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ラスボスを幸せにし隊 本日発足です! 【完結済み】  作者: えるぜ


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2/17

随分と長い時間眠ってしまっていたようだ。

辺りはもう薄暗くなっている。

バックで流していた安眠チャンネルの効果だろうか、だとしたら優秀なサウンドだ。後でお気に入りに登録しよう………

そう考えながら私はいつも通りにベッドのヘッドボード、そこに設えられた棚を見あげた。

………が、そこに棚は無かった。

あるのは、あるのはというのは正確ではないかもしれない、周囲には鬱蒼と生えた木々、深い森の奥に私はいた。


まだ夢見てるんだな。


そう思いながら辺りを見回す。

キラリと光る物がある。

何だろう、とそっと近寄ってみる。


光って見えたのはふかふかとした苔の上で、無防備な姿で寝とぼけている子供の髪だった。

銀色の髪が月明かりに照らされてきらきらと輝いている。

時々薄い雲が月を隠し、ぼんやりとした月光に変わると、一層輝きを増すように見えた。


………これは、アレだ。

アレだろ、アレ、間違いない。

しかも子供。


「尊い」


何ていい夢、もうちょっと近づいて………と移動しながらふと違和感を覚える。

何だか歩いている気がしない。気がしない、というか浮いているような気がする。

いや、浮いているというより………飛んでる!?

移動すると心なしか羽音がするような気がする。

羽虫!?

羽虫なのか私。

そりゃ、ルーシャス様の成長を陰で見守りたいとは思ったけどさ、虫って事はないでしょう。

狼狽えながらルー様(仮)の顔の辺りに更に近づく。

ぱしん!

乾いた音を立てて私の体が横に吹っ飛んだ。

おっとう!

体勢を整える。

随分と加減されていたのだろう、どこにも故障はないようで、私はふわりと上昇する。

そりゃそうだ。人一倍勘のいいルー様(仮)、虫の気配にも当然気が付く。

けれど、その気になれば打ち殺すことも出来ただろうにそれはしなかった。


いい子。ルー様(仮)いい子。


調子に乗った私は再びルー様(仮)の顔に近づく。


鬱陶しそうに片目を眇めるように開く。

綺麗な緑色の瞳。

薄桃色の唇が開いて言葉を紡ぐ。


「………何なの?」


生ルー様(仮)声キターーーーーー!


私は心の中で雄たけびを上げた。

ルー様(仮)は上半身を起こし、顔の前で軽く手を振った。


「何なの、このテントウ虫」


テントウ虫かよ!!!!!


あたしはてんとーむしー

とか歌ってる場合じゃない。


まあ、ちょっと予感はあった。

羽虫かもしれないと思った瞬間、テントウ虫?とは思った。何故なら………




二次創作サイト『レディバード』、その名もずばりテントウ虫。

レディバードは、ルーシャス様が噴火口に落ち溶岩に飲み込まれる瞬間現れた赤い小さな光が、ルーシャス様を慕ってずっと付いてきたテントウ虫だという管理人さんの妄想………もとい、ロマンから生まれたサイトだった。

管理人さんはゲーム画面を何度も読み込み、当時の粗いゲーム画面や途中に挟まれるムービーを検証し、赤い光を見つけては嬉々として報告をしていた。

ルー様の最期、ごぶりごぶりと音を立てて煮えたぎる溶岩の上でいつまでもいつまでも飛び続けるテントウ虫。

やがて力尽き、音もなく溶岩に飲み込まれていく………

くっ、あの話には泣かされたぜ。

そもそもあのゲーム自体、あのポリゴン画面に何故そこまで萌えられたのか、今となっては全く不可解ではある。

手足なんてもんじゃ焼きのヘラか?と思うようなキャラクター達に、私達は心の底からのめり込んでいた。

そしてテントウ虫は、いつしかレディバードのアイコン、いや、ルージェニを愛でる全ての同好の士達の共通アイコンになっていた。

私はテントウ虫のアクセサリー集めにも熱狂し、誕生日にはお姉ちゃんに手作りのテントウ虫ポシェットまで作って貰ったものだ。



ふむふむ、と推論を重ねる。

であれば、私がこの姿になった事にも何らかの理由があるはず。

それに、テントウ虫は………


何となく嬉しいような悲しいような気持に襲われて、私はルー様(仮)に視線を戻した。

なんと!

