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空は花を見つける~貴方が私の運命~  作者: 小畑 こぱん
―巡るひととせが繋ぐもの―
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Episode267-2 きくっちーの進捗と不吉な数字


 あまり根掘り葉掘り聞くのもよろしくないが私と麗花は彼女のお嬢様口調及び、所作の先生である。もとい恋の協力者。

 私に関しては一年生の頃に追い掛け回され、余分に悪目立ちさせられた分も加味して、聞き出しても良い権利がある筈である。


 と言うことできくっちーが話した内容から辿って女の子らしさに羞恥を覚える彼女が、土門少年に色恋といった部分で何かを仕掛けることは恐らく無いに等しいだろう。

 やるとすれば上から毒舌ナルシー師匠しかおらず、小学生時代の彼がやりそうなことを想像して、カマをかけてみることに。


「たこ焼き食べたんだよね?」

「え、うん」

「美味しかった? 二人で半分ずつ分けっことか」

「味はまあそれなりだったし、普通に一パックずつ買ったけど」

「口についたソース指で拭ってもらって、ぺロッてされた?」


 瞬間、きくっちーの頭がボンッと爆発した。

 マジか。やったのかナルシー師匠。


「まあっ! そんな公序良俗に反する、みだらなことを……っ!?」


 隣からそんな声が聞こえたので振り向けば、何と麗花も顔を赤くして悶えていた。

 え、そこまで?とも思うが、よく考えれば風紀取り締まりマンであったお兄様に憧れているような様子なので、そんな反応になるのも頷けてしまった。こんな感じでは多分彼女の男女交際における許容範囲は、お手てを繋ぐところまでだろう。


「み、みだらとか言うなっ! あ、アタシが初めてアイツに女扱いされた、お、思い出だぞ!」

「思いっ……か、花蓮はどうですの!?」

「え?」

「貴女も好きな殿方がいらっしゃるでしょう! 一緒にいた時はどうでしたの!?」

「あっ! そうだアタシもそれ聞きたかった! 自分のことでいっぱいだったから忘れてたけど花蓮、想い合っている好きな人がいるって言っていたもんな!」


 きくっちーがそう言った瞬間、麗花の目がカッと見開かれた。


「お、想い合っている? ……花蓮! 私は貴女に好きな殿方がいるということしか聞いておりませんわよ!? どういうことですの!? 既にお付き合い済みですの!!?」


 待て! 何がどうなって私の話に変わった!?

 荒ぶる麗花をどーどーと鎮めながらもその勢いに押されて、思わず現状が口を突いて出た。


「き、気持ちはお互い確認済みだけど、お付き合いはして、ない、です」

「なん、…………そういうことですのね」

「え? なに、どういうこと?」


 何でと言い掛け、途中で点と点が線で繋がったような顔をして落ち着きを見せる麗花へと、きくっちーが疑問の声を上げる。

 相手に聞くばかりだとフェアじゃないので、私も話せる範囲で話すことにした。


「きくっちー。私が香桜を受験したのはね、まぁ……色々あって。あっちこっち複雑だから簡単には説明できないんだけど、取り敢えず他の家から私が狙われないための措置なの。小学校でいつも一緒にいて、私のことを助けてくれていた人がその好きな人なんだけど、その人に関わる人から狙われたみたいなことがあったのね。だから結果的にお互い離れるしかなくて。でもそのままずっとお別れってことじゃなくて、ちゃんと再会の約束をしてお別れしたの。次に会うのは三年後、高校生になった時にって。だから今はその人からの連絡が来るのを、待っている状態なんだ」


 永遠にさようならということではないと言ったにも関わらず、重い空気になってしまった中できくっちーがボソリと呟く。


「そっか……。療養がてらの受験じゃなかったんだな……」

「どこから聞いたのか見当つくから突っ込まないけど、というかもしそうなら普通一人で放り込まないと思わない? 何かあったら大変じゃん」

「外見と外面そとづらが一致したイメージでの推測ですわね。まあ内面が令嬢詐欺ですから、近しい人ほど騙されていることにすぐ気が付きますけれど」

「何で私が悪いみたいな感じで言われてるの? ひどくない? …………ん?」


 新幹線の中なのでマナーは守ってマナーモードにしている携帯が、その時服の内側で振動していることに気づいた。

 メッセージアプリだとすぐ終わるのだが、気づいて今なお止まらないので電話の方かと察し、一応誰からかと確認して――――げっ、と思わず顔が歪む。



『着信 鬼』



 私が鬼と呼び、そう登録しているのはヤツしかいないのである。

 確認した時に丁度着信コールが切れて画面に表示されたものを見て、更にうげっとなった私の心情を誰か理解してほしい。



『不在着信 9件』



 女三人集まればかしましい。


 話に夢中になりすぎて気が付かなかった私は、不吉な数字が表示されているその現実をどうするべきかと、内心で流れる滂沱ぼうだの冷や汗とともに携帯画面を凝視するしかなかった。



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