表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空は花を見つける~貴方が私の運命~  作者: 小畑 こぱん
私立清泉小学校編―高学年の2年間―
324/641

Episode144-2 冬休みの計画とフルボッコな件


「拓也くん、拓也くん。何だか寒い気がするので、お手て繋いでいいですか?」

「何で聞く相手が僕なの?」

「拓也、マフラーしてないけど寒くないか? 俺の貸すか?」

「新くんまでどういうことなの? いいよ、塾近いし。終わったらお母さんも迎えに来てくれるから。マフラー貸してくれたら新くんが寒くなるでしょ。はい、花蓮ちゃんはこっち。繋ぐんだったら新くんと繋いでね」

「ええ!?」

「ショックそうな顔される意味が分からないよ、僕」


 たっくんと繋ぎたかったんだもん! だってあと一年しかないのに。

 その間に三年分たっくんを補充しておかないと、可愛いが足りなくて三年間を生き抜けなかったらどうするの!?


 それまでたっくんを真ん中にして歩いていたのに移動されて、私が真ん中になる態勢にされてしまった。ひどいたっくん私に厳し過ぎる!


「拓也が言うんなら仕方ないだろ。ほら、俺で我慢しとけ」

「うぅ。太刀川くんで我慢します……」

「ねぇおかしくない? え? 僕がおかしいの?」


 裏エースくんとはれ、れん……恋、愛の意味で大好きだけど、たっくんはお友達の意味で大好きだもの。裏エースくん側だってそうである。だって気が合うもの、私達。


 手袋越しの手繋ぎ。

 手の温度は感じないけれど、感触は伝わってくる。ニギニギして遊ぶと向こうもやり返してくる。あっ、ちょっとくすぐったい!


 そんな密やかな攻防をしながら下駄箱で靴を履き替えて校門を出ると、そこでたっくんとはお別れ。


「じゃあまた明日」

「おう。明日な」

「また明日です」


 手を振ってたっくんを見送り、私達もバス停へと向かう。

 教室で確認して出た時間だと、スクールバスが来るまであと十分くらいか。まだちょっとあるな、っ!?


「!!?」

「どうしたー?」


 くっそこのスケコマシ!

 私の反応見てニヤニヤするのやめろ! 油断した!!


「どこでこんな、さりげスケコマ技を身につけてくるんですか!?」

「変な技名つけんな。あとお前にしかしないから安心しとけ」

「べっ! 別に不安になる要素なんて、どこにもありませんけど!?」


 本当いつも急に来るから心臓に悪い!

 スケコマ及び恋愛経験値のない私、いつもフルボッコ!!


 たっくんと一緒の時は普通繋ぎだったのに、いなくなった途端のこっこいっ、恋人繋ぎとか……!

 そんなところまで出来過ぎ大魔王じゃなくても良くない!?


「あはは、耳真っ赤」

「寒いからです!」


 くっそう、今日ハーフアップにしてくるんじゃなかった!


 プンスコプンプンしながらバス停のベンチに並んで座る。こういう時に限って他の生徒誰もいないとか、どういうこと。


「……冬休みさ、本当にどこにも行かない?」


 聞かれたので、改めて考えてみる。


 うん、鈴ちゃん来年入学だし、普段からお兄様も忙しいから多分行かないだろうな。どこか行きたいところある?って、お母様からもこの段階で聞かれていないし。


 夏休みはダイエット訓練をしているけど冬休みは毎年瑠璃ちゃん温泉旅行だし、麗花はご両親のいる国へ海外旅行するし。麗花はやはり二泊三日はご両親の方が寂しがられたので、二年生からは長期間の滞在になった。

 お土産は毎年瑠璃ちゃんは温泉まんじゅう(めちゃんこ美味しい)で、国が変わればお土産も変わる麗花からはいつも趣味の良いものを頂いている。……ん? 私だって旅行に行けば、お土産買ってきてます!


「そうですね。今回はずっとお家にいます。お母様のお買い物のお伴くらいなら、出るかもしれませんが」

「だったらさ。初詣、一緒に行かないか?」

「え?」


 見ると、態度は普通な感じ。

 ということは?


「仲良しメンバー皆でですか?」

「二人でに決まってるだろ」

「えっ!?」


 決まってたの!?

 だって普通に聞いてくるから、皆でと思うじゃん!

 待って。二人? 二人っきり? で、でででデートのお誘い!?


「変な勘違いしてそうだから、はっきり言うぞ。デートだからな」


 してないよ! 合ってたよ!

 ちょ、バレンタインでもだもだ脳内で騒いでたのに、新規案件が光速でやってきたんですけど!? というか、何でそんな普通な感じで誘えるの!?


「じ、神社にお参りして帰るだけですよね! 良いです行きましょう! このまま負けっぱなしでなるものですか、見ていなさい!」

「デートなのに何で勝負事になってんだ。一応俺ん家から神社近いから、家にも来たら?」

「家!?」


 お友達意識の時は何度か皆で遊びに行ったりしたけど、一人でってなると初めて行った時以来。

 お、お家で二人きり? いや、初詣だ一月一日だ正月だ賀正だ。この日はご婦人もお仕事はお休みで、お家にいらっしゃる筈。


「わ、分かりました。羽子板でも凧揚げでもメンコでもして遊びましょう!」

「普通に部屋でくつろぐで良いんじゃないか?」

「部屋!!? くっ、福笑いでもカルタでもよろしい! ご婦人と三人で!」

「やっぱ話聞いてなかったな。家族の時間取るから、冬休みは向こうの家で過ごすことになったんだって。デートなんだから、最初から最後まで二人に決まってるだろ」


 何それ聞いてなかった!! また決まってる!!

 家で部屋に二人っきり? 待って、待って。


 しょ、小学五年生!

 そう、私達は小学五年生! 他に誰もいない部屋で二人きりになったとしても高が知れる! 高が知れ……。



 前に他に誰もいない部屋で、二人きりになった時に起こったこと。



・壁に張りつけにされて太もも撫で回される。

・押し倒して馬乗りになる(私の犯行)。

・寝転んで抱き締められて頬ずりする(頬ずりは私の犯行)。

・おでこ同士コツン、肩に頭を乗せられる。

・首を舐められる。

・ほっぺにちゅーし合う。

・口にしたかったとか言われる。



 小学五年生……!!! おい小学五年生……!!!

 状況が状況だったとは言え、破廉恥のオンパレード……!!!


 精神年齢上の筈の私もやってしまっているが、ほぼやられ放題!

 あっ、でも裏エースくんも本当に実年齢と精神年齢合ってんのかって言うくらい、大人びている時めっちゃある……!


「花蓮」


 黙りこくって脳内ゴチャゴチャしていたら、名前を呼ばれて反射的に顔を上げてしまったが最後、後の祭り。


 恋人繋ぎしている手を引かれて、少し裏エースくんの方へと上半身が近づいた私の耳の傍近くに、彼も顔を寄せてきて。



「……何か期待してんの?」



 小さく潜められたそれが、吹き込まれ。


 そっと離れた顔は爽やかさからかけ離れた、目を細めて薄く口角を上げているという、そんな表情で私を見つめていて。私は――――



「っ、何が期待ですかこのスケコマシイイィィィーーーーッ!!!」



 ――今日もフルボッコ。


 スクールバスを待つバス停のベンチの中心で、敗北を叫ぶのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