68.元気になるジュース
『ねぇねぇ、今のうちに元気になるジュース飲んでおかない?』
『元気になるジュース? 何のことだ?』
『ジュース、飲みたいです!!』
『ハピちゃん、です、はいらないよ。僕達は家族なんだから。確かアーベルは敬語って言ってたっけ? 丁寧にお話ししなくて良いんだからね。それからモグー。元気になるジュースだよ。ほら元気になるポーションに、あの地下の水を少し入れるだけで、とっても美味しいジュースみたいになるじゃん』
『ああ、ポーションジュースな』
『これからさ、もしかすると逃げるかもだし。アーベルと一緒に逃げる時、僕はアーベルにくっついて逃げるつもりだけど、でも自分達でも走るかもしれないでしょう? その時にアーベルに迷惑をかけないように、今のうちに元気になるジュースを飲んでおいて。アーベルに遅れないようにした方が良いと思うんだ』
『バラバラに逃げるのダメ、ずっとくっ付いてる』
『うん、もちろんくっ付いてるよ。でもさ、何があるか分からないでしょう? さっきはちょっと揺れただったから良かったけど。もし大きな爆発が僕達の所で起こったら? 凄い強い風が吹いたら僕達飛ばされちゃうかも。それでバラバラになっちゃったら、待ち合わせの場所に1匹でいかないといけないかも』
『そうだな、1匹かもだな!』
『1匹で行動しなくちゃいけないなら、やっぱり体が元気じゃないとダメだと思うんだ。だから今のうちに、元気になるジュース飲んでおいた方が良いかな? って』
『元気大切!! 逃げるだけじゃなくて、お手伝いも頑張る!!』
『しう、お手伝いもまだまだ頑張らなくちゃいけないしね』
『うん。飲んだ方が良いんだぞ!!』
『ママ達に聞いて飲もう』
『そうだ、普通のジュースも混ぜるともっと美味しいぞ。前にそうやってアーベル、飲ませてくれたぞ』
お父さん達が頑張って敵を止めてくれているおかげで、街を守る壁が1ヶ所くずられしまったけれど、まだ僕達は逃げないでいられる。今のうちにできるだけ怪我人の治療をと。僕が回復魔法を使い治療をしていると、向こうで何か話し合いを始めたセレン達。
そして自分達の話し合いが終わると、セレン達はセレンの両親とアンセルを呼んで、また話し合いを始め。そしてすぐに、僕にちょっとジュースを飲んでくると言って行ってしまった。この時僕は、本当にジュースを飲みに行ったと思っていたんだよ。
治療院には働いている人達や、僕達見習いの学生が自由に飲める飲み物が置いてあって。そこにはセレン達魔獣達用のジュースも置いてあるんだ。メイナード先生が魔獣だってジュースが飲みたいだろうって置いてくれたんだよ。
だからそれを飲みに行ったと思って。今までずっと頑張ってくれていたから。もちろん途中で水は飲んでいたけどさ。それで、そうだ今のうちに、お菓子もあげておこうって思った僕。
幸い今治療している3人の治療を終わらせると、後は薬での対応だったから。手の空いている人に薬は任せて、すぐにセレン達の所へ行った僕。思った通りセレン達はジュースが置いてある部屋に居た。
「みんなお疲れ様。ジュース美味しい? 今のうちに少し、何かお腹に入れておいた方が良いと思って。クッキーとお煎餅を持ってきたよ。特別に2枚ずつ。さぁ、どうぞ』
『わぁ、アーベルありがとう!』
『2枚ずつなんだぞ!!』
『ハピちゃん、そっちのピンクのクッキーが良いです』
「ははっ、良いですって。みんなハピちゃんにピンクのクッキーあげて良い?」
『良いよぉ』
『問題ないしなんだぞ』
『ぼく、シマシマクッキーい?』
『こら、テディーわがまま言うんじゃない』
「アンセル良いから。セレン達良い?」
『うん、良いよ』
『俺達お兄ちゃんだもんな!! 妹と弟に好きなのあげるんだぞ!!』
「2人ともありがとう」
その後2匹に好きなクッキーとお煎餅を選んでもらって、残りをセレンの両親とアンセルで分けて貰った。そしてみんなが食べているうちに、僕も軽食を食べることに。これも治療院には用意されている物で、今日はサンドイッチが置いてあった。それを食べる僕。
僕達の他にも数名休んでいる人達が。みんなセレン達を見てニコニコしていたよ。こんな時だからとっても癒されるって。
『おやつが一緒だと、ジュースがさらに美味しいね!』
『アーベルママが飲んでるお茶は、苦くて不味いもんな。アーベルママもジュースにすれば良いのに』
『ハピちゃんもあれ嫌い』
『匂いは美味しそうだった』
みんなが言っているのは、お母さん達がお茶の時間や食後に飲むお茶のことだ。紅茶に似ている飲み物なんだけど。ちょっと渋みがあるんだよ。それがみんなには苦く感じるみたいで。僕もちょっと苦手で、かなりはちみつを入れるんだ。
少しの間だったけど、ゆっくりな時間を過ごせた僕達。きちんと飲んだコップをみんなが片付けて。その後は戻る前にもう1度だけ、バラバラになった時の待ち合わせ場所を確認した。
それからもしも魔獣が来てしまったら、いくら待ち合わせの場所を決めていて、みんな一緒に逃げようとは思っているけど。それでもどうしても、バラバラ匂い逃げることになってしまったら? の時の事を決めた。
相変わらず魔物達は、真っ直ぐにしか進んでいないか、アンセルに確認してもらい。これからも真っ直ぐに進むと信じ、魔物達の行進の真横に逃げることにしたよ。
ちょうど真横に逃げると、僕達家族でよく行く、キノコがいっぱい生えている林に着くんだ。そしてその林には面白い形の岩が。穴あきドーナツみたいな岩があって。セレン達はおやつ岩って呼んでいる。
その場所はみんなが知っている場所だから。避難の時に誰か1人でもいない場合は、そのおやつ岩の所へ行くことに。アンセルとテディーを連れて行っておいて良かったよ。
こうして話しを終えると、持ち場に戻った僕達。でもまさかセレン達が飲んでいたジュースに、セレン達が自主的に元気になるポーションと、あの地下の水を混ぜて飲んでいるなんて。その時の僕は気づいていなかった。しかもそれで助けられることになるなんて……。




