表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空は花を見つける~貴方が私の運命~  作者: 小畑 こぱん
私立清泉小学校編―高学年の2年間―
426/641

Episode197-1 お互いに一人じゃないから


 鈴ちゃんやらかし騒動があって後日談。


 普段は淑女をしている百合宮家の長女(本当は次女)が男子を相手に圧倒していた姿は、噂に聞くあの生ける伝説である百合の貴公子先輩を彷彿とさせたらしく、同学年では元々一定数のファンがいたのが更に増えたそう。

 ちなみに足払いされて足蹴にされたという男子に関しては、


「百合宮さまにこんな一面があったなんて……!」


 と何故か彼も更に熱狂的なファン化したと聞く。

 鈴ちゃんがすっごく嫌そうな顔で教えてくれた。


 何はともあれ鈴ちゃんも蒼ちゃんも、今後の学院生活は穏やかに過ごしてほしいものである。





◇+◇+◇+◇+◇+◇+





「……あっ、あった」


 貼り出されている番号一覧から手元に掴んでいる番号札の数字を見つけ出した私は、そんな気抜けた声を上げた。

 手元を覗き込んでその数字を確認したお母様もふわりと笑って、顔を合わせてくる。


「おめでとう、花蓮ちゃん。これで春から香桜女学院生ね」

「……はい」


 喜んでいいのか、どうなのか。

 複雑な気持ちのまま悲喜交々(ひきこもごも)としている女学院の敷地内で、しっかりとその番号を見つめた。




 そこの地域一帯は一月初旬から願書の受付で、私立香桜女学院の入試日は二月一日だった。

 当日に合否発表の私立中学も多い中で、この学校は翌日の発表。このことから学校を二日休み、一日は試験に。一日は合否確認に費やしたという訳である。

 ちなみに午前入試と午後入試があるが、私は午前入試で受けた。


 そして私立有明学園中学校も同じ日程。

 合否発表を経てその翌日、学校に登校してすぐに教室でたっくんとお互いに結果を報告し合った。


「私は受かりました。拓也くんはどうでしたか?」

「僕も受かってた! 分かっているけど、もっと勉強頑張らなくちゃ」

「そうですね。それに全寮制ですから、環境にも早めに慣れませんと」


 明るい様子だったので聞く前から何となく結果は把握できたが、実際に本人の口から合格したと聞くと自分の時は複雑だったのにたっくんには嬉しいという気持ちになる。そしてそうすると、もう一つのことも把握できた。

 たっくんが明るく報告するということは、裏エースくんも……。


 実際にお昼休憩時にいつものようにやって来た彼からも、同様の報告を受けた。


「春から寮生か。あー、拓也と同じ部屋だったらいいけどなー」

「どうだろう? そうなったら嬉しいけど、でも確率は半々くらいかなって思う」

「個人じゃなくて複数人部屋なんですか?」


 聞くと、たっくんが頷く。


「うん。一、二年生は八人部屋で、三年生から個室なんだって」

「やっぱ受験のことがあるからだろうな。内部進学でも試験はあるんだろうから」


 香桜も有明も、中高一貫校。けど私は高校に関しては家から通えるところをと決めているし、裏エースくんも聖天学院のどちらか……今のところは紅霧学院としていて、内部進学の考えはない。

 それを思えばたっくんは私達との関係もそうだけど、自分のために有明を受験した。高校はどうするんだろうか?


「有明に受かったばかりでお聞きするのもアレなんですけど、拓也くんは高校のこと、内部進学するか考えてます?」

「んー、そうだなぁ。まだ将来のこととかどうするか分からないけど、一応経営に関することは学んでいきたいとは考えているから。大学のことまで考えたら高校も、そこを受けるのに有利な学校があったら内部進学せずに、また受験するかもしれないし」

「お父様の書店を継ぐための経営ですか?」

「うん。個人経営で一人息子だし。本は昔から好きだし、できればお父さんの代で終わらせたくないって思ってるんだ」


 そっか。それに経営であれば書店だけでなくカフェの方にも通じているので、見据えれば良い選択だと思う。

 ちゃんと考えているんだなぁ……。私は目の前のことで精一杯だ。


「花蓮ちゃんは? 香桜も複数人部屋?」

「はい。香桜は四人部屋ですけど。けどそれも条件があって、何か三年生じゃなくても個室じゃないですけど、二人部屋を使用できる特別制度みたいなのがあるそうです」

「へえ。何か女子校って、男子校より色々制度とかありそうだよな」

「それは偏見というものですよ、太刀川くん。まぁ寮生活に関しては後日の合格者オリエンテーションで説明されるので、そこで詳細が分かります」

「ちゃんと聞いておけよ。また他のこと考えて説明聞き逃すなよ」

「またって言わないで下さい!」


 裏エースくんから再三の注意を受けてプンとするも、「大丈夫かな。知らない子ばかりで、教えてくれる子ちゃんといるかな?」とボソッとした声が前から聞こえた。たっくん……!!


 そうして二人と一緒にお互いの中学のことや他の関係ない話をしたり、持ち上がり組の相田さんや木下さん、男子たちとも残り少ない日数を楽しく過ごしていく中で――……





「え」

「あら、ごきげんよう」



 ……――よく見知った顔が香桜女学院合格者オリエンテーションの説明会場にいるのを、見つけてしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