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空は花を見つける~貴方が私の運命~  作者: 小畑 こぱん
私立清泉小学校編―1年生の1年間―
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Episode31-1 遠足の班決め

 来たる五月吉日。

 清泉小学校の一年生は生徒同士の親睦を深めるため、その年間行事内に遠足というものが含まれている。


 クラス三十人各グループ男女各三人の五グループを作り、当日はその班のメンバーで行動するというわけで、今そのメンバーを決めている最中であるのだが。


「……」

「ここまで来ると天晴あっぱれって感じだなー」

「ちょ、新くん! 花蓮ちゃんのせいじゃないよ、大丈夫だよ!」

「そうですよ! 何ならもうあと二人男子で固めますか!」


 ありがとう、たっくん。

 下坂くんの提案はありがたいけど止めてくれ。

 そして裏エースくんよ、君は後で顔を貸せ。


 グループの男子三人はご覧の通り既に決まっている。五十嵐担任の提案では取りあえず組みたい奴同士で組めとのことだったが、それだと親睦も何もないだろうと思う。

 現に入学して席の近い子同士で固まっているし、あとは男子と女子がどう組むかで決まっていないのが大体だ。


 しかし私達の場合はちょっと特殊で、私とたっくんは絶対のところに裏エースくんが下坂くんとやってきて組んだ状態で、あとは女子二人を待つばかりとなっている。

 裏エースくんの爽やかな甘いマスクをいいな~と思っている女子が釣られてくるかと期待していたのだが、想像以上に私という壁は高かったらしい。


「ねえ! 私の何がそんなにダメなんですか!? 話し掛けやすいようにいつも笑顔でいるこの私のどこが!」


 クワっと目を剥いて男子三人へと問うが、彼等の返答はそれぞれだった。


「うーん。僕、花蓮ちゃんの他に女の子の友達いないし……」

「笑顔って言っても、俺からしてもやっぱり百合宮さんって雲の上の人って感じで、余程のことがないと話し掛けにくいですよ」

「笑顔やめたら?」


 先に言った二人は分かるが、最後のは何だ。


「笑顔やめるってどういうことですか? 淑女の基本は微笑みからですよ」


 素直に疑問を裏エースくんへと投げかけると、彼はあのさ、と口を開く。


「俺も前から思ってたけど、余計に近寄りにくいって。ここは学校なわけで社交の場じゃないんだからさ。もっとこう、何て言うの? はっちゃけてみたら?」

「はっちゃけ……」


 なんて百合宮 花蓮とは無縁の言葉だろう。


「俺、百合宮さんがはっちゃてるのなんか想像できないんだけど……あ、いやできた」


 最初否定していた下坂くんだが、すぐにその意見をひるがえした。

 え、できたの? 何で?


「そのままの花蓮ちゃんを皆に見せたらいいんじゃないかな? ほら、僕と話してる時の花蓮ちゃんって、すごく明るくて楽しいし」

「そうそう。他のヤツに対してだと、花蓮って出来の良い人形が喋ってるって感じがするんだよな」

「!!」


 何気なく言ったつもりだろう裏エースくんの言葉が、なぜか深く胸に突き刺さった。


 “出来の良い人形”



「私は人形なんかじゃありません!!」



 バンッと机を叩き上げて立ち上がる。


 しかし、突然の行動に呆気に取られて私を見上げてくる彼等を目にした瞬間、カッとなって上がった熱があっという間に下がった。

 教室の雰囲気もどこか固くなったのを肌身に感じる。


「お、大きな声を出してすみません」

「いや、俺もごめん。でも悪い意味で言ったわけじゃなくてさ、あー……。いや言い訳だな。もう言わないよ」

「いえ、いいんです」


 椅子に座り直して、内心落ち込んだ。


 あーもう、何やってんだか。裏エースくんに怒鳴っても仕方ないことなのに。ゲームでの“百合宮 花蓮”が百合宮家の操り人形だったから、どうにも過敏になってしまう。


 大丈夫、大丈夫! 私はあの“百合宮 花蓮”じゃないんだし!

 

 私は気を取り直すように話を続けた。


「取りあえず笑うのをやめたら良いんですか? ふんっ」

「何でそこで掛け声がいるんだよ。……笑うなとは言ったけど無表情になれとも言ってないし」

「……百合宮さんそれ怖いです」

「花蓮ちゃん、笑顔! 笑顔の方が可愛いから!」

「何なんですか皆そろって! それじゃ一体私はどうしたら良いんですか!」


 微笑みをやめた途端に出た顰蹙轟々(ひんしゅくごうごう)の声に吠える。

 微笑んでも近づき難い、無表情でも怖いってもうわけ分からん!


 淑女は何時も微笑みを保つべし。

 その教えを守りたくとも、ムムムっと眉間にしわが刻み込むのを止めることができない。


「あの」


 残りの女子二人を確保するのとは別に、何故か私の校内生活態度についてあーだこーだ話し合っていると、そんな私達に声が掛けられる。


 そちらを揃って見やると、何とそこには対照的な表情の二人の女子が近寄ってきていた。

 一人はオドオドしながらもう一人の子の背からこちらを見ており、そのもう一人の子は笑いを堪えた表情で……って、あれ。


「いいん……相田さん?」


 おっと、心のニックネームが。

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