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空は花を見つける~貴方が私の運命~  作者: 小畑 こぱん
―巡るひととせが繋ぐもの―
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Episode261-2 攻略対象者側の選択理由


「四人?」

「俺らの学年っつーか、聖天学院で高等部に進学する際に頭一つ抜けた家格は、緋凰・春日井・白鴎・秋苑寺の四家くらいしかねぇ。女子なら一人いたが、ソイツも今はいない。今まで女子はソイツ一人で何とか落ち着かせていたような感じだったが、中等部に入ってそういった学内での派閥が落ち着かなくなった。そりゃ頭に据えている人間の印象が互いに違うんだから、ドンパチするわな。で、そんな女子の現状を見て俺らは思った訳だ。俺ら四人揃って銀霜に進んだら、紅霧の方の男子は、女子と似たような感じになるんじゃねぇかってな」


 いなくなった女子というのは麗花のことで違いない。彼女はいつもファヴォリという特権階級者の責任を強く心に抱いていた。

 そして麗花一人がいなくなっただけでそんな状態になっていると聞いて、彼女に掛かっていた負担はどれ程のものだったのだろうかと、女子の同位家格である私の胸に罪悪感が沸く。


「だから中でも影響力の強い俺ら四家は二対二で、進路先を別れることにした。俺と夕紀が紅霧学院、白鴎と秋苑寺が銀霜学院っていう風にな。紅霧はただ運動科目の授業量が増えるだけで勉学なんざ、立場を自覚してりゃ独学でどうとでもなる。俺はスポーツ関連で賞も獲ってるし、夕紀も水泳してっからそうなった。……俺らもファヴォリだ。聖天学院に在籍している特別枠の人間には、そのブランドとプライドを正しく守る義務がある。――――その特別枠を抜けてまで内部改革に勤しんでいた、百合宮先輩のように」

「――!」


 緋凰は目を閉じたまま、フッと笑った。


「だからあの人には敵わねぇんだ。迷う素振りも見せずに先を見据えて、率先して学院の未来のために取り組む姿勢。俺も周りから天才だの何だのと言われるが、見ているモンが違ぇとつくづく思い知らされる。そんな先輩が銀霜学院に通いながらも、もう一校をも気に掛けて意見交換会なんてモンも作ったんだ。それを俺らの代で壊すわけにはいかねぇだろ。これからも根付かせていかなきゃなんねぇ意識だ。ファヴォリと内部生なら俺らの監視下に置ける。外部生との問題なんざ、詰まらねぇプライドのためになんかで起こさせねぇよ」


 お兄様が中等部から始めたこと。常々仰っておられた。『まだまだ掘り下げて、僕が大学に進んでも根付く意識でないと困る』と。

 それがちゃんと根付き始めている。後輩たちの意識に芽生えがある。――お兄様の想いが届いている。


「なに笑ってんだ」


 その言葉に緋凰へ向くと、彼はいつの間にやら目を開けてこちらを見ていた。


「ふふっ。いえ、さすが奏多お兄様だなぁと思いまして」


 本当にお兄様はすごい。どうして急に学院の内部改革をし始めたのかは分からないけれど、それでも結局は学院の……ひいては、そこに在籍する生徒へとこうして良い影響を齎しているのだ。

 お兄様の努力が認められたようで、それを聞くことができて、私もとても嬉しくなった。


 あ、でもそうなるとゲームではどうしてだったのかは分からないな。お兄様絡んでるから絶対に同じ理由じゃないだろうし。

 と、そんな風にゲームと現実との差異を考えていた私だったが。


「呑気に笑ってるお前に先に言っといてやる。明日の特訓メニューはいつもの二倍だからな」

「えっ。何でですか!?」

「今日予定外に摂ったカロリー分だ。オムライスの九百二十四カロリー」

「な、いつの間にそんな正確な…………あっ!」


 最後にメニュー表をチラッと確認してたやつ!

 あれカロリーチェックだったの!? 何て抜け目のない奴だ!


「じゃあ緋凰さまだってそうじゃないですか!」

「俺は帰ってトレーニングすっから問題ねぇんだよ。お前は今日一日休息だからな。明日せいぜい頑張るこった」


 普段の特訓でさえひいこら言っているのに!? それを二倍!?

 ……あんまりだ! こんなの騙し打ちの何者でもない! やっぱり遊びという名の扱きだった!!


「最初にそんなこと言ってくれなかったじゃないですか! ひどい! 鬼! このド畜生!!」

「最初に徹底的にするって言っただろうが鳥頭! 何のためにウチで食事メニューも管理してると思ってんだ、ああ!?」


 か弱い乙女に向かってメンチ切るな! オーラ駄々洩れの顔面凶器め、もう一度サングラスかけとけ!!


 こうして私はたっくん家から緋凰家への帰り道、緋凰への文句と明日追加される特訓メニューと修学旅行先を思って憂鬱になりながら、帰宅後すぐにベッドへと沈むのだった。



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