いてかれた。
「ッ!やばい!マードル!」
怪物がマードルに飛び掛かろうとした瞬間。
「グガッ!」
怪物に魔力弾が飛んできて怪物の右頬が爆発した。
「バカ!何ボサっとしてんのよ!」
魔力弾が飛んできた方向を見るとルーシャが次の魔力弾を放とうと準備していた。
「今だ!行くぞ!アル!」
俺はその声と同時に飛び出して怪物に向かっていった。
ザシュ!
二つの肉を切る音があたりに響いた。
「よし!足の腱を切ったぞ!これでもう立てねぇ!」
足の腱を切られた怪物は前のめりに倒れた。
「アル!」
俺は剣に魔力を込めて一気に振り下ろした。
「はぁ…はぁ」
その瞬間俺ら4人はその場に尻餅をついた。
「はぁー……!疲れたぁ」
「なんだったのよこいつ……はぁ…はぁ」
「で、でもみんなでやったら倒せたね」
先ほどの超緊張状態が解けてみんな気が抜けていた。
「まぁ、ともかく!今回のこれは緊急事態だな、今すぐ…帰って指揮官に報告しに行くか!」
そう言いながらリュウザは立ち上がり俺に手を伸ばした。
「ほら、行くぞ」
俺はその手を取り立ち上がった。
そして俺らは魔界に向けて歩き出した。
「いやーそれにしても俺らいいチームだな!」
「ま!私がいたからってのもあるかもね」
「うんうん!結構チームワーク取れてたよ!」
「お前もそう思うだろ!アル…」
「うん!そう思う!特にあの時のリュウザの指示が……」
そう言いかけた時俺は背後に嫌な気配を感じた。
「ッ!!……嘘だろ……」
振り返るとそこには先ほどの怪物がもう5体がこちらを見ていた。
「どうしたの?アル……ッ!う、嘘」
「なんで5体も……」
絶望したその瞬間、怪物の1体の口の中が強く光った。
(なんだ、あれ?……なんかルーシャの魔力弾に似てる?)
「まさかっ!」
気づいた時にはもう遅くその光はマードルに向かって飛んでいった。
「マードル!危ない!」
咄嗟にルーシャがマードルの前に立ち魔力を込めて自分を防御した。
「いや!だめだ、受けるな!ルーシャ!!」
「え……」
その声はもうルーシャには届かなかった。
ルーシャとマードルの胸の真ん中からは先の景色が見えていた。
「ルーーシャァ!!マァードルゥ!!」
リュウザが悲痛な声で2人の名前を叫んだが2人は完全に事切れていた。
「そんな……嘘だ……」
だが、その怪物は俺らに友の死を嘆く時間もくれなかった。
「グゥガァ!」
その怪物は鋭く尖った爪を立てて俺を切りつけようと手を振りかざした。
「アル!」
死んだ…そう思い目を強く閉じた。
「……ん?」
妙に痛みを感じないと思い目俺、はを開けた。
だが目を開けた事で見えてしまった。自分の事を身を挺して庇った、リュウザの姿を……
その凶刃は確実にリュウザの命に、届いていた。
おびただしい量の血を流しながらリュウザは俺の前に力なく倒れた。
「あ…あぁ…あぁああああ!……リュウザ!リュウザァ!リュウザァ!!」
俺はリュウザを抱き抱えて必死に呼びかけた。
(ち、血が…止まらない…どうする…どうする!…)
「誰か!誰かぁー!リュウザを!リュウザを助けてください!リュウザを!」
「……ア……ル」
その時今にも消えそうな声でリュウザが喋った。
「リュウザ!」
「……アル……頼みが……ある…お前…だけでも逃げて……くれ…」
「……え?……そんな事、できるわけないだろ!」
「お前なら……逃げれる……お前は…一番強いから……できる」
「違う!……リュウザを置いて逃げれるわけないだろ!」
「俺は……もう助からねぇ……」
「そんなのまだわかんないだろ!諦めんなよ!」
「……俺に構うなっていってんだよ!!」
リュウザが血を吐きながら鬼気迫る表情で叫んだ。
「……アル…俺は……お前だけは…諦めて欲しくないんだ…」
「リュウザ……」
「お前の夢……超かっこいいからよ…俺…お前の夢見てみたかった……だけど…もう…俺は……お前の隣じゃ…見れない…お前は!…夢を叶えろ!」
その気迫に押されて俺は何も喋れなかった。
そしてリュウザは、はにかんで笑った。
「俺は……お前の夢を…上から見てるよ………楽しみ…だ……」
そういうとリュウザの目から光が消えた。
「リュウザ?…リュウザ!……リュウザ!」
リュウザの死を確信したその瞬間俺の心に残った感情は"怒り"それだけだった。
「……お前を……お前らを…………殺すッ!!!」
その時目の前の景色が赤く染まり、俺の握った拳の間から違う滲んできた。
それからはあまり覚えていない気づいた時には周りは静まり返っており、あたりには怪物達の死骸が転がっていた。
(静かだ……心臓の鼓動もうるさく感じる……)
俺はふらつく足を動かしながら魔界に向かって歩いた。
「終わったか?」
「はい、今回も生存者はいませんでした」
指揮官とその側近らしき男が喋っていた。
「可哀想に……やはり…上層部は腐っているッ!」
指揮官は悔しさを感じながら下を向いた。
「し、指揮官!……あ、あれ……」
その時側近が魔界の出口の方向に指を指した。
「ま、まさか……生き残ったのか……この任務から……」
魔界の出口から歩いてきたのは、怪物の返り血を浴びて赤く染まった姿の俺だった。
「き、君……よく…帰ってきた、生存者は君だけだ」
「そう……ですか」
俺はそう言い残し街へと戻っていった。気づけばもう日が昇っていた。
自分の家へと入ると同時に俺はその場に崩れ落ちた。
「うぁあああああ!」
共に生きてきた仲間が死んだ悲しみと救えなかった悔しみに打ちひしがれ俺は叫んだ。
(自分だけ……自分だけ…生き残ったのか……一番強いからって…一人…だけ……!)
