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ラスボスを幸せにし隊 本日発足です! 【完結済み】  作者: えるぜ


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今よりほんのちょっと昔の話。

スマホが無かった頃。

ガラケーはあったけれど、どこまでの機能が可能だったのかもう覚えていない。

当時、インターネットとの繋がりは専らパソコンだった。

定額制なんて勿論ない。

固定電話と同じように、使えば使っただけ通信量がかかる。

今の若い子になんて想像出来ないだろうけれど、電話会社は一択、

ドニーチョなんてサービスがあって土日夜は通信料が少し安くなってた。


……ドニーチョ、コマーシャルまでやってたもんなあ。


我が家にノートパソコンが導入されたのもその頃だった。

それ以前は大きなデスクトップ。

両親が使っているのは見ていたけれど、子供が気軽にスイッチを入れて弄れる雰囲気ではなかった。

そうそう、当然Wi-Fiなんてないから、ノートと言ってもリビングでケーブルを繋いで使う。

まあ、使うと言っても部屋でスマホを見るような手軽さではない。

それでも、その一台のノートパソコンは私の人生を一変させた。


最初に使ったのは学校の調べ物だった。

娘に甘く、おそらくノートパソコンが嬉しかっただろう父親と

リビングで隣同士に座って、検索の仕方、タッチパッドの使い方、

ファンクションキー、そう言えばキーボード入力練習用のソフトまで買ってくれて

とにかく色々と教えてくれた。

娘には甘かったがセキュリティと健康管理には厳しかった父親は

きっちりとサイト閲覧に年齢制限をかけ、家族それぞれのパスワードを設定し

私の使用可能な時間も制限しやがった………ではなくて、してくれた。


ある意味、健全だよね。

子供のネット利用が全くのフリーダムになったのっていつ頃からだろう。

多分、iPod touchが出た頃からかな。

こっそり買って、部屋の中でWi-Fi拾えるようになって。


そして一通りの操作が出来るようになったある日、私は禁断の検索ワードを入力してしまった。

それは当時大ハマりしていたゲームのタイトル。

いや、ゲームタイトル自体は別に禁断ではなかった。

私は検索結果の中に、見慣れない言葉を幾つも発見してしまったのである。

○○×△△、○攻め、△総受け……………

これは一体何?

検索結果一覧のそれぞれには、諸兄もご存じの通り、内容も数行表示される。


○○ともどうせこんな事をしているんだろう?


こんな事!?

こんな事ってナニ。

どんな事を、とクリックしたのは言うまでもない。

そして約1時間後、私は呆然としながらも自分に革命が起きた事を知った。

私は「萌え」を覚えた!

私はレベルが上がった!

