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空は花を見つける~貴方が私の運命~  作者: 小畑 こぱん
私立清泉小学校編―1年生の1年間―
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Episode24-1 催会の終了とミッションのこと

『君が僕にとってどういう存在か、やっと気づいた。今まで守ってあげられなくて、ごめんね。こんなに待たせてしまって――ごめん』

『夕紀、くん……っ!』

『これからはずっと君だけを、空子だけを見つめ続ける。頼むから他の男を頼らないでくれ。空子を守るのは、これからはずっと僕の役目だ』





 これはシナリオが最終局面に入った頃、春日井の好感度を最高に近い数値まで上げることに成功していれば見ることが叶う、トゥルーエンドの場面。


 卒業間近の最終イベントである交流パーティにて、空子は麗花に呼び出されて屋上まで行くが、足を踏み入れた瞬間に何者かの手によって扉の鍵が閉められてしまい閉じ込められる。

 冬の寒い夜にドレス姿で外に出された空子はあまりの寒さに眠ってしまい、あわや凍死するかの状態にまで陥ってしまうが、その危機に駆け付けたのは――春日井 夕紀。


 春日井は空子を抱き抱えすぐさま病院へ行き、そして先程の言葉を目覚めた空子に贈るのだ。

 ちなみにこのトゥルーエンドの流れは緋凰・春日井両方の好感度を上げていた場合に起こるシナリオで、どちらが駆けつけてくるまで誰のエンドか分からない仕様となっている。


 加え空子を閉じ込めた犯人も誰のエンドかで変わってくるのだが、緋凰の場合は麗花本人。

 春日井の場合は麗花の主要取り巻きの女子となり、しかしそれは後日判明することで断罪時には麗花が犯人とされ、卒業間近で退学処分とされるのである。


 ……ちょっと待って。

 ゲームでの麗花は緋凰一筋であって、春日井に近寄る空子に絡んでいたのは主に麗花の取り巻き達であるのに、最後に麗花が春日井エンドで断罪されるのっておかしくない!?


 これゲームしていた時も太陽編では結構思っていた事なんだけどさー、一体運営の人達は麗花のこと何だと思って「百合宮さん?」


「えっ?」


 ハッとしてもの思いから帰還すれば、不思議そうな表情をした春日井と裏エースくんが私を見つめていた。


 やばっ! 一人でどっか飛んでってた!


「大丈夫? もしかしてどこか痛む? ティーカップが足に当たったりした?」

「え、いえっ。大丈夫です、少しボーッとしていただけなので! すみません」


 春日井から心当たりのない心配を向けられて否定すれば、ホッと安堵の吐息が吐き出される。


「そっか、良かった。じゃあお手洗いに行こう。早く流さないと」


 そう言って一旦離されていた手を再度繋ごうと、春日井が手を取ろうとした時だった。


「――花蓮、夕紀くん」


 少し離れたところから聞こえた呼び掛けに振り向くと、お兄様がこちらへと歩いて来ていた。


「お兄様!」


 お兄様を目に映した瞬間私はパッと走り寄り、そのままの勢いでその胸へと飛び込む。

 ギュッと抱きついておでこをグリグリと擦りつければ、フワッと変わらぬ優しいお日さまの香りがした。

 

 ……やっぱりお兄様の腕の中は安心する~。


「花蓮? どうかした?」

「……何でもありませんっ」


 パッと胸元から顔を上げて、今度はパーティに来た時と同じように腕へと抱きつく。


「お兄様はどうしてこちらへ? 迎えに来てくださったのですか?」

「そうだよ。挨拶するのに随分時間が掛かってたね? ……あれ、スカート濡れてない?」

「あの、それは…」

「これは私の不注意でテーブルのカップに当たって、倒しちゃったんです。その中身がちょっと掛かってしまって」


 スカートの惨事に気づいたお兄様へと、春日井が何事か告げようとしたのを被せて誤魔化す。

 えっ、と表情に出す春日井に向けて私はにっこりと微笑んだ。


 正直なのはいいことだけど、この場は穏便に済ませよう?

 これでお兄様が出ていったら、家名名乗らなかった私の我慢が水の泡になっちゃうし。


 一応意図を察してくれたようで頷いてくれたが、しかしどこかその表情は不満げだった。


「うーん。今から流しても多分これ薄くはできるかもしれないけど、もう完全には落ちないな。これで食事に行くのもちょっとアレだし、仕切り直してもらおうか」

「でも、わざわざ春日井さまのお父様までお忙しい中いらしているのに」

「あ、父のことなら心配しなくてもいいよ。予定も無理に空けたわけじゃないから」


 私の心配は春日井によって一蹴される。


 えー、でも本当に大丈夫?

 春日井のこと疑うわけじゃないけど、心象良くないだろうなー。


「……わかりました。あ、太刀川くん!」


 立ち上がっていた彼に声を掛け、近くに駆け寄る。


「本当にありがとうございました。また、明日学校でお話ししてくださいね?」

「お、おう。じゃ、俺はこれで。奏多さん失礼します!」


 裏エースくんはお兄様に向かってバッと一礼すると、タッと会場へと戻って行った。

 ことごとく体育会系のノリだなぁ。

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