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空は花を見つける~貴方が私の運命~  作者: 小畑 こぱん
―巡るひととせが繋ぐもの―
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Episode271-2 適性会議と少女無双伝


「どうして心愛ちゃんが花蓮に異常に懐いてんのかはその話聞いてよく分かったけど、でもクラスの子から特別扱いされてんのはここ(香桜)でも一緒なんだろ? それって本人はどう思ってんだろうな」

「あっ」


 きくっちーが眉を潜めて言ったことを聞いて私もハッとする。


「そうだよね。姫川さん、クラスの掃除させてもらえてないんだよね? それを楽って思っちゃう人もいるんだろうけど、でも姫川さんはそんなことを思うような子じゃないし」

「うん。会室の開錠の件の裏にそんな事情があったのもアタシ、初めて知ったよ。毎日一番に来れるって、どんな努力してんだって思ってたけど」


 桃ちゃんときくっちーが口々にそう言う中で、彼女の直接の『姉』である私は内心反省していた。

 姫川少女の私に対する普段のあれこれが強烈過ぎるし、その上すごく優秀だから、彼女なら大丈夫だと思っていた節がある。



『たった一年だけでも、こうして出会って知り合ったという、貴女と結ぶ一期一会いちごいちえの繋がりを大切にしたいわ。それに期間が限定されているからこそ、より大切に時を過ごせるでしょう?』



 ……ああ、雲雀お姉様からの教わりが活かされていないじゃないか。一体何をやっているんだ私は。


 麗花が見ていることにすら気づかない私は俯いて落ち込んでいたが、ふぅと軽く息を溢すのを聞いて、自然とそちらへ顔を向ける。


「私の話はこれで終わったわけではなくてよ、三人とも。この話にはまだ続きがありますの」

「続き?」

「ええ。もちろん私も同じように思いましたわよ。ですから彼女にお聞きしましたの。クラスの子の貴女に対する、今の現状をどう受け止めているのかと。……姫川さんの真骨頂は、ここからですわ」



 ――以下、再び麗花曰く当時の原文ママ。



『そのことなら心配はご無用です! 私がちゃんと言っても聞いてくれないのなら、そのままでいいです』

『……よろしいんですの? 理想を抱かれて接せられるのは、嫌だったのでなくて?』

『そうなんですけど、仕方がないかなって。伊達にずっと理想を抱かれてビクビクしていた訳ではないんです。――――ビクビクしていたのと同時に、イラッともしていましたから』


 少女は彼女の『姉』を彷彿とさせるような、深い微笑みをその可愛らしい顔に浮かべて。


『よく考えてみれば、これも一つの武器なのだと思います。彼女たちがそうしてくれることで私は優先的にやりたいことがやれていますし、私がやりたいことをやっている中で青葉ちゃんや祥子ちゃん、美羽ちゃんにも刺激になっているように感じます。実際に青葉ちゃんは小さなミスも見逃さないように、よく確認するようになりました。それは巡り巡ってかれ……いえ、【香桜華会】の業務が円滑に回っていく仕組みになっていくのだと思います。だから麗花お姉様』


 そして少女は答えを紡ぐ。



『クラスの子の私への態度は、私にとって悪いものではありません。彼女たちの好きなようにすればいいのです。暴走しないよう、私が手綱を引いていればいいのですから』




 ――麗花が続きを話した後、暫くは誰も口を開けなかった。

 私も先程した反省が吹っ飛んでいき、顔色を悪くさせることしかできない。時計の針が刻む音しか聞こえてこない部屋の中で、ようやっと発されたのは。


「つっよ! こっわ! てかまた花蓮お姉様のためって言い掛けてたじゃん!」


 というきくっちーの声だった。そしてそのまま首がグリンッとこちらを向く。


「花蓮お前っ、よくあの子を自分の『妹』に指名したな!? ヤバいって! アタシら抜けたらあの子主導の恐怖政治になるって! ダメだ、心愛ちゃん会長にするの却下!!」

「そ、そんなこと言われてもっ」


 だってあの時はまだ知らなかったんです! ポッポお姉様と種類は違うけど、姫川少女がまさかの影の実力者タイプだったなんて!


「ですが、姫川さん以上に会長職をこなせられそうな子がおりまして? 撫子の話を聞く限りだと木戸さんは難しいと思いますし」

「うーん……。次期会長だよって伝えた瞬間、青葉ちゃん悲鳴上げそうな気がする。ダメな意味で」

「美羽ちゃんは!? 美羽ちゃんはどうなのきくっちー!」

「美羽なぁ……。あの子一直線なところがあって、それに集中するとあんま周りが見えてないことがあるから、向かないと思うんだよなぁ。だから数字に強いし、会計が適任とはアタシも思ってるんだけど。ていうか『風組』、基本的に皆真面目じゃん? 大人しいというか、何というか。まあアタシらとお姉様たちが個性的過ぎたってのは否めないけど」


 そう。『風組』は基本的に皆大人しく、いい子なのである。

 あの中で個性が目に見えて分かりやすく浮き彫りになっていたのは、私へと凄まじい慕い方をしている姫川少女だけだった。



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