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空は花を見つける~貴方が私の運命~  作者: 小畑 こぱん
私立清泉小学校編―高学年の2年間―
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Episode157-2 同盟による告白計画


 師匠はチッチッチッと指を振った。


「これだから百合宮嬢は! 太刀川 新、君なら僕の言いたいことが分かるのではないかい?」


 聞かれた裏エースくんは微妙そうな顔をしているものの、頷く。


「気持ちが判ってるからできることだけどな。入賞したら祝いと一緒に告ればいいし、そうじゃなくても好きなヤツが応援して見に来てくれて告白されたら、相手はやっぱ嬉しいんじゃないか?」

「さすがこの僕と双璧を為すイケてるメンズだね!」

「まぁ私は香織ちゃん応援したいし、あの子が下坂くん好きなのも知っているから反対しないけどさ。あー複雑だなぁ。何か、娘をお嫁に出す気分だよ」

「相田さん、私達まだ小学生ですよ。そんな気分になるの、早過ぎますよ」


 ぺしょーと項垂れる彼女の背中を撫ぜれば、体育座りで膝小僧に頬をつけた相田さんが私を振り向いて見つめてくる。


「こんな時、柚子島くん大人だなぁって思う。仲良しの百合宮さんと太刀川くんが、本当にそんな関係になっちゃって。こっちは送り出し仲間だよ」

「「ブッ」」


 同時に咽る私と裏エースくん。

 予想外のところから火の粉が降って来た!


「僕も常々柚子島くんは大人だと思っているとも!」

「ねー」


 やめて!

 何か知らないけど悪くないけど私が悪かったからやめて下さい!


「あー! 今は俺らの話じゃなくて、下坂と木下の話だろうが! で!? 結局下坂はコンクール会場に行って木下に告るでいいのか!?」

「木下嬢へ贈る花を添えるのも忘れてはならないのだよ!」

「バレンタインなんだからどうせならさ、逆チョコも用意したらいいんじゃない? 香織ちゃんチョコも好きだし。案外女子って男子から貰うのもアリなんだよね」

「なぁ。それバレンタインとホワイトデーの意味あるか?」


 裏エースくんの純粋な疑問に、「いいじゃん。お菓子交換って感じで」と飄々と相田さんが返す中で私といえば、ホワイトデーの単語にピクリとする。


 ホワイトデー。バレンタインに女性から貰ったお返しを男性がする日。

 今までのことを振り返ってみれば、確かに私達友チョコ組はその日には、仲良し男子組から毎年あめ玉のお返しを頂いていた(その中にもちろん裏エースくんは含まれない)。と言うことはである。


 間近に迫る下坂・木下組に負けず劣らず、ビッグイベントを控えているこの私。これまで裏エースくんは貰い過ぎるがために、一切お返しなどは行っていない。

 そんな彼、もし私が今回チョコを渡すのであれば、三月。


 チラリと隣に視線を向ける。向けた瞬間に、察知能力に長けた出来過ぎ大魔王がこちらを見る!


「どうした?」

「うっ」


 もうどうしよう! 私がビッグイベント頑張っても、三月で絶対返り討ちに合っちゃう未来しか見えないんですけど! てかまだバレンタイン来てないのに、何でイベントどんどん来るの!


「土門師匠! 私は一体どうしたら!」

「本当に百合宮嬢は見ていて飽きないね。何のことか知らないが自分で解決したまえ」

「拒否るの早!!」


 弟子の助けの理由を聞きもしなかったナルシー師匠は、パン!と手の平を叩いた。


「では結論! 坊主くんは木下嬢のピアノコンクールへ応援に行き、花とチョコを携えて告白! 決まりだね!」

「うん。今回は香織ちゃん演奏の調子も良いし、入賞は狙えると思うんだ」

「相田さんはコンクールには参加しないんですか?」


 彼女もピアノを習っているので聞いてみたら、ふふっと笑って。


「私は今回はパス! 年々やっぱり上手い子との差が出てくるからさ。そういうの意識しちゃうと勝負!って感じで何か嫌なんだよね。私、ピアノだけは楽しくやっていきたいから」

「そうなのですね」


 相田さんは結構負けず嫌いなところがあるから、ちょっと意外。でも、そっか。

 話を聞くとボランティアにも積極的に参加しているみたいだし、姉御肌な彼女の気質としてはそっちの方が合うのだろう。


 そして無事に下坂くんの告白作戦の内容が整って、教室に戻ろうと皆立ち上がる。


「花蓮」

「はい?」


 相田さんと並んで歩こうとしたら裏エースくんに呼び止められ、チョイチョイ手招きされる。


 何だと思って戻ると、「ちょっと花蓮と話あるから」と相田さんに言い、面白そうな顔をした彼女はりょうかーいと言って一足先に帰って行った。

 ちなみにナルシー師匠はいつの間にか消えていた。……消えていた!


「えっと、どうしたんですか?」

「……バレンタインのことなんだけど」

「!」


 えっ、えっ!? なに!? 何かね!?


 何を言われるのかとドキドキしていると、どこか落ち着かない様子の彼から言われた言葉に思わず固まった。


「俺、今年はお前の以外受け取らないから」

「えっ」

「花蓮から貰わなかったら、今年一つもないから」

「えっ。え!?」


 言いながら薄ら頬を染める姿を直視して、こっちまで動揺してしまう。

 いや、普通に今年もたくさん受け取る感じだと思っていたから、まさかそんなこと言われるとは思わなかった。ていうか、ちょ、宣言された! 私の以外ということは私のだけしか……プレッシャー!!


「ううぅっ。が、頑張ります……」

「おう。よろしく」


 そうして私自身の計画に関しては渡す相手により先制攻撃をかまされてしまったため、瑠璃ちゃん先生に頼るしか道はなくなってしまったのだった。


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