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空は花を見つける~貴方が私の運命~  作者: 小畑 こぱん
私立清泉小学校編―高学年の2年間―
416/641

Episode190-2 攻略対象者の属性は


 白鴎に近づく女子を排除していた。

 それが何度も続けば、身近にいて動機も充分にある自身の婚約者に疑いを持つのは自明の理。――――けれど、花蓮の場合は。



『淑女であれ。百合宮の、令嬢の鑑であることを求められる私と、白鴎家の跡取りという服を着せられた詩月さま。同じで、お似合いでしょう?』


『今は肩書だけの繋がりですけれど、いつかきっと、あの方も私を見つけて下さいます。あの方が私を見つけるまで、白鴎家に相応しい令嬢として在らねば』



 秋苑寺ルートのシークレットムービーでそう語られた、彼女の心情。秋苑寺は花蓮の“それ”を歪んでいると感じていた。

 確かにそれは恋と言うよりは、執着に近い感情だ。同族意識とでも言うのか。

 執着しているからこそ近づく女子を排除した? 『見つけて下さいます』と、()()()()()()()()()()を求めているような発言をしているのに?

 それなのにわざわざ彼の周りから選択肢を消して、それで『見つけてくれた』という、矛盾した状態を作り出す? よく分からない。



『――早く、嫉妬という感情を芽生えさせ、堕ちてしまえばいい』



 嫉妬、していたんだろうか? そう願うということは、その時点で秋苑寺の目から見て、白鴎に近づこうとする女子に花蓮は嫉妬していなかったと考えられる。うーん、よく分からない。


 思えば同じライバル令嬢である花蓮と麗花も、その在り方は対照的だ。

 片や影から人を唆して排除しようとする。片や正々堂々と真正面から対峙する。それだけではない。


 麗花は家同士の婚約で結ばれた緋凰がヒロインと近づくのを、自らが動いて止めようとした。それは他の生徒という衆目があっても。

 花蓮は同じく家同士の婚約で結ばれた白鴎がヒロインと近づくのを、自らは動かず人を唆して止めようとした。そこに誰かの目なんて在りはしない。


「あれ……?」


 何か、引っ掛かる。

 誰かの目はなかった。彼女の行いを知っているのは指示を受けた人間と、指示した花蓮自――……。


「…………どうして? 私、()()()()()花蓮が指示をしたって認識してる、よね?」


 何だか少し、頭が痛くなってきた気がする。何だか少し、心臓もドクドクし始めてきた、気がする。

 どうして。どうして去年裏エースくんが姫川少女と友達女子に呼び出されていた、あの時――



『“百合宮 花蓮”が口にした言葉を周囲にいる人間が聞いて、彼女の意に沿おうと勝手に行動する』


 と、思った?


『まるで自分の未来を見ているようだ』


 と、どうしてそう思った? “勝手に行動”なんて、どうしてそんな言葉が出てくる?

 勝手にじゃない。だってそれをお願いしたのは、“私”の筈で――……。




「――お嬢さま? 花蓮お嬢さま?」

「え、あ。北見さんっ?」


 思考を打ち破るように突如として耳に聞こえた声に振り向くと、住み込みお手伝いさんの一人である北見さんが室内にいた。

 思わず素頓狂な声が出て、どうして私の部屋にと考えるもすぐに彼女から答えが返ってくる。


「何度かノックとお声を掛けさせて頂いておりましたが、お部屋にいらっしゃるのにお返事がなかったものですから。何か異変でもあったのかと……」

「あ、す、すみません。ちょっと、考え事をしていたので、聞こえていませんでした。……それは?」


 しどろもどろに説明する中で視線を遣ると、彼女の手には電話の子機があった。


「お嬢さま宛てに、同級生の太刀川さまよりお電話を頂いております」

「太刀川くんから? あの、出ます。ありがとうございます」


 子機を受け取り、北見さんが退室するのを確認して一度深呼吸し、そうして通話ボタンを押して耳に当てる。


「……もしもし、太刀川くん?」

『よ。どう? 元気?』


 学校では毎日どこかで会っているから、長期休暇に入るとこの声を聞くのも久しぶりに感じる。

 あっけらかんとした彼の声に、いつの間にか固くなっていた身体から力が抜けていった。


「元気ですよ。それでどうしたんですか? 何かご用事でも?」

『いや、特にないけど』

「ん? え、特に用事ないのに電話してきたんですか?」

『もしかして忙しかったか?』

「いえ、お部屋でのんびりしていました」

『暇じゃん』


 そりゃ暇は暇だけど、考えることは結構沢山あるんだぞ。

 というか用事ないのにこうして電話してくるとか、やっぱり裏エースくんは構ってもらわないと寂しくて死んじゃうウサギ属性だな。……声、聞けて嬉しいけど。


 何か話題をと思ったら、やっぱり浮かぶのは直近にあるお楽しみイベントのことで。


「拓也くんとのラブラブお泊り勉強合宿、あともう少しですね」

『そうだな。あ、そうだ。花蓮は体育以外に苦手な教科ってあるか? 有明と香桜の偏差値はどっこいどっこいだから、範囲的に似たような問題試験に出ると思うけど』

「体育は試験に関係ありません。苦手……一応、英語はそうですね」

『英語? あー……、そうだよな。お前たまに発音がひらがなになる時あるもんな』


 五年生から履修し出した英語。時たまシャラップとか言っていたりするが実のところ、前世優等生の私が唯一苦手としていた教科だ。

 情勢はグローバルな昨今、英語は人生の必須科目と言っても過言ではない。特に上流階級にとっては。

 しかしまだ小学生で履修するような内容ではつまずかない。問題は高等教育に入ってからだ。


「そう言う貴方に苦手科目は」

『特にないな』

「ですよね」


 同じクラスだった時も毎回テストは私と同じ満点だったし、現在でもテスト結果をひけらかさない彼に代わって相田さんが、「また太刀川くん満点だって。どういう勉強の仕方してんだろー」と言っていたのでお察しである。出来過ぎ大魔王が出来過ぎすぎる件。


 そうして他愛もないことを会話し続け、また、と再会の文言を口にして終える頃には、すっかり気持ちがほわほわとしていた。


「えへへ。好きの力ってすごい! モヤモヤしてたのが何か一気に飛んでっちゃったよ」


 心が温かい。用事がなくても電話をして声を聞きたい程、私という存在を気にしてくれている。


 ほわほわしたまま、ベッドにごろーんと転がる。


 恋をしているって実感する。

 何気ない他愛のない話でも、大好きな人とすると幸せな時間になる。そう思えることが、どれだけ貴重なことなのか。


「――……あ」



『こうして、変わらず同じ時間を過ごしたい。好きなヤツとずっと一緒にいたいのは、当たり前だろ?』



 似たことを思ったからか、ふわっと思い出したその台詞。そう、ヒロインを愛おしそうに見つめて、()は告げた。

 呪縛から解き放たれて結ばれた場面は本当に、幸せな光景で。



 ――――爽やかなのに影のある、好青年属性。



 白鴎(硬派)緋凰(強引)秋苑寺(チャラ男)春日井(王子様)

 花蓮(陰の支配)麗花(表の対峙)


 【空は花を見つける~貴方が私の運命~】では、互いに対を為す正反対の存在がいる。それは月編の隠し攻略対象者である、尼海堂(一匹狼)にも。


 太陽編の隠し攻略対象者。

 ()の立場は、紅霧学院の生徒会会長。



 月編と違って明るいイベントが多い太陽編唯一の――――闇ルート。


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