雷同
「お前が俺を倒す?」
「あぁそうだ俺がお前を"最強"から引きずり下ろす!」
そういうとアルの目元は暗くなった。
「ふざけたこと言ってんじゃねぇぞ!ルーシー!」
「ふざけてねぇ!俺は至って真剣だ!俺が…お前と一緒に戦いたいから」
「……何度言っても聞くつもりはねぇか…わかったよ俺がてめぇを完封なきまでに叩き潰してわからせてやるよ!」
そういうとアルは俺に向かって拳を構えた。
「死んでもしらねぇぞルーシー…」
「死ぬ気でやるよアル!」
次の刹那俺の視界からアルの姿が消えた。
(くそっ!速ぇ!ロザリオさんの戦いで学んだんだ目じゃなくて魔力で追え!)
そうして俺は魔力探知に集中させるために目を閉じた。
(辺りの残留魔力が邪魔で探知しずらいけどほんの一瞬ほんの一瞬だけ魔力の揺らぎがあるはず…)
「ッ!ここだ!」
俺は魔力の揺らぎがあった部分に拳を突き出した。だが…
その拳は空を切っていた。
「遅ぇよ、ノロマ」
もうすでにアルは俺の後ろにまわっていた。
「ッ!」
俺は咄嗟に振り向き腕を十字にして防御の姿勢をとった。
(よしっ!間に合った、俺の魔力量で防御すれば多少のダメージは防げる!)
その時アルは俺に指を2本向けてきた。
「刺弾」
アルの2本の指の間が黒く光った、それに気づいた瞬間俺の腕にはその黒い光が突き刺さっていた。
「やっばいッ!」
俺は咄嗟に十字に組んでいた腕を解きその光の直線上から身を避けた。
「はぁ……はぁ」
(なんだ今の?!ロザリオさんがやってきた魔力弾とは殺傷力が違いすぎる!もし、今少しでも判断が遅れたら……)
その攻撃を受け俺の緊張は一気に高まった。
(あの魔力弾は当たったら一発ゲームオーバー的が小さいから相殺できる気もしないし……アルの指の直線上に入らず近づくしかない!)
俺は足に魔力を集中させアル目掛けて突撃した。
(よし、まずは近づくことはでき……)
俺はその時確かにアルと目が合っていたことに気づいた。
「攻撃がワンパターンなんだよ」
その時にはすでに俺の顔にはアルの拳が突き刺さっていた。
「グハァッ!」
数十メートル吹っ飛ばされ俺の体は地面を転がった。
「はぁ…はぁ…はぁ」
(なんでだ?!なんで今のスピードについてこられるんだ…これが"魔将筆頭"!)
自分との力の差に俺にはこの上ないほどのプレッシャーがかかった。
(遠くにいてもアルのさっきの技で狙われる、けど近づいてもアルは俺のスピードについてこられるから近づくのは得策じゃない……くそっ!攻略法が……考えろ!考えろ!俺がアルに勝っている所をつくんだ……)
「うおっ!」
アルの魔力弾を避けながら俺は必死に攻略法を探していた。
「くっ!なんで瓦礫の影に隠れてんのにわかるんだよ!」
その場から立ち去ろうとしたその瞬間俺は辺りの魔力が揺らいでるのを感じた。
(そうか!俺が逃げる時に魔力を使いすぎてるから魔力が揺らいでるのか!……でも、そんなことわかったところでどうにもなんねぇ………待てよじゃあなんでアルの周りは魔力が揺らいでないんだ?魔力操作が慣れてるからか?いや、違う!俺みたいに逃げ隠れしてるんだったら話は別だけどアルは魔力をいちいち抑える必要なくないか?というかなんで魔力が揺らぐんだ?魔力が揺らいでた時は魔力が集中していた時、俺は常に魔力が揺らいでいるがアルは揺らいでない、ッ!そういうことか!アルは抑えてるんじゃなくて抑える必要がない!魔力が集中していないから……)
俺は自分の両手を見た。
(俺は魔力量が多いから魔力が揺らいでる?じゃあつまり俺がアルに勝ってるのは……"魔力量"!)
そしてルーシーはふと隣にある大きい岩に目をやった。
("刺弾"は、あまり魔力効率のいい技じゃない速めに勝負をつけておかないと次の戦いにもたないこれ以上は控えないと)
アルは少しの違和感と焦りを持ちながらルーシーを探していた。
(あいつなんであんなにわかりやすく魔力飛ばしてんだ?俺を罠にでも嵌めるつもりなのか?いや、あのバカにそんなことできるはずは……)
アルはその時大きい瓦礫の後ろに魔力が強く揺らいでるのを感じた。
(そこか!)