「"悪魔"め!」
一人だけ生き残ってしまった自分を卑下した。この上ないほどの言葉で自分を罵った。
その時やけに外が騒がしいことに気づいた。様子など見る気力などなかったが俺は引きつけられるように扉を開けた。
ゴッ!
その時俺の頭に石が飛んできた。
石が飛んできた方向を見ると一人の女性が涙を浮かべながらこちらに石を投げつけていた。
「返して!うちの夫を!」
「……え?」
「一人だけ逃げてきたんだろ!ふざけんな!」
「あんたが!死ねばよかったのよ!弟を返して!」
外には大勢の人たちが俺の家を取り囲み石やゴミを投げつけていた。
全く俺は関係ないそんな事同時の俺もわかっていた、だが
「本当に申し訳わりませんでした」
俺は地べたに這いつくばり目の前の人たちに頭を下げた。
なぜ自分がそんなことをしたのか明確にはわからないが当時の俺はその時の出来事は全て自分のせいだと思っていたのかもしれない。
「謝って済むと思ってんのか!」
「そうよ!」
「すみませんでした」
俺はそれでも飛び交う罵倒に謝罪で返すしかなかった。
その時民衆の中から一人の男が俺に駆け寄ってきた。
「おい、大丈夫か?」
罵倒の中に聞こえた自分に対する心配の声、俺は思わず顔を上げた。
目の前に映ったその男の顔は優しさに満ち溢れており、俺の全てを肯定してくれるように思えた。
「とりあえず中に入ろうほら、立って」
その男は俺に手を差し伸べた。
「おい!そんなやつに味方すんな!そいつは悪魔だぞ!」
「そうよ!そんなやつ助ける価値なんかないわ!」
その声を聞いた瞬間男は民衆を鋭く睨んだ。
「お前ら……確かにお前らの痛みはさぞ大きいだろうな、だけどな…恨みを向ける相手を間違えてるぞ」
その覇気に民衆は押されたのか全員その場で黙り込んだ。
「さて、何があったのか聞かせてもらってもいいか?」
「あの、あなたの名前は?」
俺はその男の質問に答える前に質問を投げかけた。
「質問を質問で返すとは……相当気になるか、わかった教えるよ俺の名前はホロギス、魔帝だ」
「ま、魔帝?あなたが」
「そう、さ!質問には答えたぞ俺の質問にも答えてくれよ」
ホロギスさんは諭すように俺に問いかけてくれた。俺は昨日起こったことをホロギスさんに説明した。
「そうか、辛かったな……色々聞いて悪かったな」
「あの!俺……まだ魔兵やってもいいんですかね……」
俺は自分のやっていたことが正しかったのか目指しているものが本当に美しいことなのかわからなくなっていた。
「それは、俺にもわかんねぇな……自分が今までやっていたことが正しかったのかこれからやっていこうと思うことが正しいのかなんて誰にもわかりゃしねぇよ、だけど自分を最初に信じるのは自分だ自分が正しいと思ったことぐらい信じてやった方が荷は軽いぞ」
そう言い残しホロギスさんは俺の家から出ていこうとした。
リュウザは最後に俺の夢を信じてくれた。だったら俺も信じてあげないとな。
「あの!俺魔兵続けます!一人で俺は自分を信じます」
そういうとホロギスさんは爽やかに笑った。
現在 ルーシーに敗北後
(なんで今こんなこと思い出してんだ?)
自分の昔の記憶を思い出して俺は少し懐かしんでいた。
(嫌なこと思い出しちまったな、でもいいことも思い出せたなぁ、ていうかあの時はあぁやって言ったのになんか夢の追いかけ方わかんなくなっていっちまったな。)
その時ふとルーシーの言葉が頭をよぎった。
「お前を信じた俺の勝ちだ!」
(ふっ、信じるか……なぁルーシーお前は今夢追いかけてんのか?……俺もお前みたいにまた夢追いかけれるかな?……俺もみんなを信じれるかな?)
そう思い俺は起き上がりルーシーの元へと走っていった。
〜魔光とシアル〜 新星魔界編 完




