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空は花を見つける~貴方が私の運命~  作者: 小畑 こぱん
私立清泉小学校編―1年生の1年間―
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Episode32.5 side 薔之院 麗花⑥-2 8回目のお家訪問

 これでも数多く催会に出ていた私が、同家格である花蓮さんと初めて出会った場があのお茶会。たまたま春日井家の夕紀さまとはあの催会が初めての出会いだったが、今までかち合わなかっただけで彼も参加の数は同じくらいだ。


 他にも緋凰家や白鴎家、秋苑寺家の御曹司たちも親に連れられて紹介されていると聞いている。私とは鉢合わないだけの話で。


 その中で百合宮家の長女の話だけは聞いたことがないのを疑問に思い、花蓮さんに聞いてみたところ、「私も麗花さんと同じでヘコヘコペコペコされるのって嫌なんです。今は両親の厚意に甘えていますけど、あまり催会って出たくないんですよねぇー」と返ってきた。


 と言うわけで限りなくゼロに近い参加率を誇っているらしく、どうりで彼女の話を外で聞かない筈だと納得した。


 そしてそんな百合宮家の長女は外に出ない分、独自の感性を持っている。

 会う度に前述したように驚くような行動を取ったり、口調も初めは令嬢然としていたのが崩れて気安そうなものへと変化したり。


 けれどそれが本来の花蓮さんの姿だと理解し始めたら、その姿を()()()に見せてくれているのだと思ったら。


「その姿は私以外には見せておりませんのよね?」

「麗花さんしか知らないと思いますよ?」


 不思議そうな表情で首を傾げてそう言った花蓮さんの答えに、自然と口角が上がった。


「ならいいのですわ」


 あのお茶会では、他の子は彼女のこんな姿を知らない。花蓮さんのお友達である私しか、知らないのだ。


 ポワポワと嬉しい気持ちが隠しきれず、フフッと思わず笑っていると。


「ところで麗花さん。ちょっと聞きたいことがあるのだけど」


 転がったまま両肘を床につけて、両手で顔を支えて聞いてきた姿勢を注意して座り直させると、思ってもみなかったことを質問された。


「麗花さんって、緋凰さまと面識があったりする?」

「緋凰さまって、緋凰家の陽翔さまのことですの?」

「そう、その緋凰さま」


 何なんですの、突然。

 緋凰 陽翔さまと言えば、お母様がかなり親しくされている緋凰家の奥様のご長男だ。そしてあの春日井 夕紀さまの幼馴染で、親友だとも聞いたことがある。


「いいえ。面識はありませんが、他の子が噂しているのを耳にしたことはありますわ」

「噂とな」


 となって。


「……まぁいいですわ。お顔立ちがすてきとか、キラキラ光っているとか。私はあまり興味ありませんでしたけど」


 それよりも話し掛けられたらどう障りなく返すかで悩んでいたので、容姿云々はその時はまったくと言っていいほど気にしていなかった。

 と、ふと花蓮さんを見たら何だかニヤニヤと顔が緩んでいる。


 ……何となく変なことを考えている気がしますわね。


「ちょっと」

「はい?」

「今、とても失礼なことを想像しませんでした?」

「いえ? まさかそんな」

「……」


 目を逸らした時点でそうだと自供していますわよ。

 ジトッと見ていると強引に話を続けてきた。


「でもまぁ噂なんて当てになりませんよ、本当。キラキラ光るって、まさか自然発光している訳でもないでしょうし」

「自然発光……」

「そうです。あっ、本当に光っていたらどうします? ピッカ、ピッカ。点滅していたら目に痛いこと間違いなしですね~」

「本気で言っていますの?」

「ごめんなさい。冗談です」


 まったくこの子ったらもう。

 う、項垂れる姿が可愛いとか思ってませんわよ!?


「で、そんなことを聞いてどうするんですの? その緋凰さまがどうかなさって?」


 聞くと驚いたような様子で手を振る。


「えっ。いやー、何となく気になっただけです。麗花さんもどう思っているのかなーとか」

「ふーん?」


 別に何も思っていませんけれど。

 だって会ったこともないですもの。


 容姿が素敵だとキャッキャしていた子たちとはどうも様子が違うので、ただ何かの拍子に気になっただけかと思って次の話題へと移る。


「と、ところで花蓮さん。私達も来年には小学校に通うことになりますけど、楽しみですわね! と言っても家格は同じくらいだからクラスは一緒にはなれないとは思いますけど、でもせめて登下校や休憩時間くらいは一緒に……花蓮さん?」


 反応がないので気になって見ると、彼女はぼへーとした顔をしていた。

 ……この子はもうっ!


「花蓮さん、聞いておりますの!?」

「え、わぁっ! へ!?」


 ビクッと肩を跳ね上げさせた後、何の話かと慌てて聞いてきたので、先程話したことをもう一度告げる。


「ですから、同じクラスは難しそうですわねって言ったのですわ!」


 大分端折(はしょ)ったけど話は伝わるだろうと思ったが、次の瞬間、顔が強張るのが分かった。明らかに頭の上で疑問符を飛ばしまくっている。


「ちょっと、花蓮さん。何それ?みたいなその顔何ですの?」

「何でも何も、クラスってえ、まさか……が、学校!?」

「他になにがありまして!?」


 お茶会の時にはあんなにしっかりしていたのに、この抜け様はどういうことですの!? まさかの天然!?


 次いでどこの小学校に通うのかと聞かれ、その問いにもは?となる。


 私達のような富裕層の家は皆、国内屈指のエスカレーター式の学校である私立聖天学院に通うことが当然で自然の話だ。自分のお兄様である奏多さまも通っていると言うのに、一体何を言っているのやら。


 そして現状同学年で同家格の家とクラス分けについて説明していれば、どうしてか次第に遠くを見るような目になっていく花蓮さん。


「麗花さん……。私の人生は終わりました」

「急に何を言い出しますの!?」


 人生を終えるのが早すぎましてよ!?

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