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空は花を見つける~貴方が私の運命~  作者: 小畑 こぱん
私立清泉小学校編―高学年の2年間―
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Episode189-2 夕紀の提案と親友女子組の絆


「……分かりました。瑠璃ちゃんに渡しておきます」

「うん」


 差し出されていた走り書きのメモを受け取り、思案する。


 これを渡したとしても瑠璃ちゃんから連絡を取らなければ、春日井とのこれ以上の交流はなくなるけれど…………ああもう!

 乙女ゲーのことさえ絡まなければ私もどうこう言わないのに! 何で攻略対象者なんだ春日井!!



『あーもう高位家格の令息って、本当に面倒くさいよ。色々考えることが多過ぎて嫌になるよね』



 修学旅行前に彼が零した内容を思い出す。

 結局あの時のことは解決したのかどうなのか不明だが、そう日が経っていないので緋凰のことを含め、まだ悩みはあるのかもしれない。


 瑠璃ちゃんは癒し系女子。もしかして、瑠璃ちゃんの癒しオーラに引き寄せられたのか?

 約束すると言われてしまったし、六年の間で春日井がどういう人間かは私も知っている。傷つけないと言った、彼の言葉を信用することにした。


「それじゃ、今日のところは失礼するよ」

「もうですか?」

「取り敢えず目下の問題は解決したみたいだし」


 指し示される方を見ると――通り汗が復活している!!


「……うん、すごいね。ちょっとアドバイスをするにも色々考えなければいけないから、まずは文献とかそういう方面で片っ端から調べてみることにするよ」

「あ、はい。分かりました」


 異常ではなくあれが通常なのだと理解はしているようだが、果たして文献(そこ)に正解はあるのか。あ、お父様が大量のバスタオルを抱えて瑠璃ちゃんに向かって行っている。

 春日井は三人にも帰宅の旨を告げてからトレーニングルームを出て行った。一応見送りに行こうとしたが断られたので、その場での別れとなる。

 米河原姉弟がランニングをしているのをブルブルしながら見ている中、今度はお父様がこちらにやって来た。


「花蓮、確認なのだが」

「何ですか?」


 見上げた顔は、何やら難しそうに眉根を寄せている。


「春日井家のご子息とはかなり親しそうだが、密かにお付k」

「ないです。有り得ないです。今すぐそのお考えを頭の中から消去して下さい」

「う、うむ」


 男子とちょっと距離が近かったらすぐそういう考えになるの、本当やめてくれ。


「――――瑠璃子!」

「え?」


 突如聞こえてきた焦りの滲んだ声に振り向くと、何故か麗花がトレーニングルームの扉を開けた状態で立っていた。……ニアミスうぅぅぅ!!


「れ、麗花!? どしたの!?」

「かれ……あら。ごきげんよう、おじさま」

「こんにちは、麗花ちゃん」


 付き合いの長い麗花はお父様を見ても驚くことなく普通に挨拶を交わし、こちらに来ながらも視線は彼女を見てハタと固まっている瑠璃ちゃんへと向けられている。


「大丈夫と言ってはおりましたけど、明らかに大丈夫じゃない声でしたもの。瑠璃子のことが心配で……あら? 汗、かいておりますわね?」

「あ、うん。それは何とか」

「麗花ちゃんっ」


 慌ててこちらに来た瑠璃ちゃんが麗花と向き合う。


「あのねっ、私、ちゃんともう大丈夫だから! 私は私で頑張るわ! だから麗花ちゃんも自分のやりたいこと、頑張ってほしいの! 心配してお家にまで来てくれて、ありがとう」


 最後にとても嬉しそうに笑ったその顔を見て、麗花はホッとしたように息を吐いた。


「分かりましたわ。遠慮して本音を隠すなんて、今度はなしですわよ? ……親友なんですから」

「――うん!」


 二人の様子から、本当に瑠璃ちゃんは彼女が抱えていたストレスから解放されたようだった。

 再度ランニングマシンへ戻る彼女と蒼ちゃんを見守りに戻っていくお父様を見てから、麗花に話し掛ける。


「ね。来る途中、誰かとすれ違ったりしなかった?」

「いいえ? ……そう言えば、他にも誰かいらしたのではなくて? 場を外されておりますの?」

「ううん、もう帰宅したよ」

「そうですの」


 特に不審には思われず、聞き返されたりはしなかった。


 ……あっぶな! タイミングがすれすれ過ぎて本当に危なかった!! やらかすところだった!!

 ただでさえおみくじでやらかしているのに、私が原因で太陽編をこれ以上危うくさせる訳にはいかないのである!!!




 そして安心した麗花が帰宅して本日の訓練終了後、瑠璃ちゃんに春日井の件を告げた上でどうするのかを聞くと。


「ありがたいお話だけど……、どうしよう」

「お断りする?」

「ううん。わざわざご提案下さったのに、お断りするのもどうかと思うの。一度だけ、お願いさせて頂こうと思うわ」


 無碍に断る選択をしない彼女にこれは仕方がないかと諦める……と。


「あのね、花蓮ちゃん。春日井さまには麗花ちゃんのこと、言わないようにしようと思うの」

「え?」

「同じ学院生だけど麗花ちゃん、今まで話に出してきたことなかったでしょう? 話さないのはそう親しくないからで、それなのに麗花ちゃんのことを話題にするの、相手も困るだろうから。花蓮ちゃんはそういうの、どう思う?」

「瑠璃ちゃんの意見に賛成!! 私も麗花のこと、春日井さまに話してないよ!」


 思わぬ発言に即座に飛び付き満面の笑みを浮かべる私と、同じ意見だった瑠璃ちゃんは互いに笑い合った。

 やっぱり私達は超絶仲良し女子組です!!


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