15.みんなが過ごす場所、ママとお母さんムーンラビットの2人の時間
朝は冒険者ギルドも商業ギルドも激混みらしくて、その激混み時間をずらして、お昼ご飯前にお店が集まっている地区へ来た僕達。登録の後はご飯を食べて、そのまた後はママが買い物をしたいってことで。夕方まではここで過ごす予定だ。
夕飯は好きなものを屋台で買って帰ることになっている。この世界の料理がそうなのか、それとも、この街の料理が美味しいのか。なにしろまだ街から出たことがないから分からないけれど。
でも食堂の料理も屋台の料理も、とっても美味しくて。今日はどのご飯にしようかって、いつも迷っちゃうんだ。
「夕飯を買う時間もあるから、なるべく早く買い物を終われせてくれ」
「分かっているわよ。それに今日は私の買い物というよりも、ムーンラビットのお母さんの買い物なのよ」
「そうなのか? 魔獣が買い物? 何を買うんだ?」
「まぁ、色々あるのよ。それに確認もしたいって言っているし。これからは家族として、ちょくちょくここへは来られるでしょうけど、なるべくたくさんの物を見せてあげるつもりよ」
「分かった。お父さんの方は良いのか?」
「お父さんはとりあえず街の見学をするって」
子ムーンラビットのお母さん。何が欲しいんだろうな? 魔獣が必要な物? 新しい寝床用のベッドとか? それは勿論今日見る予定だけど。
実は家族になるって決まった昨日の夜、みんなで話し合いがおこなわれて。子ムーンラビット一家がこれからどこに住むか、みんなで話し合ったんだよ。
せっかく家族になったんだから、畑の横の巣穴で暮らしていても良いけど、雨風凌げて、暑さや寒さを凌げる、家の中でみんなで暮らした方が良いと思って。
だけど元々は外で暮らしている魔獣だから、いくら家族でもやっぱり外が良いって言われるかもしれない。
なにしろ土にそこそこ大きな穴を掘って、上にも山型の大きな段ボール箱くらいの空間を作って暮らしているから。土の方が良いって言うかも。
そう考えて、話しを聞いたんだけど。即答だったよ、家の中で暮らすって。別に土にこだわりがあるわけじゃなくて、自然の中で生活するなら、土が1番良かったっていうだけだったらしい。
そこで俺の部屋には勿論子ムーンラビットが。子ムーンラビットの両親は、両親のサイズにちょうど合っている、ちょっとした物をしまうための収納空間がうちにあったから。そこで夫婦ゆっくり暮らしてもらうことに。
と、すぐに過ごす場所が決まったんだけど。ここでママとお母さんムーンラビットは、時々2人だけで寝たいって言ったんだ。女同士の話しをしたいから、って言うのが理由らしい。
パパとお父さんムーンラビットが、何でだ? 別に俺達が一緒でも良いだろう、って言ったら、女には女の時間が必要な時があるのよ、の一言でパパ達を黙らせていたよ。
だからママとお母さんムーンラビットが、2人で部屋を使う時は、パパとお父さんムーンは、1階のソファーで寝ることに。
あの時のママとお母さんムーンラビットの表情。ニコニコ笑っているのに、凄い圧を感じて。たぶんパパ達もその圧にやられたんじゃないかな。ママ達の隣に座っていた僕が、しかも子供の僕が感じるほどの圧。パパ達は相当だったはず。
ちなみにこの時の子ムーンラビットといえば、テーブルに乗っていたんだけど。どうも子ムーンラビットはお母さんムーンラビットの圧を見たことがあったらしくて。ちょっと怖がっていた俺の、テーブルに乗せていた手に顔をすりすりして、大丈夫だよってしてくれた。
そしてその後は2人のパパ達の方を見て、やれやれって表情をしていたよ。何も言わずに頷いていれば良いのにって感じで。
まぁ、こんなちょっと問題もあった話し合いだったけど。家で暮らすと決まったら、ベッドや食器なんかが必要だから、絶対にそれは買って。他にもお店を見ている最中に、必要な物が見つかるかもしれないから。その時その時で買っていくことに。
後は今話した、お母さんと、お母さんムーンラビットの買い物をするんだ。
「さて、どれだけ空いたか」
そんなこれからのことを話しながら歩いていれば、先に冒険者ギルドに到着。建物は7階建てで、この街で1番大きな建物だ。ちなみに1番はもう1つあって、もう1つはもちろん商業ギルドで、2つの建物は向かい合って建てられている。
「さぁ、入ろう。良いか、どれだけ空いたか分からないが、それでも他の場所よりも人は多いからな。パパ達から離れるんじゃないぞ」
「うん!!」
冒険者ギルドと商業ギルドに入れるようになるのは3歳になってから。両親や大人と同伴で入れるようになる。1人で入れるようになるのは11歳になってから。地球でいえば小学4年生くらいか? それでもやっぱり心配だって、よく親が付いてくるけど。
そして冒険者や商人関係として、ギルドに登録できるようになるのは13歳になってからだ。
僕は今までに何回もパパ達と、両方のギルドに入っているけど。時々ギルドの中が広過ぎて、そして人が多過ぎて迷子になっている子が。
そうならないように必ず僕は、パパかママの洋服を掴む事になっている。さすがに中身が大人の僕が迷子になるとは思わないけど、でも一応ね。
「みんなも必ず私達が抱っこしているけれど気をつけてね。特におチビさんは、アーベルの頭から降りちゃダメよ。まだ登録も済んでいないし、もし誰かに何かされたら大変だわ」
『きゅ!!』
元気よくしっかりと返事をする、俺の頭の上に乗っている子ムーンラビット。パパが頷いてドアを開けてみんなで中に入る。
「お、今日はいつもより空いてるな。良かった良かった、これならすぐに登録できるぞ」
パパの言った通り、中にはあまり人がいなくて、受付にも数人しか並んでいなかった。




