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空は花を見つける~貴方が私の運命~  作者: 小畑 こぱん
私立清泉小学校編―高学年の2年間―
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Episode143-2 親友と妹にお受験のことをお話した結果

 今では家族仲も強固なものとなっている。私が香桜にいる間に何かの間違いで婚約の話が出たとしても、勝手に進められて纏められることはないだろう。というか話が出ても断固お断りである。


 ……裏エースくんなら別だけど。


 あっ、ダメだちょっとヤダ私、恥ずかしい!

 何考えてんの! 何考えてんの!?


「何か一人で勝手に悶え始めましたわ。こんな奇行娘を一人にするの、すごく心配ですわ」

「大丈夫よ。花蓮ちゃん、お友達すぐ作れそうだもの」

「……」


 悶えている間に何やら麗花が黙り込んで考え事をしていた。どうかした?


「麗花?」

「……何でもありませんわ。ところで、歌鈴は受験の話を知っておりますの? あの子、大分ショックを受けそうですけれど」

「お姉ちゃんっ子だものね」

「うーん」


 そうなんだよね。

 家族の中で鈴ちゃんだけ、まだ知らないんだよねぇ。


 合格確実なので最早寮生活も確定している訳だけども、絶対大泣きするのが目に見えていて、まだ誰も何も言えてないんだよねぇ。

 早めに伝えて覚悟させておかないといけないんだけれど、皆鈴ちゃんに甘々だからなー。後になるほど伝え辛くなってしまう。うぅっ。


「どうやって伝えたらショックが少ないかなって、悩んでるんだよね。ずーっと私の後を付いてくる子だから、荷物に紛れ込んでたらどうしようとか」

「花蓮じゃないから、さすがにそんなことはしないと思いますわ」

「私でもしないけど」

「こういうのはどう? 歌鈴ちゃんのもっと立派なお姉さんになるために頑張ってくる、っていうの」


 瑠璃ちゃんの提案になるほどと思う。修行して帰ってくるから待っててねってやつか。

 恋愛ドラマで専門職系の職業に就いている主人公か相手役のどっちかが最終回らへんで言って、その何年後かに帰って来て再会してハッピーエンドみたいな。ふむ。私と鈴ちゃんだとホームドラマだな。


「でもそれですと、本当に立派になっていなきゃいけませんわよ? 大丈夫ですの?」

「鈴ちゃんいま六歳。三年後って言ったら、小学三年生かぁ。言ったこと覚えてそう」

「長期休みには帰ってくることを考えたら、その度に立派になっていないといけないわね」

「えっ? 待ってそれだと……夏休み三回と冬休み三回。あれ、春休みって帰っていいの? 私めっちゃ回数分けて立派にならなきゃダメ!?」


 どうするの!?

 六回プラス春休みあるとして、加算したら九回!? バージョンアップにも限界があるよ!?


「……正直、貴女の内面のパッパラパー以外は聖天学院でも私が見る限りでは、他の女子生徒を圧倒しておりますわ。今でさえそうですのに、これ以上立派と言うと、人外的なハードルの上がり方になりますわよ」

「人外的!? えっヤダ、人間でいたい!」


 麗花からの指摘に青褪める。

 ダメだ……。私が今より立派になる案は否決だ……。


「瑠璃ちゃん。私は普通の女の子でいたいから、立派にはなれないよ……」

「ええと。うん。そうね」

「はっきり仰ってもよろしいですわよ。百合宮家の令嬢に生まれた以上、普通とはかけ離れていると」

「それを言ったら麗花もそうなるけど、いいの?」

「あら。普通ではないからこそファヴォリなのですし、私は皆さんの手本となるように心掛けておりますもの」


 麗花の責任感の強さ、プライスレス。私の反論などあっけなく封じられた。

 というか鈴ちゃんへの説明方法が本当に思いつかない。どうしよう。


「……誤魔化すんじゃなくて、本当のことを正直に言うのが優しさかもしれないわ」


 ポツリとそう告げたのは、瑠璃ちゃんで。


「花蓮ちゃんや麗花ちゃんほどじゃないけど、私もあまり催会には参加しないじゃない? 前に蒼くんに、『何でお姉ちゃんと僕は、お父さんとお母さんと一緒に行けないの?』って聞かれたの。まだ早いからって誤魔化すこともできたけど、本当のことを後から知ってしまった方が辛いと思ったの。だからちゃんと、両親と一緒にお話したわ。私が体型のことで嫌な思いをしたから、蒼くんも同じ思いをしてしまったら悲しいからって。しょんぼりして分かったって言ってくれたわ。……花蓮ちゃんと歌鈴ちゃんの場合とは、少し違うけれど」


 話を聞いた麗花も頷いた。


「そうですわね。下手にゴチャゴチャと言うよりも、シンプルに勉強するために家を出ると教えた方がよろしいと思いますわ。皆様が仰りにくい気持ちも理解できますが、甘やかし過ぎるのも歌鈴をダメにしてしまいますわよ」


 二人の話を聞いて、私はジッと考え込む。


 ウチの中で鈴ちゃんに一番厳しいのはお兄様だけど、その厳しさも豆腐の角に小指をぶつけるくらいの度合いだ。お母様の淑女教育にしても、私の時みたいに付きっきりで行ってはいない。注意をするのも普通に優しくだし。


 というか普通に鈴ちゃん良い子だから、皆が鈴ちゃんに怒る時ってないんだよねぇ。本当に出来た超絶可愛い妹だわ。私の場合は普通にやらかすので、普通にお母様とお兄様に怒られる。おい私。


「……うん。そうだね。鈴ちゃん良い子だから、ちゃんと理解して応援してくれるよね。ありがとう二人とも。私、ちゃんと鈴ちゃんに言う!」


 グッと拳を握りしめてそう宣言すれば、麗花も瑠璃ちゃんも笑って応援してくれた。


「きっと歌鈴なら大丈夫ですわ」

「蒼くんも私の話を聞いて、納得してくれたもの。歌鈴ちゃんもきっとそうよ」

「うん!」


 そう、きっと。





◇+◇+◇+◇+◇+◇+





 ――結論。


 予め他の家族三人には正直に伝える旨を話して、鈴ちゃんに伝えたところピシャアッという効果音が鳴り、それはそれは盛大に大泣きされてしまいました。

 いやいやいやいや首をブンブン振られ、私のお腹にタックルしたと思ったらへばりついて離れない。服が涙と鼻水でビショベシャになる。


 受験先を指示したのはお父様だと暴露すると、「お父さまきらい! だいっきらいいぃぃ!!」と叫ばれてお父様、床に倒れ伏す。

 お母様は「あらあら困ったわね」と頬を手で押さえるに留まり、お兄様は仕方なさそうに溜息を漏らしていた。


 そうだよね。こないだ、皆とずっと一緒に暮らすのが幸せって言ってたもんね……。



 そうして暫くの間は鈴ちゃんに子泣き爺化されて、日々を甘んじて過ごすことになった私なのであった。


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