凶兆"弍"
「おーい早くこいよ」
「わ、わかってるよ」
同期の声に呼ばれて俺は同期の元へと向かった。
「ったくよ〜みんな待ってんだぜ」
「ご、ごめん」
「早く行かねーとまた遅刻って言われて怒られんだぜ〜」
彼は友人と共に学寮へと走って行った。彼は齢13歳にしてすでに魔兵入りを認められた天才、名はアル・グランス・ロブロート
ちょうど昼も過ぎた頃俺らは話しながら歩いていた。
「ていうかよーどうやったら13歳で魔兵入りできんだよ」
「たまたまだよ、リュウザだってあと3年以内には絶対入れるって」
「ありがたいけど……悪ぃ皮肉にしか聞こえねぇよ…お!あれルーシャとマードルじゃないか?おーい!」
リュウザが遠くに向かって手を振るとその方から2人の男女が向かってきた。
「遅いよ、リュウザくんもうすぐ昼休み終わるんだから早く行かないと先生に怒られちゃうよ〜」
彼の名はマードル少し気弱だが頭の冴える友人。
「そうよ全く、ちょっとアル!あんたも同罪だからね!」
そう言って俺を叱った女の子の名前はルーシャこの4人の中では最も魔力の扱いに慣れている。
「ご、ごめん」
「いやよー俺は急かしたんだぜ早く行かないとって」
「言い訳しない!」
「わ、悪い」
そんな他愛もない会話をしながら俺ら4人は学寮へと向かって行った。
「ねぇねぇ、アル」
「どうしたの?ルーシャ」
「あんた来月から魔兵じゃない?魔兵になったら何するとか聞かされてんの?」
「えーっと先生が言うには魔界の警備や護衛って言われてるよ」
「いいよなぁー俺も早く魔兵になりてー!なったら俺、特戦員とかになっちゃったりして……」
「そんなわけないでしょ」
「で、でもアルくんだったら特戦員とかになれるんじゃない?」
マードルが期待を込めて俺に質問した。
「そうだなー俺の夢は魔将筆頭になることなんだー魔将筆頭になってみんなと協力してこの国の平和を守っていきたい……」
「お、お前……いいこと言うぜ!」
「う、うんかっこいい……」
「ま、アルにしてはいい夢なんじゃない?」
(俺はこのみんなが大好きだ、仲間と助け合い友と分かち合うそんな誰もが笑える世界を作っていきたんだ!)
笑い合いながら学寮の前まで来ると恐ろしいほどの怒気を感じた。
「君たち、授業開始から2分過ぎているよ…僕をこの学校を舐めているのかね?」
「あ……ベ、ベ、ベ、ベルゼド・グラスモア先生?」
「お、おいやべぇってグダグダしてたらもうそんな時間かよ……お、おいマードルなんとかしろよ」
「む、む、無理だよ僕にそんな勇気あるわけないだろ」
「何をブツブツと話し合っているのかね?どうやら君たちは徹底的に教育を施さないと行けないようだね!!!」
「おい、アル……生きて……るか?」
「あ、あぁみんなは?」
「私は、無事……」
「ぼ、僕も」
4人はフラフラと力なく立ち上がった。
「くそっ!あのハゲいつか絶対ぶん殴ってやる!ガルルルル」
「ぶん殴るなんて随分とあんたは優しいのね私はあいつを消し炭に……!グルルルル」
「ふ、2人とも落ち着いて」
「マードルの言うとおりだとりあえず早く教室に戻ろう」
そうして俺は怒れる2人を抑えながら教室に入った。
教室に入るとグラスモア先生が教卓を両手でバンッ!と叩き大きく声を放った。
「君らに報告がある!我々の学級には来月から魔兵として正式に任命されるはずだったアル・グランス・ロブロートだが!期間が早まり明日から正式に魔兵として認められることになった!」
自分の名前が出た時は一瞬怖気付いたがその不安はすぐにかき消された。
「お、おぉおお!マジかアル!そんなことあんのかよ!」
「すごいよ!アルくん」
学級からは黄色い歓声が飛び交った。
「静寂に!……アル!我が校の誇りとなるよう精一杯努めてきてくれ」
「はい!」
これで俺の夢へ一歩近づいたと思っていた。だけどこの出来事は夢の始まりなんかじゃなく悪夢の始まりだった。
1年後
「アル!明日は西側の警備任せてもいいか?」
「すいません明日は外せない用事があって……」
「そうかならいい」
俺は魔兵の先輩と共に魔界の警備など事務作業をしていた。
「外せない用事ってなんだ?」
「明日は新兵の任命式じゃないですか、俺は周りの人より早くここにきたから友達が任命されてるか見届けたいんです!」
「そうか、わかったじゃあ西側の警備は俺に任せろ!」
「ありがとうございます!」
任命式当日
「ソワソワしてるな」
「そ、そうですか?」
先輩に言われてから気づいたが俺はひどく緊張していた。
「あれは?」
「六賢帝の一人にして軍賢イルマン・イコマノフだ粗相のないようにな」
(六賢帝ってあの?魔界の最高権力者の?!)
