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空は花を見つける~貴方が私の運命~  作者: 小畑 こぱん
―巡るひととせが繋ぐもの―
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Episode277-2 第三者から見る竹野原 祥子とは


 麗花の問いにそう答えた彼女は次いで、正面にいる同期へと顔を向けた。


「だから頼まれたら一つのことに集中しちゃう私と違って、色々なことを同時に頼まれても順序立てて丁寧にやってる祥子ちゃんのこと、すごいなって思ってるの。私には絶対に真似できないことだから。……祥子ちゃんの話聞いて思ったんだけど、多分、頑張り過ぎなんじゃないかなって思うよ。心愛ちゃんを比較対象にしちゃ色々な意味でダメだけど、でも心愛ちゃんの次に色々やってるのって、祥子ちゃんなんだよ?」

「え……?」

「気付いてなかった? 優先順位つけて作業しているからちゃんと締め切りまでには間に合っているし、間に合っているから遅いって言わないし。それに祥子ちゃんのミスって大体誤字脱字くらいで、私のミスなんてよく見ないと分からないし、すぐに気が付かない変なミスばっ…………気、気を付けてはいるんです!」

「ミスに小さいも大きいもありませんわよ」

「はい……」


 隣と斜め前から刺さる視線に気付いて再び取り繕うも、今回ばかりは麗花も注意した。


 うーん、所々に散見される彼女の口の滑らせぶりはきくっちーの影響だろうか?

 しかしながら美羽ちゃんが祥子ちゃんに言ったことは私も感じていたことだったので、援護射撃する形で私も口を開く。


「麗花さんの言う通りミスはミスですが、竹野原さん。それでも貴女のミスはそれだけで全体が狂うような大きなものなど一つもありませんでしたし、たくさんの仕事を頼まれても焦らず一つずつ丁寧に終わらせていくことは、貴女の強みだと私は思います。波もなく安定して仕事をして下さる竹野原さんだからこそ、私達『花組』も貴女に頼むことが多かったのですよ」


 姫川少女は頼まずとも先にやって一を五にして返してくるので、直接となると祥子ちゃんになるのだ。

 青葉ちゃんもないことはなかったが、彼女は自分の仕事と同時に同期二人のミスチェックもしていたので、こちらが頼み辛かったという理由がある。まあそのミスチェックが恐怖政治によるものだとは、思ってもみなかったが。


「私の強み……」


 ポツリと呟く声音には、まだどこか不安が滲んでいる。


「祥子。イースターの時、私が貴女に言った言葉を覚えておりますかしら?」


 イースターと言うと、恐らく聖歌練習の時のことだろう。緊張して音程を外して注意され悪循環に陥り、私が助っ人して一時的に改善した。


「お、覚えています」

「そうですの。あの時、私は貴女に伝えましたわ。『貴女には貴女だけの魅力がある。貴女の魅力に惹かれて、だからこそ私の「妹」になってほしいと打診したのだ』と」

「……はい」


 キュ、と眉を下げる祥子ちゃん。彼女の顔は辛そうに歪んでいて、きっとまた麗花の期待に応えられなかったと自分を責めている――――けれど。

 進む道を示されても、本当にそこへ進んでも良いのかと。そんな絶賛迷子中の『妹』の手を掴むのは、一度置いて行ってもやっぱり心配して彼女の元に引き返してきた、『姉』であったのだ。


「私が貴女を『妹』に指名したのは下見の期間中、私が見る中で、貴女が一番香桜生として成長している生徒だと思ったからですわ」

「え」

「貴女、入学前の合格者オリエンテーションの時に泣いていたでしょう。ご家族と離れる寮生活が不安だと言って」

「えっ!?」


 いま飛び出た驚きの「えっ」は私である。

 祥子ちゃんがいて、それで入学前の合格者オリエンテーションの時って言うと……。


「あっ。もしかしてきくっ……菊池さんが肩をバシバシ叩いて、フォローしていたあの時の!?」

「何ですの。貴女いま思い出しましたの?」


 だって私は少し離れた場所にいたもん! それに対応したきくっちーも、祥子ちゃんがメンバーになっても何も言っていなかったし。


「それはまあ一先ず置いておいて。見掛ける度にあの時不安で泣いていた子が、香桜生としてちゃんと頑張っていると、そう思っておりましたの。それに指名する決め手となったのは、ご自分から私に話し掛けてきたことですわ」

「えっ、あのたった一回ですか?」


 思わずと言ったように声を上げた祥子ちゃんだが私も麗花と似たようなものなので、それがどれほどすごいことなのかがよく分かる。

 国内でその家名を轟かせる超高位家格のご令嬢且つ、入学試験どころか一年単位の成績も常にトップ。球技大会では毎年活躍の中心となるし(私も中心になってはいる)、しかも西洋人形の如しハッキリとした顔立ちの小顔美少女(私は薄幸系)。プラス【香桜華会】のメンバー。


 同級生でも半年くらいは悪目立ちのアレだったのに下級生ともなれば、そりゃ話し掛ける敷居は高すぎるなんてもんじゃないだろう。


「麗花さんに何て話し掛けたんですか?」

「……えっと、忘れ物を届けに行って、それで」

「正確には私のではなく、葵のですわ」

「菊池さんの?」


 頷き、その時のことを話す麗花。


「特別教室への移動で、丁度葵のクラスの後に使用するのが祥子のクラスだったそうですの。偶然にも机の中にあった忘れ物に葵の名前が記入されていて、届けに来ておりましたわ。そして憧れの葵に緊張して話し掛ける勇気が出ずにいたところを偶然そこに私が通り掛かって、そこで話し掛けられましたの。『私から直接お渡しする勇気が出ないので、お手数お掛けしますが、先輩の忘れ物をお願いさせて頂いてもよろしいでしょうか!』という感じで」

「普通逆じゃないですか?」

「でしょう? だから私もびっくりしましたわ。葵の方が私よりも話し掛けやすいと思いますのに、私に言ってくるのですもの。まあ後ほど、緊張する対象は人それぞれだとは思いましたけど」


 ん? と言うことは……。


「竹野原さんって、元々菊池会長のファンだったんですか?」



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