13歳の春であった。

そしてそれから日々レベルアップのために、二次創作という名のダンジョンに潜る事になる。


そして翌月、通信料の膨大さに驚いた母親から大目玉を喰らい、

流石の父親からもお叱言を頂戴した。

結果、1ヶ月の使用時間を厳しく設定され、母親に毎日のように「昨日までの通信時間」をチェックされるようになった。

そうなると必然的に、ただ漫然と貪り読むという訳には行かない。

私は厳選したサイトを幾つか絞り、毎日トップページにある更新欄を見る。

動体視力が上がった。

更新がない日は1日5分くらいで周回し、更新があった日にはもう飛び上がって喜んで

一言一句覚えるように何度も読み込んだ。

ダウンロードもスクショもない時代の話である。







「ああ………暇だ」


梅雨入り前、初夏のなんとも清々しい休日の午後、私はベッドに転がってスマホをいじっていた。

Youtubeで寝ながら出来るストレッチでもしようか、それとも安眠音楽でも流してこのまま昼寝と洒落込むか。

いや、全然別に洒落てないけどね、でもだらだらと過ごすこんな午後は社会人にとっては至福の時である。

そう考えながらもつらつらとネットとの邂逅を思い出していたのには訳がある。

それは最近始めたアプリゲー。

なんでも、20年前にPCゲームとしてリリースされた物がオリジナルだと言う。

20年の歳月を経て、サービスを終了したゲームの権利を別会社が買い取り、キャラクターの使用権を得てスマホゲームとしてリリースされたと言う。

戯れにダウンロードして、色々な書き込みを読んでいると、懐かしい、嬉しい、また会えた、と他人とは思えないようなコメントが並ぶ。

20年続いた事も凄いとは思ったが、そのうちの何年かをプレイしたであろう各世代の感慨がまた面白い。


当時小学生で課金できなかった、とかね。


その頃もう課金なんてあったんだ、ゲーム全然やってなかったからなあ。

でも、プレイしてみていれば良かった、そうしたら10年以上前のあれやこれや話せる人がここにはこんなにいるんだ。

そんな事を思いつつあちこち眺めプレイしていたところ、

そのゲーム内の裏ページに飛んだのである。

飛んだ瞬間に爆笑。

2000年頃の、古臭い手作り感満々のHP仕様。

背景の色使いから誤植、クリック音まで懐かしさの嵐。


こういう手作りの個人サイトって最近見ないなあ………

あの頃のサイトって今も残っているんだろうか。

フリーのホームページサービスが終了してしまい、跡形もなくなってしまったサイトもたくさんある。

大好きだったあの創作サイト、サイト名も管理人さんの名前も覚えている。


………まだあるのかな。


サイト名を入れる。


上位には出て来ない。

そりゃそうだ、一般名詞だし。


スペース、管理人さんの名前。





あった。




ちょっとわくわくしながらタップ。

検索結果はあっても、飛んだらnot found、は良くある事。

けれど………






おお、懐かしの



「レディバード」。




welcome、の文字の下に

「このサイトは、ゲーム『エメラルドスフィア』を元にした二次創作サイトです

メインカップリングはルージェニ


そう、ここはラスボス×ヒロインを主に扱う希少なサイトだった。


原作とは一切の関係はありません………………


云々の注意書き、そして最後に

キリ番踏まれた方は、リクエスト受け付けます お気軽にメルフォから!』

で〆られていた。

あったよなあ、キリ番。

カウンターでキリの良い数字を踏むと、書いて欲しいテーマとかリクエスト出来るの。

憧れた物だわ。

次のキリ番、という指定の数字が近いと何度もトップページを更新した。

けれど、同じ事を考えているユーザーも多く、リロード中に踏まれてしまう。

どれどれ……と視線を降ろす。


おっとお!

なんだかきっちりと綺麗な数字!

なんと私は栄ある100万番目のお客様だったらしい。

1,000,000、数字を見ると物凄い。

当時の手作りサイトでは、これまた無料カウンターという物があって、良く設置されていたものだが

無料カウンターのサービスが生きていた事自体が奇跡だ。

カウンターには2種類あって、1日一回の訪問のみカウントされる物、そしてカウンターがあるページを開く度にカウントされる、通称「バカウンター」、確かこのサイトにはバカウンターがついていた筈。

当時は、カウント数が高いサイトにバカウンターが設置されていたりすると陰で揶揄される事もあったらしい。

けれどこうして実際に数字を見てみると、1日に何度も更新を確かめたり、10年以上に渡って誰かが開いていた証のようで、なんとなく「生きてたんだなあ」としみじみしてしまう。

念のためにスクショを撮り、リンクに飛ぶ。


管理人さんの日記はブログに繋がっていたけれど、ブログの更新はずっと前に止まっていた。

掲示板は、「このページは存在」しなくなっていた。

更新履歴も止まっている。

途中まで読んでいた長編は未完のままだった。


100万、踏んだんですけど………


メルフォは………使えそうだった。



どうしよう、今更読みたい話がある訳じゃない。

メルフォのアドレス、今はもう使っていないかもしれない。

そもそも、いい歳をしてキリ番踏みました、とか恥ずかしくない?

でも、スマホアプリのフレンドさん達が、20年前のゲームをまだ懐かしんでいる。

その素直な気持ちに触れたばかりの私は、つい入力をしてしまった。

勿論、万が一にも管理人さんに届いた場合を考えてリクエストなどするつもりもない。

けれど、そのサイトの小説は、管理人さん一推しのラスボスへの愛で溢れていた。

途中で狂気に走り、ラスボスと化すキャラクター、ルーシャス。

そして、ゲームでは殆どかかわりがなかったヒロイン、ユージェニー。

2人に幸せになって欲しい、その気持ちは今も変わらない。



「お元気でいらっしゃいますか?

暫くぶりにサイトにお邪魔致しました。

ここには今もルーシャスへの愛が溢れていました。

あれからルーシャスは幸せになれましたか?

今は幸せで……………


途中まで入力して指が止まる。

何となく更新停止を非難しているようだ。

そもそもゲーム内では主人公に倒されて噴火口の中に落ちて行くのだから、あれからも何もない。

けれど、管理人さんの紡ぎ出す物語の中でだけは彼は幸せだった。


一度全てをクリアする。


リクエスト………

ルーシャスが幸せに育って幸せに大人になって、幸せなまま歳を重ねる。

出来たらそれを側で見られたらいいな。

でも、二次創作の中でオリジナルキャラ作るのは難しいし、読み手に好き嫌いもある。


「ま、届くわけないけどね」





お元気でいらっしゃいますか?


キリ番踏んだ記念に。

今もルーシャスの幸せを祈っております。







私を含めた誰かの100万回の思い、届け。


そう願って私はエンターキーをタップした。






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