「それでは今年の合格者を発表する」
軍賢が今年の魔兵任命試験合格者の名前を次々に読み上げた。
(いつだ?いつだ?いつくるんだ?)
あまりの緊張に心臓が破裂しそうになった。
「受験番号158番リュウザ・ナルカ」
「ッ!!」
「受験番号165番ルーシャ・ミットム…受験番号214番マードル・タール」
その三名の名を聞いた瞬間俺は心の中で思いっきりガッツポーズをした。
「リュウザ!ルーシャ!マードル!合格おめでとう!普通は3年以上かかるのにすごいよ!」
「まぁな、俺らもお前に追いつくために頑張ったんだよ」
「ま、私は半年で入れたけど?リュウザたちが可哀想だから半年待ってやったのよ」
「これからもよろしく、アルくん」
俺はこの瞬間が人生で一番幸せな瞬間だった。
「じゃあ俺はここで行くけどみんなは他のところでも頑張って!」
「おう!頑張れよ!アル!」
そうして俺と3人は別々の方向へと歩いて行った。
「魔界外の探索及び警護命令?」
今まで聞いたこともない任務が俺のところに降ってきた。
「そうなんだよ、やってくれるか?」
「やります!やらせてください!」
俺は新しい任務にを経験して更なる成長を自分に促そうと考えていた。
「あ、ありがとう…………ごめんな」
「え?今なんて?」
「いや!なんでもない」
少し違和感を抱きつつも俺はその任務へと足を運んだ。
「ここ?だよな」
数日後俺は指定された場所へと辿り着いた。だがそこにいた他の魔兵たちの顔は絶望で歪んでいた。
「ど、どうしたんだ?」
不安が募るばかりだったが聞き慣れた声が俺の耳に入った。
「ん?ッ!おーい!アル!」
「リ、リュウザ!?なんでここに?」
「それはこっちのセリフだよ全くなんでお前がここに?」
「え!リュウザとアル!?」
「ル、ルーシャ!それにマードル!」
思わぬ再会に俺は腰が抜けそうになった。
「なんでみんなここに?」
「ともかく!みんな揃ったんだからラッキーだろ!」
「それもそうだね!」
「にしてもここにいる人たちなんでこんな生気がないのかしら?」
やはり全員そのことについて疑問を感じていた。
「注目!これより魔界外探索及び見回りの任務を貴様らに課す!これより貴様らを指揮するのはこの私だ!」
指揮官の言葉と共に俺らは整列した。
「それではこれより魔界外探索及び見回りを行う!5人グループを作り各自の判断で任務開始!」
俺はリュウザたちともう一人少しやつれた男性の兵をグループに入れた。
「じゃあ東側から行こう!」
「おう!」
そして俺らは魔界を出て任務を始めた。
「それにしてもよぉなんで夜なんだ?別に昼とかで良くね?」
「全く!なんのために勉強してきたのよ!夜の方が魔力が飛びやすいから連絡がしやすいの!」
「あの!なんでそんなに絶望してるんですか?」
俺はもう一人のやつれた男性に声をかけた。
「あぁ……君たちは何も知らないのかぁ可哀想に……」
「え?どういうことですか?」
「この任務はね戦力外通告のようなものでこの任務を任されたってことは用無しってことなんだよ」
「え?……」
俺ら4人は足を止めた。
「で、でも俺らは全員1年ちょっとで入ってきたしアルなんか13歳で入ったんだぞそんなやつが戦力外通告なんて……」
「君ら…先輩からこの任務を任されただろ」
「ッ!」
その時俺ら4人は心当たりがあった、そうここにいる4人は先輩からこの任務を任されたのだ。
「この任務を抜け出す方法は一つ…任務を達成するか、誰かになすりつけるかだ…」
「そ、そんな……」
「で、でも!任務達成すればいいんですよね、それだったら僕らで」
「この任務を達成できた人は存在しない、まずまずこの任務に出て生き残った人は今まで……ひっ!ヒィィィィ!」
何かを見た男の顔をは恐怖に歪みその場から走り去った。
「ど、どうしたんだ一体?」
そして俺はその男が見ていた方向に目やった。
そこにいたのは自分の2倍以上の大きさをした我々魔人に似た人型の生物だった。
「なんだこいつ……」