アルは今まで"刺弾"で使いすぎた魔力を温存するために拳に魔力を纏わせ瓦礫に突き出した。アルの拳は確かに当たっておりその拳が当たったものは砕け飛んでいた。だが飛び散ったのは赤い鮮血ではなくルーシーの魔力を帯びた石のかけらだった。
「何ッ!」
「感覚を信じすぎたな…アル!」
そして俺はアルに向かって全霊で拳を突き出した。
「カハッ!」
アルの体が宙を舞い地面に仰向けに落ちた。
約30秒前
ルーシーは岩に手をかざし魔力をありったけ込めた。
(あいつは今まで俺の魔力の揺らぎを頼りに動いてきた、そしてあの技連発できるなら連発した方がいいのにしないのはきっと何かしらの理由があるからかもしれないこれまでにあの技は何度も打たれてきたきっとあいつは今俺を倒すことと次の戦いに備えなければならないことを視野に入れる、つまりあいつはあの技じゃなくて拳でくる可能性が高い!)
現在
「お前があの技使ってたら俺の負けだったよ、お前を信じた俺の勝ちだ」
アルはふらつく足を抑えながらゆっくりと立ち上がった。
「勝ち?勝手に終わらせてんじゃねぇよ」
その瞬間アルの魔力が一気に跳ね上がった。
「俺は…"最強"なんだよ」
アルは俺に拳を構えてきた、それに合わせるように俺もアルに拳を構えた。すり足でアルとの距離を詰めた。先ほど飛び散った岩のかけらが瓦礫の上に乗っていた。そしてその岩はグラグラと揺れついにはその瓦礫を転げ落ちた。その時にはすでに決着がついていた。
「はぁ…はぁ…はぁ」
アルが仰向けに大の字で倒れ、ルーシーが荒い息を吐きつつもその両足で立っていたのだ。
「俺の勝ちだ、アル」
俺は大の字に倒れるアルに手を差し伸べた。
「一緒に…行こう」
だがアルはその手を取りはしなかった。
「アル……」
俺は仕方なくアルに背を向け建物の奥へと足を運んだ。
(負けた、俺が負けた…あれだけ調子づいたこと言ってたのに…情けねぇ)
「あぁ、悔しいな」
(静かだ、あの日もこんな静寂だった……だけどあの時より今の方が心地いい)
アルはゆっくりと目を閉じた。
暗く不気味な建物をあてもなく歩いていた。
「どうやってここから出ようか」
俺は建物から出るために試行錯誤していた。
「というかなんでこんなところに……」
考えながら建物内を歩き無数の柱が立ち並ぶ大聖堂のような場所へとついた。
「なんだ?この空間」
その時俺の後ろにあった柱の影が動いた。
「誰だ!」
俺は素早くその柱の前に立つ戦闘準備を整えた。
「随分騒がしいと思ったらぁもう始まってたってことか」
柱の影からぬるりとその男は姿を現した。
「青紫の瞳……右目にでかい切り傷……ッ!ヴィジュラン!」
「あぁん?俺を知ってるかぁ、まぁ特戦員だから当たり前かぁ」
ヴィジュランはねっとりと喋りながらその眼光をこちらに向けた。
「じゃあお前のこと、殺していいんだよなぁ」
その瞬間ヴィジュランからは大量の魔力が溢れ出した。
「くっ!なんて奴…」
「まぁでも、最初はお手なみ拝見だよなぁ」
その瞬間ヴィジュランから溢れ出していた魔力が一瞬で吸われたかのように消えた。
「さぁ、行っておいでデスター…」
その掛け声と共にヴィジュランの背後からおびただしい量のデスターがこちらに向かってきた。
「マジかよ…!」
俺は無数に襲いかかってくるデスターを殴り、蹴り、撃って捌いた。
「ガァオォ!」
ほんの一瞬俺はデスターに攻撃の隙を作ってしまった。
「グゥ!」
デスターの突進を受け俺の体は後方に飛んで行った。
「カハッ!」
柱に背中が打ち付けられ俺は呼吸ができなくなった。
(早く…立たない……と)
そう思った時にはすでに俺の目の前には数体のデスターが俺にとどめを刺そうとしていた。咄嗟に腕を組み防御体制をとったがデスターの拳は眼前に迫ってきていた。
「うぉ、やべぇ……」
「遅ぇんだよ、ノロマ」
その声がした瞬間には目の前のデスターは細切れになっていた。そして俺の目の前に男が立っていた。
「あぁ……よかったぁ…きてくれたんだな!アル!」
「そんな大声出す暇あったら早く立てバカ」
俺は立ち上がりアルと肩を並べヴィジュランに拳を構えた。
「生きて帰れるかわからんから今言っておく……ありがとう、おかげで目が覚めた」
「!……おう!生きて帰れる!俺らなら!」
そして俺とアルはヴィジュランに向かって行った。




