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空は花を見つける~貴方が私の運命~  作者: 小畑 こぱん
私立清泉小学校編―高学年の2年間―
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Episode139-2 皆の進路先のこと

 私達を追うと言っているけれど、でも自分のためであるとも言った。

 何ていじらしい。何て健気。何て可愛い。


「拓也くんがっ、拓也くんが……! その可愛さで私達を倒しにかかって来ています……!!」

「特別言語のヤツは放っておこうぜ。それで拓也はどこを受験するんだ?」


 悶える私をスルーして、裏エースくんがたっくんの受験先を聞くと――何と。

 

「進学校だよ、男子校の。有明学園中学校」

「お」

「え」


 意外そうな顔をする裏エース。愕然とする私。

 私達の反応に首を傾げるたっくん。


「どうかした?」

「拓也の受験先、俺と同じだぞ」

「そうなの!?」

「どうしてええぇぇ!? 何で私だけ離れ離れなのおぉぉ!?」


 嘘でしょ!? そんなことってある!?

 何でそんなことになるの!? 私だけ見ず知らずの女子の花園行き(まだ確定ではない)とか有り得ないんですけど!? ……ハッ!


「拓也くん、女装! 女装と言う手があります! ベルをあんなに可愛く着こなし、やり遂げた拓也くんには女装なんて朝飯前の筈。私と一緒に女子の花園で中学校生活を謳歌しましょう!!」

「なに言ってるの花蓮ちゃん」

「さすがの拓也でも理解できないってよ」


 だって、だって!

 ドンドンと拳を机に叩きつけて訴える私に、半眼を向ける裏エースくん。そして私の言葉のあるところに反応したたっくんが聞いてくる。


「女子の花園って、花蓮ちゃんの受験先って女子校なの?」

「うぅっ。香桜女学院です!」

「えっ。香桜って県境にある、女子中学の中では名門の女子校だよね!? あそこ受けるの!?」

「受けろと命が下されました……」


 所作も完璧で授業態度も優等生、成績に関しては文句なし(体育以外)の実力を誇る私なので、ぶっちゃけ余裕で合格圏内。受験自体には全然焦りもしないが、皆と別れてしまう悲しみだけが私の胸を満たす……。

 へちゃりと机の上に突っ伏した頭に、ポンポンと手が乗せられ撫でてくる。


「そっか。花蓮ちゃんも自由そうに見えて、やっぱり進路先は考えられてるんだね」

「花蓮も有名な家の令嬢だからな。一応」

「一応じゃありません。立派な令嬢です。あっ、耳くすぐったいです!」

「耳ダメ? ……ふーん」

「ぎゃっ! ちょ、こしょこしょするのやめて下さい! 拓也くん太刀川くんがイジメてきます!」

「スキンシップだろー。でも拓也も成績は普通にトップクラスじゃん。俺、拓也だったら大丈夫な気するけどな。基礎だってちゃんと理解してるし」

「そうかな。でも応用になるとちょっと心配なんだ。さっきのも引っ掛かっちゃったし」

「苦手な問題を集中的にこなすか? 算数は慣れみたいなところあるしな」

「拓也くん!? 耳! ぎゃあ耳たぶ触るんじゃありません!!」


 うんうん頷いてないで助けて!

 どうしよう、たっくんが春日井並みにスルーするんですけど!


 ペチペチ腕を叩いて抵抗する間に、頭上から私達へとぬっと影が。


「やぁやぁまた飽きずにやっているのかい? 太刀川 新、君の行いは純なクラスメート達には少々刺激が強過ぎる。そろそろ百合宮嬢を解放したまえ」

「ん? あー……まぁ仕方ないか」


 いつもの如く突然現れた土門少年の指摘に教室内を見渡したらしい裏エースくんのイタズラな手が、ようやく私の耳から離れて行った。もう、もう!


「太刀川くん! イジメッ子!」

「たったこれだけでイジメとか言われてもな。もっとすごいことs「シャアラアァップ!!!」


 とんでもないことを口走ろうとした口目掛けて、手でバチンッと音が鳴る程に塞ぐ。

 何を言うつもりだ。何を言うつもりだ!


 カッカして多分真っ赤な顔の私と、悪びれもせずにそんな私を見てくる裏エースくんに、「はーやれやれ」と土門少年が溜息交じりに言った。


「これだからラブラブランデブーは。だが柚子島くん。この僕の予想では君が大変なことになる予定だったのに、案外普通だね?」


 彼を見上げたたっくんが苦笑する。


「まぁ、そんな気はしてたから」

「「え」」


 それはお口の封印を剥がされた時で、私と裏エースくんは同時に固まった。


「だから五年も一緒にいるんだから分かるよ、二人の雰囲気が違うことくらい。それに前から花蓮ちゃん、新くんに恥ずかしそうにしてる時あったし、新くんは花蓮ちゃんを優しい目して見てるし。僕は一緒にいられるんだったら、どっちでも変わらないかなって思っていたけど。二人の気持ちは二人のものだし」

「何と! 大人だね柚子島くん!」

「「…………」」


 今この時ほど恥ずかしいことはないだろう。

 何だこの居たたまれなさは。仲の良いお友達に恋愛事がバレてるってもう本当、本当羞恥心グアアアアなんですけど!


 さすがの裏エースくんでさえも目をかっぴらいて固まったままだ。そしてそんな様子の私達を見て、土門少年が。


「ほう。さすがだね、柚子島くん。人目も憚らずランデブーを撒き散らしている二人にとって、君は羞恥心最後の壁! 二人とも柚子島くんを見習って、節度あるランデブーをしたまえ!」


 何だ節度あるランデブーって。別に意識してランデブーしてないし。というか土門少年に説教されるって。

 しかしながら、そんな突っ込みも口に出せないほどの居たたまれなさに、私達は揃って。


「「……はい」」


 と言うしかないのだった。


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