67.街を守る壁の崩壊
「みんな僕の所に!! こられなかったらその場にしゃがんで!!」
大きな爆発音が聞こえた瞬間、そこまで酷い揺れじゃないけど、建物全体が揺れて。僕はみんなに僕の所へ集まるように言った。するとセレン達親子は一気にジャンプして僕の所に。
モグーはハピちゃんに掴んでもらって、飛んで僕の所に。そしてアンセルはテディーの首の所に噛みついて、僕の所へ来てくれた。
集まってくれたみんなを、僕は覆い被さるようにして、上から何かが落ちてきても大丈夫なようにする。
『いざとなったら、俺が大きくなりお前達を守る』
「ありがとう。でもそれは本当に最後の時だ。今はまだ大丈夫なはず」
そんな話しをしていると揺れは治り、メイナード先生の指示が飛んだ。
「患者を治療している者以外、自分が担当している場所の確認をしてきなさい! もし被害が出ているようなら、すぐに私に連絡を。アーベル!」
「はい!!」
「地下へ行って、被害が出ていないか見てきてくれるか? 私は何が起こったのか、確認してくる。大体の予想はついているけどね」
「分かりました! みんな行こう!」
僕はみんなと一緒に、すぐに地下へと向かった。この治療院の地下には、地下から水を引いている場所があって。その水を使って薬を作っている物もあるんだ。他の水と違って、品質の良い薬が作れるんだよ。
だからこの水が止まってしまうと、ちょっと困るんだ。また掘り返せば良いだけなんだけど。今、そんな暇はないからね。
「みんな、階段や壁が崩れているかもしれないから気をつけて」
『アーベルの光魔法で、周りがよく見えるから大丈夫』
『そうだぞ。外よりも明るいんだぞ』
『いつもこれくらい明るいと楽』
階段を下りると1番奥の地下室へ。そこに水汲み場があるんだ。他の部屋はその後確認する。
部屋を開けてすぐ、部屋の中を光で照らす。ちょっと見ただけだと、壁や床はいつもと変わりないように見える。
それと井戸みたいに作られている水汲み場は、自然に水が開いてくるため、いつもチョロチョロと水が流れているんだけど。そのチョロチョロの水も出ている。
「みんなは周りを見ていて。僕は水を確認するから」
すぐに水を溜めている入れ物の蓋を外す。どうだ? 僕は側に置いてあった小さな入れ物に手を伸ばした。そして水を汲んで、水が濁っていないか、変な匂いはついていなか。しっかりと調べる。
ここの水はとっても透き通っていて、キラキラと輝いているように見える、とても綺麗な水なんだ。だから異変があればすぐに分かる。
確認していると、周りを確認したみんなが、僕の所に集まってきた。
『アーベル、どう?』
『いつも通りか?』
『飲むと美味しい?』
『このお水美味しいの?』
『うん。それに元気になる気がする』
『アーベルどうだ?』
「うん、大丈夫。いつもと変わりないよ」
『良かったねぇ』
『ねぇ、アーベル』
水に蓋をしようとしたときだった。お母さんのミルが僕を止めてきた。
「どうしたの?」
『からの瓶は持っていますか? 蓋つきの』
「ああ、持っているけど」
『今の揺れ、アーベルも何が起こったか、なんとなく分かっているかと。アンセルは気配でしっかり分かっているでしょう?』
『……ああ』
「……アンセル、やっぱりそうなのか? 街の壁が破られた?」
『ああ、だが入ってきた魔獣は数匹で、なんとか皆が止めてくれている』
「はぁ、そうか。お父さん達の気配、分かる?」
『オーランドとアシュリーは無事だ。動き回っている。それと、カロリーナの家族だが。カロリーナ達も無事だ』
「とりあえずって感じか」
『まだまだ魔物はたくさんいるからな』
あまり考えたくはなかったんだけど、やっぱりあの大きな爆発音とあの揺れは、そういう事だったんだな。街を守っている壁が、魔物の攻撃でついに崩れてしまったんだ。でも街に入られたのは数匹で。今はみんなが必死に止めてくれているって。
『だからもしもの時のことを考えて、ここの水を持って行った方が良いと。ここの水は自由に汲んで良いと聞いています。ですからできる限り水を汲んでおいた方が』
確かにミルの言う通りだ。もしもの事が起きて、街から僕達だけで避難しなくちゃいけない時。そしてその避難の時に何かが起こって、薬が必要になったら。この水で性質をよくした薬を作った方が良いかもしれない。
僕はすぐにカバンから瓶を取り出して、手分けして水を入れてもらった。全部で10本の空き瓶に水を入れ、残り3本の瓶はそのままにする事の。他にも何かに使うかもしれないからだ。
水を汲んだ後は他の部屋を調べ、全て異常がなかったから、すぐに受付へと戻った。すると怪我人を治療している人以外、掲示板の所にみんなが集まっていた。
「良いか!! 崩れた壁に関しては、結界でなんとか防いでいるし、すでに壁の修復が始まっているから、君達にはそのままここで働いていてほしい。だが、避難の鐘の音が鳴った時は、最初の鐘で避難してもらって構わない!! だがそれまではよろしく頼む!!」
レイナード先生の声で、みんなが自分の持ち場に戻って行く。僕はすぐにレイナード先生に水の報告と地下の報告をした。
『そうか、無事だったか。なら今ならまだ、水を汲みにいけるか。それと今の話だが、お前はもう分かっているんだろう?』
「はい」
「なら今言った通り、最初の鐘の音で避難しなさい」
「はい」
返事をして持ち場に戻る。街全体で避難をするとき、特別な避難専用の鐘が鳴らされるんだ。最初の鐘は一般市民が。次の鐘で、今回のことで、色々と働いてくれていた人達が避難を。そして最後に冒険者や騎士達が逃げることになっている。
ちなみにバートン達のような上の人達は、最後に逃げるって決まっているけど。バートンが最後に逃げるかは分からない。お父さんが前に、1番最初の逃げたって言っていたから。
レイナード先生は、最初の鐘で僕達に避難しろって言ったんだ。本当は避難なんて起きない方が良いけれど。でもきちんと考えておかないと、いけなくなってしまった。




