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空は花を見つける~貴方が私の運命~  作者: 小畑 こぱん
私立清泉小学校編―1年生の1年間―
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Episode31-2 遠足の班決め

 そう、クラスの五十音順で一番最初の生徒、委員長こと相田さんと後ろの子、木下さんが私達を見つめていたのである。


 ま、まさかここで裏エースマスク効果が!?


「百合宮さん達の話してる声が聞こえちゃって。ごめんね、こっそり聞く形になっちゃったんだけど、面白くて。ね、まだ女子が決まってないんだったら一緒の班にならない?」

「えっ!?」


 突然のお誘いに驚いて固まる私に対し、男子陣は色よい返事を彼女たちへと出し始めた。


「おう、いいぜ! でも良いのか? 相田たちだったら他に誘われてたところ、あるんじゃないの?」

「んーまぁそうだけど、いい機会だと思って。一度ちょっと話してみたかったんだ」


 そう言って、私ににこりと笑みを向けてくる相田さん。

 こ、これは私に向かって言ってるんだよね!?


「お、お話ってわ、私とですか?」

「あははっ。キョドリ過ぎだよ百合宮さん。ほら、大丈夫だよ香織ちゃん」


 出ておいでと背からぴっぺがされた木下さんが、私の席の横へと押し出されている。

 その悲壮な表情たるやすっかり私に怯えきっており、思わず怯えの対象となっている私でさえも同情しそうなほどであった。泣いても良いですかね?


「ああああ、あう、う、うう~」


 ……私が泣く前に木下さんが泣き始めたんだけど。

 何これどうすればいいの?


 相田さんは困り果てた私達を尻目に、慣れた様子で木下さんの背中を擦ってあげている。


「香織ちゃんってばも~。ごめんね、百合宮さん。この子昔から緊張しいでピークに達すると、こんな風にすぐ泣き出しちゃうの。気を悪くしないであげて欲しいんだけど……」

「いえ、別に私は気にしておりませんので。それに相田さん達が同じ班になってくださったら、私も嬉しいです」

「やった! ね、香織ちゃん」

「うう~、うんっ、ぐすっ」


 果たして木下さんの返事に関しては喜んでいいのか、どうなのか。


「めでたく班も決まったことですし、じゃあ俺、班申請行ってきます!」

「よろしくお願いします、下坂くん」


 元気良く五十嵐担任へと班申請に向かっていく下坂くんの後ろ姿に、何となく疑問を感じている私はたっくんへと聞いてみる。


「あの、何で下坂くんは私に対してああなんでしょうか?」


 たっくんは首を傾げた。


「ああって?」

「先程もそうですけど、何と言ったらいいのでしょう? 怖がってる風でもないのに、私の顔色を見ていると言いますか」

「あーアイツのことはあんまり気にしないでやってくれよ。でも絶対花蓮のこと怖がってるわけじゃないから。それはマジだから」

「そうですか?」


 コクコクと頷く裏エースくんに腑に落ちないながらも、それ以上は聞かないことにする。それぞれ事情というものがあるのだろう。


「太刀川くんって、百合宮さんのこと名前で呼んでるの?」

「俺だけじゃなくて拓也もだけど」

「ふーん。仲良いんだね、羨ましいなー」


 えっ、羨ましい!? どっちに!?


「なら相田もさっさと話し掛ければ良かったじゃん。花蓮、ずっと女子に逃げられてるって嘆いてたぜ?」

「あっ、ちょっと太刀川くん!」


 そんな本当のことを面と向かって言うんじゃない! 恥ずかしいでしょうが!

 それに私じゃなくてアンタに向けられていた場合はどうするんだ! 恥ずかしいでしょうが!


「えっ、それ本当!? いつも笑ってるから気にしてないのかと思ってた!」


 驚いて言う相田さんの言葉がグサッときた。

 気にしていました。本当のところ実は気にしていましたとも!


「ほら見ろ。やっぱりもっと思っていることを外に出した方が良いんだって。笑って隠してるからこんなことになるんだぞ」

「太刀川くん。貴方そんなこと言ってないでしょう」


 具体的な説明もなく、笑顔やめろとしか言ってなかったよね?

 なにドヤ顔しているんだ。


「あの、相田さんと木下さん。花蓮ちゃんは全然噂とは違う子だよ? 僕の話も楽しそうに聞いてくれるし、友達思いの良い子なんだ」

「拓也くん……!!」


 ニコッと笑ってフォローをしてくれるたっくん。


 君こそ地上に舞い降りたミカエル……いや、ラファエル!! この世の哀れな迷い子である私に癒しを齎してくれるラファエルよ……!


「えーと、花蓮ちゃん。拝むの止めて欲しいな」

「あら? ほほほ。すみません、つい」


 ありがたやーって気持ちを表してみたんだけど、これはダメだったか。


「ふふっ」

「あははっ。百合宮さんって面白いねー」


 おお!

 相田さんばかりではなく、泣いていた木下さんまでが笑いを!


 今まで全く接する機会がなかったから気づかなかったけれど、良く見ると二人とも可愛い顔立ちをしていて、笑った顔はとても可愛らしい。

 その証拠に私達のグループではない他の男子達の中で、彼女達の方をチラチラ見て気にしている子が結構いた。


 ウチの班の二人はどうだろうかとチラリと見てみれば、たっくんは良かったねと微笑んでくれ、裏エースくんに至っては戻ってくる下坂くんに手を振っていて、彼女達を見ていない。


 そして。


「班が決まったら好きにしていて良いとのことです! やりましたね!」


 帰ってきた途端にキラキラした目で、いの一番に私に報告してくる下坂くん。


 あれ、私の班の男子達は誰も相田さんと木下さんを見ていないけど、いいのかな? というか本当に下坂くんはどうした。


「じゃあちょっと話そうよ! 遠足行くまでに仲良くなりたいし!」


 班が決まってまだ時間に余裕はある。

 だからか、ニコニコ顔の相田さんがそう提案してきたのだった。

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