表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空は花を見つける~貴方が私の運命~  作者: 小畑 こぱん
―巡るひととせが繋ぐもの―
619/641

Episode287-2 修学旅行二日目~対策はお早めに~


 適材適所。守るにしても役割分担をすれば、一人が抱える焦りは軽減する。

 私達の言葉を聞いたきくっちーは呆気に取られたような顔をした。


「……やっぱ二人ともすごいな。考えてることが深い」

「有能な同僚がいて嬉しいでしょう、会長」

「私達が同じ学年で良かったですわね、会長」

「だから何かの折りにつけて会長会長言うなってば!」


 そんな風に班別自主研修での桃ちゃん対策をコソコソと話していたところで朝食会場に着き、クラスごとに分かれている席の関係で、二人とはそこで離れる

 席に向かう前に会場を見渡すと桃ちゃんがクラスの子と既に席に着いており、笑ってお喋りしているのが見えた。


 ……うん、私達も楽しまないとね!


 本日の朝食はパン派の私には残念なことに和食のセットメニューではあったが、午前中歩き回ることを考えれば腹持ちの良いご飯の方がいっかとなり、大変美味しい朝ご飯を頂いた。





 この二日目の函館市内班別自主研修は午前中いっぱいまで函館市内を自由に巡り歩き、そして十二時三十分までには宿泊したホテルに戻らなければならない。

 九時まではホテルにて待機と言う名の自由時間を過ごし、そうして時間になれば自主研修のスタートだ。


 私の班は同室の城佐さんと他四名。メンバー紹介すると瀬見さん、時任さん、飯塚(いいづか)さん、(せき)さんである。しおりに印刷されたマップを見て、どう周るかを相談する。


「昨日の夜に城佐さんともお話したのですが、カトリック元町教会に行って、そこからぐるりと周ってホテルに戻るというルートは如何でしょうか?」

「そうなりますと、バスという乗り物を利用しなくてはならないのですよね?」

「飯塚さんは未経験ですか? それなら私達は夏に行った沖なぶ」

「シッ! ですわ!」


 不安を吐露した飯塚さんに大丈夫だと時任さんがその理由を言おうとしたものの、言わせてはならぬとばかりに城佐さんが光の速さで彼女の口を塞いだ。……まあ今はそれ(沖縄旅行)に関して追及しないであげよう。


「大丈夫ですよ、飯塚さん。私も小学生の時に乗った経験はありますので、お教えできます」

「まあ、さすが百合宮さま。博識ですね」

「ホホホ」


 移動に対する一部の不安も解消された後はターミナルにあるバス停に向かい、教会方面に向かうバスに乗車して揺られる。一応この中に車酔いする子はいないので、乗り間違えない限りは大丈夫だと思われる。


 最寄りのバス停で降りてマップを参考に風情のある石畳とレンガの道を歩いて行けば、『天主公教會てんしゅこうきょうかい』とある教会に辿り着いた。

 白い外壁に赤のお屋根と、そこから更に高さを持つ大鐘楼が特徴的なゴシック建築様式のその協会は、キリシタン禁教令が廃止された宣教再開の象徴として建築された、国内では最も古い歴史を持っている教会の一つなのだそうだ。


 聖堂に入ると中央から左右に分かれる形で横長の椅子が並んで配置されており、優しい水色の高い天井には銀色の星が散りばめられている。

 そして奥の正面には祭壇があり、私が学年劇で演じた十字架に磔にされているキリストさま。そして色んな場面を表しているのだろう四つのシーンがあった。

 私達はカトリック校に通う生徒として静かにお祈りを捧げて、教会を後にする。


 そこから徒歩で八幡坂(はちまんざか)に向かい、紅葉に色付く木々の向こうに見える海と空の景色を眺めた。きっと夏には濃い緑と蒼のコントラストがまた映えるのだろう。


 通りに出て再びバスに乗り、次なる行き先は元町のランドマーク・旧函館区公会堂きゅうはこだてくこうかいどう。国の重要文化財に指定されているけれど、今も現役で使用されているそこには絶対に行っておきたいという班の強い希望があったのだ。


「私、小さい頃に訪れたことがあるのですけれど、一般の方々に混じってダンスを踊っていた両親との面白い思い出が一つありますわ」


 車内だから小声で話す関さんの思い出話に、皆で耳を傾ける。


「面白い思い出とは?」

「お父様は苦手なのですけど、お母様がダンス好きなんです。嫌がるお父様と一緒に楽しそうに足を踏みつけながら踊って、涙目でお父様が私に助けを求めてきた記憶が今でも鮮明に残っておりますの」

「まあ……。それはダンスが苦手なんじゃなくて、ご夫人とのダンスが苦手なだけでは……?」


 私も飯塚さんの意見に同感です。まあ何度も何度も裏エースくんの足を踏んづけていた、私が言えることじゃありませんが。


 すると瀬見さんが窓の向こうに見える何かに気づいたようで、声を上げた。


「あら、昨日は見ませんでしたのに。やはり今年も他校と修学旅行の日程が重なっておりましたのね」

「えっ」


 ――――遂に来てしまったらしい。


 麗花が対策してくれたおかげで多少は大丈夫だと思いたいが、私も何度も確認した有明学園の制服をもう一度頭の中に思い起こして、恐る恐るバスの窓から外に視線を移すと――



「……はい?」



 私がそこで見たのは、頭に思い浮かべていた制服ではなかった。というか薄いオレンジのブレザーに、赤と黒のチェック柄って……。

 それは私もよく目にしていた制服。だって長年お兄様と麗花が着用していたものなんだから、そりゃよく見ているに決まって…………え?



 ――――香桜女学院。お互いに肩を並べられると言われている有明学園とではなく、まさかの聖天学院と修学旅行がかち合う――……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