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Episode246-2 陽翔の聞きたいこと


「一応会話も上々だったようですし、だったらどこでポカしたんですか? まさか照れ隠しでバカとかアホとか鳥頭とか言ってないでしょうね」

「お前以外に言うかンなこと」

「私にも言わないという選択肢ありますよ」


 そこで緋凰の眉間にグッと深い渓谷ができた。


「……母さんが婚約を結んだらどうかって提案した。結果、号泣された」


 たっぷり十秒は思考が止まったと思う。


「…………はい?」

「母さんが婚約したらどうかっつったら泣かれた」

「はああああぁぁぁ!!??」


 あまりの衝撃に思わず立ち上がって叫んだら、「うるせっ」と文句を言われたがおいちょっと待て!!

 婚約!? どういうこと!? と言うか!!


「緋凰さま! まさか告白する以前に、家の権力を使ってお相手の方を囲い込もうとされたんですか!? 話を聞く限りじゃ碌にその方と交流もしていないのに!? そりゃ碌に親しくもない、学院でもトップカーストでお断りできそうにない家からの婚約の打診とか、絶対その子にとって急なことだし混乱したし、驚いて泣くに決まってますでしょう!!」


 フラれた訳じゃないとか言ってるから確実に感激の涙ではなく、マイナス感情な方の涙であることは明白だ。普通の世間話を交わしていた程度の時に好きでもない相手の母親から急にそんなことを言われたら、私だってびっくりする。

 大きな声でドキッパリと言うと、それに関しては本人も思うところがあったようだが、勢いのない反論をぶつけてきた。


「お、俺だってそういうの、どうかとは思ったんだよ。けど俺ばっかがずっとアイツのこと見てて、あっちはちっともこっち見てねぇし。それにこれから近づいて行こうって時に海外行くし。話した限りだと高校はこっちに戻ってくるらしいが、どこに行くかは分からねぇ。例え一方通行の関係でも繋がりがないよりかはマシだと思ったんだよ。婚約者なら別に……理由とかなく会いに行っても、問題ねぇだろ」

「緋凰さま……」


 頬を赤く染めてそっぽ向きながら健気なことを言っているが、現実それを拒否されている訳だから何とも言えない。

 顔を赤くしていても断られているんだぞ。これが恋をすると現実が見えなくなるお花畑マジックか。


「でも婚約お断りされたんですよね?」

「婚約の打診をなかったことにされただけで、好きだとか告白した訳じゃねぇから、俺自身は断られてない」

「俺様どんだけ。メンタル鋼ですか」

「アイツ断る時、自分が俺に相応しくねぇからって言ってた」

「傷つけない方法で遠回しにお断りされてますよね、それ」

「外見とか家格とか、そういうので判断するヤツじゃねぇ。俺のことを知らねぇから、そういう風に言うしかなかったんだろ。打診理由が理由だけに受けると思ったが、後から思えば気持ちがねぇのに、ンな中途半端なことをするヤツじゃなかった」


 ……何だか私の言葉に反応しているようで、していないような。自分にブツブツと言い聞かせてもいるようでいて、何だか怖い。

 立ち上がっていた私の身体も感情に引き摺られて、思わずソファに戻る。


「亀子」

「え。はい」


 ブツブツが止まったと思ったら名前を呼ばれた。

 怖い。こっち見てない。


「そうだよな。家がどうのじゃなく、俺自身がちゃんとアイツにぶつかっていかなきゃダメだよな」

「……まぁ、その方がいいですよね……?」

「だよな。幸いにして夕紀とお前の助言を参考にコミュニケーション力を磨くために、俺はソイツと仲の良い友人とよく会話をするようになった。こっちに戻ってくるんなら絶対に連絡は取り合う筈だ。……これからだ。これから仲を深め、今度こそ気持ちが入った婚約を結べばいいんじゃねぇか……!」


 やっぱり私に話しているようでいて、話していない。自己暗示をかけている。怖い。

 だって私、こうした方が良いよとかアドバイスしてない。それなのにどんどん自分の中で解決していっている。

 うわ、肩を揺らしてクックックとか笑い始めた。笑い方がまんま悪の親玉で引く。


 これ以上何か言ったら更にヤバくなる気がしたので、私はダンマリを決め込み放置することにした。その間悪の親玉笑いをBGMに、現実逃避という名の考え事をする。


 ……相手の子が海外にいるってことは、やっぱり麗花じゃないな。それに強引俺様属性なだけあって諦めずグイグイ行こうとしているし、好きな人の尻を追い掛けるのなら緋凰が紅霧学院に進学しても、麗花のライバル令嬢フラグが立つことはないだろう。

 それに婚約していないから空子と出会っても、麗花が彼らに苦言を呈す動機理由もない。と言うことは、後は春日井の問題さえどうにか解決すれば……。


 緋凰ルートは恐らく潰れ、私が紅霧学院に合格するための下準備も何とか整った。高校の三年間さえ無事に過ごせば、後はもう大丈夫。麗花も。私も。


「…………」


 紅霧学院と言っていた。

 麗花を傍で守るために決めたけれど、それと同じくらい一緒にまた同じ場所で学校生活を送りたい。


 ――――だから私も頑張るよ、太刀川くん



 考え事(現実逃避)をしながらもいつの間にかポワポワ花を飛ばし始めた私と、ずっと悪の親玉笑いをしている緋凰。

 現在進行形で恋をしている頭お花畑二人組は暫くの間、傍から見ればドン引きの空気を生産し続けていたのであった。



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