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空は花を見つける~貴方が私の運命~  作者: 小畑 こぱん
―巡るひととせが繋ぐもの―
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Episode258-2 二年と半年振りのたっくん


「拓也……だったか? お前、どこの中学?」

「あっ! すみません、柚子島 拓也です。えっと、有明学園中学高等学校に通っています」

「ふぅん……。そこの生徒会にも所属しているくらいなら、学業成績も優秀だな。今年受験すんだろ? どこ受けんだ」

「え?」


 たっくんがどこかを受験するという断定の口調にポカンとする。

 何で断定なの? え、たっくん高校受験するの!?


 訳が分からずたっくんと緋凰へと顔を交互に向けると、そんな私に緋凰が呆れた様子でその理由を言う。


「ちったぁ部屋の様子見ろや。机の上とかどっかの学校の過去問集ばっか並んでるし、指もペンだこだらけだろ。必死に勉強に取り組んでなきゃ、ンな状態になるかよ」


 指摘されて見ると、確かにその指にはマメの跡がついているし、お泊りした時には見掛けなかった参考書ばかりが机のブックスタンドに並べられていた。

 緋凰の観察眼の鋭さに私が驚くと同時に、たっくんも肯定するように頷いている。


「うん、緋凰……えっと」

「同学年だろ。コイツの友人なら呼び捨てで良い。振り回されてる同士みてぇなモンだからな」


 いつ私がお前を振り回したんだ。私がお前に振り回されているのは分かるけども。


 如何に緋凰家が数多の家とは比較するにも及ばない高位家格だとは言え、たっくんの身近には私や麗花、瑠璃ちゃんに裏エースくんという面子がいる。

 それに彼自身、聖天学院生と匹敵する家格の生徒ばかりがいる学園の生徒なので、最初の時よりかは緋凰の存在に慣れてきたようだった。


「じゃあ、緋凰くんて呼びますね。受験の件は本当にその通りで。聖天学院に通っている緋凰くんに向かって言うのも何だか気恥ずかしいけど、僕、銀霜学院を第一志望にしていて」

「えっ!? 銀霜学院!!?」


 瑠璃ちゃんばかりでなく、たっくんも……!?

 私の驚きようにたっくんも少しびっくりしている。


「うん。花蓮ちゃんのお兄さんが通っていたところ」

「どうして銀霜学い……あっ!」


 振り返るとサングラス越しに緋凰と目が合った。しまった、麗花の時はお口チャックしたのに!

 けれど私の名前に突っ込んで言うことなく、緋凰はそのままたっくんの受験先の話を促した。


「受かる見込みはあんのか?」

「先生からはA判定を受けているので。でもやっぱり国内随一の進学校だから、そこの過去問だけじゃなくて色んな学校の過去問を解いて、力をつけた方がいいかなって思ったんです」


 たっくんの健気な発言を聞いて、緋凰が感心したように頷いている。


「殊勝な考えだな。……お前本当にコイツの友人か? 付き纏われてるだけじゃねぇ?」

「貴方はこの一日で一体どれだけのマイナスを積み上げるつもりなんでしょうか」

「あはは……。花蓮ちゃんとはちゃんとした友達なので、大丈夫ですよ。僕の方こそ花蓮ちゃんが女の子だけじゃなくて、高位家格の男の子とも仲が良かったんだって知って、ちょっと戸惑ってます……」

「「別に仲良しじゃありません/別に仲良くはねぇ」」


 台詞が被って睨み合う私達にたっくんが苦笑を溢した。


「卒業前に花蓮ちゃんには話したと思うけど、経営について学びたいんだ。有明の生徒も跡継ぎの子が結構いて、そういう子たちの間でも内部進学じゃなくて聖天の銀霜を目指すっていうのは、よく耳にしてる」

「へぇ……。そうなんですね」

「うん。花蓮ちゃんは? 高校はお家の近くのところって前に言っていたけど」

「コイツは紅霧学院志望だ」

「…………え?」

「共通認識だな」


 時が一時止まったたっくんの反応を見て、緋凰が頷きながら失礼なことを言う。


「紅霧って、スポーツ重きのところじゃ……? えっ、どっちかと言うと花蓮ちゃん、銀霜学院じゃないの!? 何で紅霧学い…………花蓮ちゃん。僕、無理しない方が良いと思うよ」


 途中でハッとしたのは恐らく裏エースくんのことが過ったからで、彼と同じ高校だから受験するのだと思ったらしいたっくんが宥めるように言ってくるのに、否やと首を振る。


「無理ではありません。ここにいる個人戦では賞総ナメの天才児から猛特訓を受けている最中で、日々紅霧学院合格への道を歩んでおりますので。そして私が目指しているのは、陸上部門の実技試験。陸上は個人、己との戦いと言っても過言ではありません。個人戦では最強な緋凰さまからの指導を一身に受けている私ならば、きっと届く筈です! いえ、届かせます!!」

「個人戦って一々つける必要ねぇだろ。何か悪意感じんぞ。まあ同じ学校だったんなら、コイツの足が速ぇのは知ってるだろ? 受かる見込みが唯一そこだけだかんな。どおぉーーーーしてもって頭下げてくっから、こっちは仕方なく面倒見てやってんだぜ?」


 本当のことなので反論はできず黙って頷く私を見て、たっくんは何故か冷や汗を一筋流していた。



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