12.儀式の結果は? 急いで急いで!!
「ごめんなさいね。すぐに戻ってくるから!!」
「ママ、はやく!!」
「レントンの店で待っていてくれ!!」
「パパ、はやく!!」
「分かったわ! 行ってらっしゃい!! まぁ、そうなるわよね」
「そうなるよな」
「ママ、アーベルは!! おかし!!」
「カロリーナ、アーベルは大切なご用事ができたのよ。すぐに戻ってくるから、先にお菓子を貰いに行きましょう」
「だめ!! アーベルとえらぶの!! なんでアーベル、おうちにかえっちゃうの!! ごようじ、ダメ!!」
「カロリーナ、これはアーベルにとって、とても大切なことなんだ。だから少しだけ待っていような」
「アーベル!!」
後ろからカロリーナの僕を呼ぶ声が聞こえるけど。ごめん、今だけは家に帰らせて。すぐに戻ってくるから!!
心の中で謝りながら、どんどん歩いて、いつも家とお店の集まってい地区の行き来は徒歩だけど。今は特別にパパが馬車に乗って良いって。一般市民が街の中の移動に使う馬車乗り場へ。そうして家の近くまで行ってもらえるか確認して、すぐに馬車に乗り込んだ。
「パパ! はやく!!」
「待て待て。馬車はちゃんとスピードが決まっているんだから。それに少し落ち着け」
「アーベル。あなたの考えていることは分かっているけど、まだそれが叶うとは決まっていないよ。まずはちゃんと話しをして、相手の気持ちをきちんと聞かないと」
「ぼく、おはなしする!! ママはちゃんとなんておはなししてるかおしえて!!」
「ええ、勿論それは教えるけれど……」
早く早く。歩くよりもぜんぜん早く進む馬車。それでも僕は思わず早く早くって言っちゃって。最後は馬車から乗り出す感じに。パパが僕の洋服を引っ張って支えてくれたよ。
「おい、向こうの家族には?」
「勿論、もう話はしてあるわよ。それにこの話しを持ちかけてきたのは、向こうが先だもの」
「じゃあ、心配はないんだな?」
「ええ、問題はなわ。でもアーベルには、きちんと相手のことを、気持ちを確かめるということを教えないと。だから本当の事は言わずにやらせるわ」
「ああ、そうだな。ふぅ、だが良かったのか、悪かったのか」
「色々問題はあるけれど、アーベルにとっては、良かったに決まっているわ。後のことは私達がアーベルの心の支えに」
「勿論だ」
家に帰るってことばかり考えていて、この時のパパ達の話しを聞いていなかった僕。だって本当に、話どころじゃなかったんだよ。
馬車が家の近くで止まって、いつもの半分の時間で家に着いた僕達。僕は家に入らず、そのまま畑の方へ。そして畑の収穫したばかりで何もない場所で、日向ぼっこをしているムーンラビットと一家を見つけると、そっちへ走って行き。
と、途中で石に躓き、ジュシャアァァァと転んだ。慌てて駆け寄ってくるパパ達と、ムーンラビットと一家。子ムーンラビットは俺の擦りむいた膝を見てさらに慌てる。
僕も足の痛みに、少しだけ涙が出たけど、ママがすぐに、ママ特製の薬を持ってきてくれて、それでささっと怪我を治してもらった。ママ、ありがとう。
「アーベル、本当に一旦落ち着け。お前がとっても喜んでいるのは分かる。だけど、こうやって慌てて、みんなに心配をかけるのはダメな事だ」
パパに怒られちゃったよ。でも、そうだよ。みんなに心配かけるのはダメだ。本当はダメな事だけど、転んで怪我をして止まった事で、まだふわふわしているけど少しは落ち着けたから、僕はみんなに謝った。
こうしてなんとか落ち着くと、僕はじっと子ムーンラビットを見つめる。そんな俺の様子に、子ムーンラビットは何かを感じ取り。しかもその何かが、良い事だっていうのも気づいたみたいで。
今まで心配していた表情から、とっても嬉しそうな表情になり、ピシッと姿勢を正した。もちろん僕もピシッと姿勢を正して。だってこれから大切な事を、子ムーンラビットに聞くんだから。
「えと、あの」
だけど、いざ聞こうとすると緊張しちゃって、言葉が出てこなくなっちゃってさ。それでも僕の言葉を待ってくれている子ムーンラビット。緊張でカチカチの僕にママが話してきた。
「アーベル。これからのことは、あなたにとって初めてのこと。とってもドキドキしているのよね。でもきっと、ムーンライトもドキドキしながら、アーベルが何を話してくれるのか待っているはずよ」
「ドキドキ……」
「ええ。だからちゃんと気持ちを伝えましょうね。それと、もし自分の気持ちと相手の気持ちが違って、あなたが思っているようにならなくても、それはしょうがないことなの。だからもし相手に気持ちが伝わらなくても、怒ってはダメよ」
うん、分かってるよ。ちゃんと分かってる。ママの言った通り、これからの結果がどうなるか分からない。もしかしたら僕が思っているようにはならないかも。
でも、ドキドキしながら待ってくれている子ムーンラビットに、しっかりと話しをしなくちゃ。待たせちゃダメだよね。
僕は小さく深呼吸して、子ムーンラビットに話しかけた。
「あの、だいすきです!! おともだちになってください。あっ、まちがい。もうおともだち。えと……。かぞくになってください!! ぼくとけいやくしてください!!」
僕が話し終わると、その場に沈黙が流れた。でもすぐに。
『きゅうぅぅぅっ!!』
子ムーンラビットが、大きな声で鳴いて、その場で今できる最大限の高さまでジャンプをした後、すぐに俺に近寄っきた。
そんな子ムーンラビットに、僕がしゃがんで手のひらを合わせて差し出せば、すぐに手のひらに乗ってくれて。ちょっと2人で見つめあった後、いつも通り僕の頭に乗ってきて座った。
何て叫んだか、まだママに聞いてないけど、これは僕の聞いたことに対して、良いよって事で良いんだよね? ね?




