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空は花を見つける~貴方が私の運命~  作者: 小畑 こぱん
―巡るひととせが繋ぐもの―
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Episode260-2 行動の意味と学校側の思惑


「いま言ったのはただの推測だ。真に受けんな」

「そんなことを言われましても、もうそうとしか思えなくなりました。最悪です」

「有明に会いてぇ奴がいんのにか」


 頭の中身が一瞬にして空っぽになった。キリストさまへの報復を巡らせていた思考が秒で吹き飛ばされた。

 壊れたブリキのように首を緋凰へ巡らせると、前を向いたままだった緋凰が表情も変えずに僅かに首を傾けて、こちらへ視線を合わせてくる。


「アレだろ? 小学の時にお前が無視(シカト)されまくって、夕紀ン家のウッドテラスでギャーギャー言ってた時の奴だろ」

「なっ、何でですかっ!?」

「太刀川って名前に聞き覚えがあって思い出した。それにあの時の状況とさっき話していた時のお前の態度で、お前がソイツのことどう思ってんのかとかフツーに解んぞ。で拓也の言い方からして、向こうもそういうことだろ? こんな宇宙人を好きとか、奇特な奴もいたもんだぜ」

「……!!」


 誤魔化すとか最早そういう思考にも至らない。

 春日井の時は即バレも覚悟してお悩み相談しに行ったけど、まさか緋凰にも予想外な形で私に好きな人がいることがバレるとは思わなかった……! って、待て。そう言えば!


「あ、あの。えっとですね緋凰さま。その、私の名前のこと、なんですが」


 恐る恐る言うと片眉を上げて、まるでたったいま思い出したという風に、ああと。


「名は体を表してねぇあの名前な」

「今日稼いだ分のプラスキュンポイントは、たったいまゼロ値になりました。……元々この特訓のご協力にお伺いした時、素性を明かそうとは考えていたんです。紅霧学院に合格して通うようになりましたら隠すも何もないですし、遅かれ早かれです。高校卒業してからという最初のお約束は反故となってしまいますが、下の名前ももう知ってしまわれましたし、いま名字をお伝えすることも…」

「いい」


 最後まで言わせてもらえることなく拒否の言葉で遮られ、思わず口を閉ざす。

 緋凰は顔を前に戻して、目を瞑った。


「合格したらその時に言え。俺はあの時から自分で調べることも辞めた。……夕紀ン家のプールで知り合ってから八年だ。もうこだわりゃしねぇよ。どこの家の令嬢か知っても、もう俺の中じゃお前は“猫宮 亀子”になってんだ。名乗られたところでお前くらい中身がぶっ飛んでりゃ、今更素性知ったところで俺のお前への態度ももう変わんねぇよ」


 そう言った後、緋凰は特に私からの返答は求めていなかったのか、黙ったままシートに身体を預けている。……そういうところなんだよなぁ。

 私も緋凰から首を正面に戻して、一切揺れが感じられない車体のシートに凭れる。


 通り過ぎていく、見慣れた郊外の住宅地。私達のような国内でも有名な高位家格の人間だったら、何かしらの目的がない限りは寄りつきもしないだろう場所。

 緋凰が最初に挙げた三ヵ所……内二つの施設は私達クラスもよくとまではいかないが、訪れる場所だ。


 彼は私が提示した場所については、耳にした時点では何も言わなかった。実際に訪れても、出された食事を見ても偏見など何一つ口にせず、彼が感じたことを素直に言っていたと思う。



『つーか会ってもねぇのにソイツの印象を人から聞いて決めつけんの、俺らみたいな人間からしたら命取りになんぞ』


『上流階級っつーのは表面上の付き合いばっかで、本音での付き合いなんかあんまねぇと思っている』



 それは人だけではない。彼はちゃんと自分の目で見て耳で聞いて、それを判断しているのだと。これは緋凰の家庭環境に基づいて、彼が学んだことだったのだろうか?


 緋凰はその点では、何となくお兄様と環境が似ている。物理的な距離は異なるが傍に両親がいなくて、自分の考えのみで決めて行動することが。

 けれどまだ緋凰には春日井がいたから、そう歪まずにいられたのではないだろうか? いや、お兄様が歪んでいたと言いたい訳ではないが。


 そうするとどうして緋凰があんなに春日井大好きっ子なのかも頷ける。本音で向き合える、傍にいるたった一人の人間だったから。

 そんな緋凰が好きになった女の子なのだから、きっと素敵な子なのだろう。麗花の件を抜きにしても、力になってあげたいなと思う。


 けれど……ふと、乙女ゲーの内容が頭を過った。



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