ルー様(仮)が、こちらに向かって手のひらを差し伸べていらっしゃるではないか!

これはあれですか、もそっと近う寄れ、というお考えと、そう判断して宜しいでしょうか。

私はそれこそ虫の本能、良い香りに誘われるようにルー様(仮)の手のひらに吸い寄せられた。

え、ちょっとそんなに見ないで恥ずかしい。

ルー様(仮)が手のひらの上の私をまじまじと見ている。

もじもじしていると(虫のもじもじ、それは体現出来ているのか不明ながら)ルー様(仮)が開いた手のひらをそのままにすいと人差し指を空に向けた。


いやー、今度のこれはテントウ虫の本能か、私の体は認識するより先に指の先へとするする昇って行った。


「………ホントに上へ、上へ、って昇って行くんだ」


ルー様(仮)が面白そうに呟く。


「一番上まで昇ったら飛んで行くって………お前は、飛んで行かないの?」


私はその時、虫の本能と人間の本能の狭間で激しい戦いを繰り広げていた。

勿論飛びたい。上まで来たら飛びたい。

ついさっき虫になったばかりだというのに、このちっこい本能は私の体を乗っ取ろうとしている。

まさに一寸の虫にも五分の本能。その五分に負けてはならじと、ルー様(仮)の傍を離れない、ここではぐれたら一生会えない、という私の欲望が拮抗していた。

その時である。


カサッ、と5メートル程先の草むらが動いた。

勿論、私が気づくより早くルー様(仮)はそちらを注視している。

ルー様(仮)は手近にあった小石を拾うと綺麗なアンダースローでそれを投げた。

石は穏やかな放物線を描き、音がしたと思われる僅か後ろに柔らかく着地した。


ちょっ、何すんですか!ヘビとか出てきたらどうすんですか!

私はいいですよ!?私は!飛べますからね!

でも毒でも持ってたら………


「………仔犬?」


私の狼狽を知らずにルー様(仮)は音のした方向へと向かう。

草むらが割れて、そこから小さな黒い毛の塊が姿を現した。


フェル様、キターーーーーーーーーーーーーーー!!!!!


私は今度こそ胸を掻きむしって身悶え叫んだ。

なんてこった。

私は、子供のルー様(仮)、いやもう確定。フェル様キタ以上確定。

ルー様とフェル様のファーストコンタクトに居合わせている!

何という僥倖。

何という眼福。

いやいや、仔犬じゃないんですよルー様。それはオオカミの子供です。黒オオカミですよ、すごーく珍しいんですよ。

成長するとね、黒銀王とまで称される最強のオオカミになるんですよ!


ルー様には届かない。


それでですね、白銀のルー様と黒銀のフェル様はいつも一緒。ルー様在るところに必ず影のように寄り添うフェル様。

エメラルドスフィア二次創作界、それは様々なカップリングがございますけれど、カップリングの域を超えた存在、それはルー様とフェル様、ルー様の隣にはフェル様それは共通認識。


中にはフェル様を擬人化………げふんげふん、いや、人間の欲望のはきりが無くてですね!


勿論ルー様には届いていない。


あ、あとね!

うちでも犬飼ったんですよ!

黒柴!

名前は鉄丸、何で鉄丸かって言うとフェル様のお名前のですね!Fe!ね!鉄でしょ!洒落てるでしょ!


届かないままに続けながらあれ?と私は思う。

鉄丸が家に来た時確か生後三か月だった。

あそこで震えている毛玉はその時の鉄丸より小さい。

オオカミの子供、成長した時にはバーニーズマウンテンより大きそうだったあのオオカミ。

………今、生まれてどの位なんだろう。


え、どうしよう。

今はまだいいけれど、この気候、春?秋?夜中になったらどんどん気温が下がりそう。

虫の自分が恨めしい。


『怖くないよ、こっちおいで。

この人、優しい人だから(多分)。

おいで、おいで』


届かない事は承知の上、それでも声をかけずにはいられなかった。




『………誰?』



キュウ、という声がした後、言葉が脳内に響いた。


『誰?どこにいるの?

僕に話しかけてくれたのは誰?』



私の声が届いた。






作中のゲーム及び二次創作サイトはフィクションです

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