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空は花を見つける~貴方が私の運命~  作者: 小畑 こぱん
―巡るひととせが繋ぐもの―
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Episode256-2 朝食の席でのお誘い


「もう少し詳しい説明を求めます」

「はぁ……」

「溜息吐かないでもらえますか。早速悪い部分出てますよ」

「……二人で外に出る。現実的なシチュエーションじゃなきゃ意味ねぇからな。家は無しだ。取り敢えず前回の別れ方がちょっとアレだったから、多分向こうの方が俺に対して気まずい筈なんだ。だからまずは俺が婚約の件は気にしてないって態度を相手に示さなきゃなんねぇ。その上で今後ともお前とは…………まずは頼れる友人として交流を続けていきたいと告げて、ようやく俺はスタートラインに立てると思っている」

「なるほど」

「それで、だ。そもそもその最初の交流が上手くいかなかったら話になんねぇだろ。アイツは他の女子連中とは違うが、亀子も他の女子連中とは変わってるからな。それならどっちかっつーと、お前が判断したことなら俺も多少は受け入れられる気がする。だから俺のシミュレーション……に、付き合ってほしい」


 思わずサングラスの内側で瞠目した。

 あの強引俺様が、それも(亀子)にお願いする姿勢を見せてきたのだ。これには驚かざるを得ないだろう。


 緋凰に好きな人がいることが発覚してからはちょいちょい彼のコミュニケーションについて口を挟んではいて、春日井からも確かに話には聞いていたが、こうやって目の当たりにすると自分の意思でちゃんと変わろうとしているのだなと、はっきりとそう思えた。


「分かりました、お引き受けしましょう。私も貴方にはこの度のコーチングでお世話になっておりますし」

「そうか! 恩に着る」

「え。あ、はい」


 嬉しそうな様子でお礼まで言われて、思わず抜けた返事になった。そしてすぐにハッとして思い直す。

 ……ダメだぞ、私! 緋凰が良い方向に変わろうとしているんだから、今までの態度と比較して一々気にしていたら緋凰に失礼だ。ちゃんとしなければ!


「それで緋凰さま。今日のお出掛けはどちらのご予定で?」

「場所はいくつか考えている。落ち着いて話せるホテルレストランか、中庭に噴水のある玲隴れいろう美術館、あとは春の盛りに行くと景色が素晴らしいと評されている、葦舘あしだて臨海りんかい公園くらい……何だ」

「え? 何ですか?」

「何だはこっちだ。グラサンしててもお前が意外って思ってんの、雰囲気で分かんぞ」


 待って。確かに思ったけど、そんな雰囲気を出した覚えは私にはないです。


「いえその、てっきりもっと何か映画館とかレジャー施設とか、デートっぽい場所を指定されるのかと思ったので」

「それは段階が進んでからだ。いいか、さっきも言ったが最初が肝心なんだ。どうあってもそこで失敗はできねぇ。幸いにして、互いの虫除けのためにされた婚約の提案だとあっちは認識してっから、俺がそ、そういう好意を抱いていると悟られないようにして立ち回れば、警戒も持たせず自然と次の交流に持っていけるだろ。話をするに最適且つ、誘っても不自然じゃない場所を選択するのは当たり前だろうが」

「正論過ぎてぐうの音も出ない」


 いやだって冬にあんなお花畑して悪の親玉笑いしてた奴が、こんなまともにものを考えているとか思うもんか。突拍子のないことを言い出さないか少し警戒してたんだぞ。――けど。


「そこまで深く考えていらっしゃるほど、本当にその方のことがお好きなんですね」


 途端、顔が真っ赤に染まった緋凰にふふっと笑う。


「そういう異性に誘われても不安を抱かせない且つ、ご自分の印象を良くする場所選択、良いと思います。あと緋凰さま。シミュレーションと仰るのなら、私もお相手の方に近い思考で貴方の言動を図れればと思いますので、貴方から見たお相手の方のことをお伺いしても構いませんか?」

「……そう、だな。分かった」


 そうして語られたのは以前に聞いたことにプラスして――――何やら引っ掛かる内容を告げられた。


「待って下さい。いま何と仰いました?」

「あ? だからサロンで一緒になっても、全然視線も合わねぇような感じだったって」


 サロンは学院生の中でも特権階級のファヴォリしか入室は不可となっている、特別室の筈である。


「その方、ファヴォリなんですか?」

「ファヴォリだが」

「……同学年の方、ですよね?」

「そうだが」

「…………?」


 私の頭の中は今こんがらがっている。



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