58.問題発生? 魔獣の破壊行進
『ここにくるの久しぶり!』
『アーベル学校で忙しい』
『アーベルパパとアーベルママのお手伝いで忙しい』
『前みたいに、もっといっぱい来たいなぁ』
『それで、みんなでご飯食べるんだぞ!』
『その後ここで遊ぶ!』
ちょうど今日は人が少ない日なのか。まぁ、週の始まりだからな。みんな仕事に忙しいんだろう。ベンチは全て空いていた。だから1番景色の良い場所を選んでベンチに座って、すぐにご飯を食べ始めると。セレン達がそんなことを言ってきた。
そういえば確かに。上の学校へ行き始め、授業の時間も日数も増えて。それに加えて、お父さんとお母さんの手伝いを、前よりも手伝うようになった。
自分達だけで薬草採取に出かけて、アンセル達のことで、最近はずっとここへ来ていなかったなと。
みんなの、もっと来たい、ご飯を食べたい、遊びたいという言葉を聞いて。みんな訓練訓練と言っていたけど、本当はもっと遊びたかったんだなと気付かされた。
可哀想なことをしてしまったな。考えたらここに来ていた時のみんなは、本当に楽しそうに遊んでいたけっけ。これからは前ほどとはいえないけど、もう少しここへ連れてきてあげないとなぁ。
「ごめんな。今度から時間を作るから、ゆっくり遊びにこような。もちろん今日みたいに、ご飯を持ってこよう。後は学校帰り、ちょっと寄り道して、ここで夕陽を眺めるなんてどうだ?」
『夕焼け!! 僕ねぇ、ここから見る夕焼けも大好き!!』
『俺もだぞ!!』
『ハピちゃんも!! ハピちゃんは夜も好き』
『夜?』
『そうそう、夜もとっても綺麗なんだよ。お星様が降ってるように見えるくらい、キラキラ光ってるんだ』
『手伸ばしたら、とどきそうなんだぞ!』
『前に手を伸ばして落ちそうになった』
『危ないねぇ』
実はハピちゃん、星に触れるんじゃないかって思える程の、たくさんの綺麗な星を。何故か触るんじゃなく、蹴れるんじゃないかって。後で話しを聞いた時は、なんで蹴るだよって思ってけど。それを実行したハピちゃん。
蹴るのに夢中になり過ぎて、僕の頭の上でツルんッ!! とね。それでバランスを崩して、突然のことに反応ができず、飛ぶこともできずに俺の頭から落ちて、僕が慌ててハピちゃんをすくったんだよ。
「夜はなかなか来られないけれど、でもそうだな。夜はお父さんとお母さんも一緒にこよう。それと転ばないように気をつけてね」
『うん、危ない』
そうして色々な話しをしながら、楽しいお昼ご飯を終わらせた僕達。買ってきたご飯は全てなくなって、ちゃんとゴミの片付けをしたら、セレン達は食後の休憩もそこそこに遊び始めた。
「今からそんなに激しく遊ぶと、お腹が痛くなっちゃうよ!」
『あっ!! 向こうに何かあるよ!!』
『テディー、何か面白い物や、かっこいい物、可愛い物を見つけたら、その袋の中に入れるんだぞ!』
『うん!!』
『むっ!! キラキラ発見!!』
猛スピードで飛んでいくハピちゃん、それに続くセレン達。どこまで走って行くんだと思ったら、ただ単に勢いよく走り過ぎて通り過ぎたらしい。急いで戻ってきて行き過ぎたって、みんなで笑っていた。
『何をやっているんだ?』
「楽しくて止まらないんだよ。まぁ、勝手に遊んでるから大丈夫。それよりも今日の帰りに買って帰る、おつまみのことなんだけど」
『ああ!! おつまみだな!!』
「……やっぱり親子だよね」
『何だ? どうした?』
「いや、なんでもないよ。それで、おつまみなんだけど……」
おつまみって聞いた時の反応が、遊ぶことや新しい何かを見た時のテディーにそっくりだった。さすが親子だ。
それからそれぞれ遊んだり、話しをしたりして、時間は過ぎて行き。そろそろお店が並んでいる場所へ戻ろうと、もう1度片付けを始めた時だった。今までニコニコ笑いながら僕と話していたアンセルが、バッ!! と顔を上げて、ある一定の方向を睨みながら唸り始めたんだ。
『グウゥゥゥッ!!』
「アンセル? どうしたんだ? 何かあるのか?」
僕もアンセルが見ている方をみる。だけど何も変わった所はなく。僕はもう1度アンセルに声をかける。
「アンセル、何かあるのか? 僕には何も見えないんだけど」
『まだ見えてはいない。俺は気配を感じているんだ。アーベル問題が発生したぞ』
「問題?」
アンセルの表情は、今までで見た中で1番険しい顔をしている。テディーの症状が分かった時よりだ。
「問題って?」
『お前達も話は聞いた事があるだろう? いや経験をしたこともあるのか? 1つ向こうの森と、1番近い林の、街から遠い方の入り口付近に魔物が現れた。魔物の数、魔物の行動からいって、これは魔物の破壊行進だ』
「魔物の破壊行進!?」
魔物の破壊行進とは、どこからともなく魔物達が大量に集まり、その大群のまま何処までも進み続け。行く先に街や村があろうが、そんなことお構いなしに、街や村を破壊ながら進んでいく。それが魔物の破壊行進だ。
何故魔物達が集まるのか。何故そのまま多種多様な魔物達が集まっているのに、お互いを攻撃せずに行進をするのか。たくさんの人達が研究したんだけど、その理由は分からず。しかも今言った通り破壊をしながら進むため、かなりの被害が出るんだ。
まさか本当にその魔物の破壊行進が!? 僕はまだ経験した事がないし、お父さん達もこの街で暮らしてから、1度も魔物の破壊行進は起きた事がないって言っていた。
「本当に魔物の破壊行進が?」
『ああ。間違いない。いつもと違うところもあるが、それでも魔物の破壊行進で間違いないだろう』
「大変だ……。魔物達はどっちの方向へ進んでいる?」
『……このまま進めば、確実にこの街へやって来るぞ』
「そうか……。分かった!! とりあえずみんなに知らせないと。まずは冒険者ギルドへ行って、アドルフさんに話しを聞いてもらおう」
『普通の行進よりもゆっくりだからな、あのスピードで進んで来るのなら、街に到着するのは明日の午前中くらいか。それでも時間はあまりないぞ』
「分かった!」




