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Episode247-2 受験対策における家族の反応


 ――緋凰がコーチを引き受けてくれることになったそのまた翌日、話は早い方が良いと私は受験先及び、その対策を両親に伝えた。

 お父様には一ヵ月も余所のお宅、しかも同学年男子の家ということでめっちゃ渋面を作られて反対の声を上げられたが、お母様は私の味方になってくれた。


 お母様には何度もスイミングスクールの時のことを話していたし、お互いがどういう関係性かを知ってくれている。それに緋凰家にも住み込みのお手伝いさんがいるし、完全な女子一人ではないのだ。

 あとここで初めて知ったことだが、お母様は緋凰夫人とも仲良しだったようで。



『中学は香桜女学院と私達が決めたことだけど、高校は花蓮ちゃんが行きたいところでってお話したものね。紅霧学院は通うに申し分ない学校だし、花蓮ちゃんの体育の成績を考えたら陽翔くんが同意して手助けしてくれるのなんて、願ってもないことじゃない。貴方もスポーツ関係の陽翔くんの活躍ぶりは、よくご存じでしょう?』

『だ、だが咲子』

『あら貴方。私の初等部時代からの友人である、樹里ちゃんの息子さんよ? 何を心配する必要があるのかしら? それに反対するのであれば、そもそもスイミングスクールの時に口出ししているわよ。雅さまがご不在の時にも夕紀くんと陽翔くんに教えて貰っていたのだから、それの延長じゃないの。……花蓮ちゃん。どうしても紅霧学院に行きたいのでしょう?』

『はい!』

『なら、頑張って取り組みなさいな。貴方、後で少しお話ししましょう?』


 そんな話をお母様の友人の存在を理由にして、お父様を説得してくれた。

 その時は絶対に賛成を得る!と頭の中いっぱいだったから引っ掛かることはなかったけれど、後からそのことを思い出すと親同士……いや、母親同士が繋がり過ぎていると頬が引き攣ってしまった。


 いやまあ確かに我が家クラスの家格となると同等家格はそうそういないけれど、でも薔之院夫人と春日井夫人は嫁入りしたって話だし、やっぱり世間というものは親世代から狭いものなんだなと感じたのだ。

 一旦は自室に下がって沙汰を待っていた私のところへお母様が訪れてくれて、無事に緋凰家への夏合宿の許可は下り、その際に。


『太刀川くんも紅霧学院なの?』


 突如として問われた質問内容に、目を白黒とさせてお母様を凝視してしまった私のその反応を見て、ふふっと楽しそうに笑ってお母様は退室されて行った。

 私の好きな人がどこの誰だと何故バレているのかと、その場で私が焦りと羞恥に悶えることになったのは言うまでもない。


 許可が下りたので改めて緋凰によろしくお願いしますと連絡をし、一応お兄様にも受験先と夏休み事情を報告しておこうと思って部屋に訪れれば鈴ちゃんも中にいたので、二人に同時報告したら何故かお兄様はショックを受けたような顔となり、逆に何故か鈴ちゃんは嬉しそうな顔を見せた。


『紅霧……? え? 銀霜じゃなくて?』

『お姉さま、聖天学院にお通いになられるんですか? そうなったら鈴、とっても嬉しいです!』

『何で? 紅霧学院はスポーツに重きを置いているところだと知っているだろう? 花蓮。お前はちゃんと自分の運動能力を理解して、それを踏まえた上で言っているの?』

『だったらせっかくお姉さまと一緒に過ごせる夏休みでも、我慢します。ふふふ。聖天学院だったら香桜と違って、お姉さまに会いに行けます!』

『僕の見通しが甘かったか。まさか花蓮が運動音痴のくせに紅霧の方を選ぶだなんて……』



 片方からは辛辣、片方からは喜びの、そんな両極端な言葉を受けた私の心境たるや。


 鈴ちゃんは場所は異なるが、同じ付属の学院だったら会いに行けると喜んでくれているのは嬉しい。

 しかしお兄様の頭には端から他の高校に私が行くというお考えはなかったようで、何故か銀霜学院一択で受験するものと思われていたのを、こちらに関しては頬を引き攣らせるしかなく。


 一応お兄様には麗花も紅霧学院を受けるのだと話した上で、まだ将来のことが決められない私が唯一やりたいこととして彼女の傍にいて守りたいのだと説明すれば、お兄様は目を瞠った。



『……ハァ。分かった。まぁもう父さんも母さんも説得済みなら、僕が口出ししても仕方がない。受験には可能な限り僕も協力するよ。こうなると紅霧学院の方も手を付けておいて良かったな』



 ――元々いた学校から出て、そこへ舞い戻る。


 それを内部生がどういう目で見るかは分からないが、中には小六の時に麗花を嵌めようとしたように、良からぬ感情を抱く人間が出てこないとも限らない。

 私が聖天学院に在籍していないことで、四家の御曹司と家格同列で並んでいる女子は麗花だけとなっている。内部生女子にすればその存在は悪い意味で考えると、目の上のたんこぶだろう。


 お兄様は麗花を守るために初等部の卒業式で、薔之院家の人間の隣に座す形で参加した。そんな風に行動してくれたお兄様なので私の受験動機を聞いて、すぐに納得して引いてくれた。



『――まさか互いに同じ理由で、学校の受験を決めるなんてね』



 鈴ちゃんと手を繋いで退室する時にそうお兄様が呟いていたことは、ドアを閉めた音と重なって私の耳には届いてこなかった。



 そしてそんな無事に許可が下りた夏合宿ではあるが、お母様に宥められてもお父様が隠れてプンプンするので、緋凰家に泊まり込みで合宿するにあたり一つ条件が付いてしまい。

 それに関してどう()()()対応するか、現在私は絶賛お悩み中でもあったりする。



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