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空は花を見つける~貴方が私の運命~  作者: 小畑 こぱん
―巡るひととせが繋ぐもの―
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Episode256-3 朝食の席でのお誘い


 ファヴォリ? ファヴォリでしっかりしていて? 責任感も強くて? 笑った顔がとにかく可愛くて?

 傷ついても強く見せようと踏ん張ろうとする健気なところがあって? 紅茶が好きで? 利害による婚約もキッパリと断れるくらいの気概がある?? それ、え。待って。待って?


 同学年のファヴォリ………………麗花しかいなくない???


「あの。本当にその方、いま海外留学中なのですか……?」

「アイツの友人がそう言っていたし、本人とそれ関連の会話もしたけどちゃんと通じたぞ」


 恐る恐る聞いてもそんな答えを返されて、余計にこんがらがってしまう。

 大きく違っているのは海外留学というそこだけ。いや、紅茶に関しては私が好きなだけで麗花も頻度的にはよく飲んでいるけど、彼女にとっては特に好物という訳じゃないしな……。それに麗花からは緋凰のことも、婚約の話があったことも何も聞いていない。いやあってもさすがに言わないか。


 去年の夏。緋凰はお相手の方に号泣されたと言っていた。そしてホテルのトイレまで来てくれたあの時の麗花は、確かに泣いた後みたいな顔をしていて。


「…………」


 私が緋凰に敢えてお相手が誰かと聞かないのは、あれでも緋凰に余計な疑念を持たせたくないからだ。私がお相手の方に何かするとか、余所に話を漏らす可能性とか、そういう感じで。

 そしてそこまで私が踏み込んでこないからこそ、緋凰も私相手に相談しようと思ったのだろう。


 まだ判らない。麗花っぽいけど麗花とは本当に別人の、中身が似ているだけの人物だという可能性は、彼女と一致していない項目がある以上捨てきれない。うん、強く気を持つのだ私!!


「はい。まぁ何となく、お相手の方に近い思考で考えられると思います。お話して下さりありがとうございました」

「そうか。じゃあ場所は…」

「あ。すみません、そのことに関してちょっとご相談があります」

「……何だ」


 遮られたことでムスッとした顔をされるも、これは私と緋凰にとってとても大事なことなので許したまえ。


「ホテルレストランも玲隴美術館も、葦舘臨海公園も問題ないと思います。ですがそれはお相手と行かれる場合のお話で、私といま行っては不都合が生じる可能性があるかと」

「不都合だと?」

「今は夏休みです。人が、特に学生が一番出歩く時期と言っても過言ではないでしょう。そんな中で特に上流階級……それも聖天学院生がよく行きそうなところに二人で行ったとして、オーラがあり過ぎな緋凰さまなんて変装していてもすぐにバレます。そうなった場合、常に男子の壁に守られているプリンセスが、滅多に会話もしない筈の女子と二人で出掛けていたと知られれば、有りもしない推測が即座に駆け巡ることは必至です」


 有りもしない推測の中身がどういった内容であるか、緋凰も思い至ったらしい。驚愕の面持ちで私を見つめている。

 そうだ。それは一緒に出歩いていた私にとっても不都合極まりない、すこぶる迷惑な内容なのだ。


「ですから緋凰さま。シミュレーションならば、学院生が行きそうもない場所で行わなければなりません」

「当てはあるのか」

「……そうですね。私達が二人で行っても何ら問題ない場所……」


 アート系施設はほぼ難しいだろう。見晴らしの良い景色で有名なところなんて、それこそ人がいそうだしな。やっぱり隠れ家的な、ちょっとしたお食事処くらいが妥当…………あ!


 ピンと閃き、それと同時に気分も高揚し始める。


 今年は受験勉強と、この実技試験対策のために連絡を取っていない。中学三年生ということで向こうも察して下さっていることだろうが、顔を見せれば元気に過ごしていると証明できるし、それと同時にお店の売り上げにも貢献できる。

 ……何て素晴らしい一石二鳥! それに事情をお話すれば、そう問題もないほどの関係を私とあの人たちは築けているのだ。さすが私、天才だ!


「緋凰さま、この私を褒めるがよろしいです」

「は?」

「ふっふっふ……、ホーホッホッホ!!」

「やべぇ。人選間違えたかもしんねぇ」


 こうして私の夏休みの貴重なトレーニング外休日は、緋凰の特訓のお供をするために消費されることとなったのである。



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