Episode121-2 鈴ちゃん蒼ちゃんお友達大作戦
私も蒼ちゃんへと視線を向ける。
米河原家は、どうもその体型が遺伝するらしい。ご両親もぽっちゃりしてるし、瑠璃ちゃんもぽっちゃりだし、蒼ちゃんもぷっくりぽっちゃりしている。
私も麗花も瑠璃ちゃんと蒼ちゃんには癒しの波動を受けて、可愛い可愛い言ってるのだけど、私達と出会う前の瑠璃ちゃんはそんな自分の体型が嫌だったと言う。
容姿も中身も全部ひっくるめて瑠璃ちゃんが大好きな私達だけど、ただ容姿が好かないだけで厭う人間が多いのも、悲しいかな現実である。
ご両親の心配も分かる。姉がそうだったから、下も同じ思いをしてしまうんじゃないかって。……ん? 何てことだ! 百合宮家と米河原家の事情が酷似している!!
「瑠璃ちゃん! 来ちゃったものはしょうがないし、鈴ちゃんももうすぐ来るの! 二人はお互いがここで出会うことを知らないけど、姉である私達が最高の出会いを演出しようね!!」
「花蓮ちゃん。すぐに開き直るのはどうかと思うの。反省して次に活かさないのもどうかと思うの。最高の演出と言われても、もう何も準備できないわ」
「ごめんなさい!!」
瑠璃ちゃんにも言い聞かせられるように怒られた。
しょぼくれた私と瑠璃ちゃんが手を繋いで戻る頃には、麗花と蒼ちゃんもどういう話の流れか、あっち向いてホイをして遊んでいた。
「れいかお姉ちゃん。あっちむいてほい、よわい……」
「ダメですわ。ついつい顔が蒼佑の差す指の方へと」
「うん、何か分かる」
麗花、人の裏とかかけなさそうだもんね。
謀弱そうだもんね。
「花蓮も瑠璃子につつがなく怒られたようで、何よりですわ」
「ひどくない?」
「内緒にしてた花蓮ちゃんがひどいわ」
「ごめんなさい!!」
「お姉ちゃん、かれんお姉ちゃんにおこるのメッ!」
事情を知る由もない蒼ちゃんが私を庇ってくれる。
ありがとう蒼ちゃん、でも私が悪いの!
――ピシィッ
頭を下げて蒼ちゃんにヨシヨシ頭を撫でられていると、どこからかそんな効果音が聞こえた。気になって頭を上げて見ると、丁度西松さんに案内されて来たところだったのか、オシャレをして滅茶苦茶可愛くなっている鈴ちゃんが扉の前にいた。
「鈴ちゃん可愛いいぃぃっ!!」
最早口癖にもなっている衝動を表に出してそう叫ぶと、それがきっかけになったようでフワッと微笑んで、静々と私達の傍まで歩いてくる。そうして家のホストである麗花に向けて、綺麗に一礼。
「おまねきくださりまして、ありがとうございます。姉ともども、よろしくおねがいします」
「こちらこそ。……歌鈴ももう立派な淑女ですわね。あぁ懐かしい。私と出会った花蓮も最初はこんな感じでしたのに」
「ちゃんとよそでは継続中ですが。今でも立派な淑女ですが」
まぁそれは良いとして、さすがお母様。私の目から見ても鈴ちゃんは百合宮家のご令嬢として、その品位をしっかり身につけている。
そして麗花から着席を促されて私の隣へと座ると、変わらず微笑んだままに瑠璃ちゃんへとご挨拶する。
「るりお姉さま。せんじつは私のおたんじょうびかいに来てくださり、ありがとうございます。お手せいのケーキ、とてもおいしかったです」
「ええ、喜んでもらえて良かったわ。あら? 歌鈴ちゃんそのリボン、麗花ちゃんのお誕生日プレゼントね」
そう、私もそれを見てほっこりした。
鈴ちゃんは薄いクリームイエローのワンピースを着ており、編み込まれたツインテールを結んでいるのは例のレースリボン。麗花の家にお招きということだからか、今回は赤色のリボンで結ばれている。
「はい。にあっていますか?」
「ええ、とても良く似合っていますわ」
「ふふっ♪」
あ、鈴ちゃん嬉しそう。
さてさて、お母様の淑女教育の賜物でこんなにも立派に堂々と淑女している鈴ちゃんを見て、肝心の蒼ちゃんの様子は…………あり?
何故か、眉をハの字に下げて鈴ちゃんを見ている。
おかしい。私の予想ではすごく可愛い女の子来ちゃった!っていう、ドキドキした顔が見られると思っていたのに。
「蒼ちゃん?」
「かれんお姉ちゃん……」
蒼ちゃんはウルッとした目で私を見つめる。
えええどうしたの、そんな可愛い顔して!
思わず頭ナデナデしてあげると嬉しそうに笑ってくれる。良かった。
ピシィッ
二人でニコニコしてたら、またしてもそんな効果音がどこからか聞こえてきた。何の音だこれは。
「……お姉さま。そちらのかたは、いったいどなたですか?」
深い微笑みでそう聞いてきた鈴ちゃんに、待っていましたと私もにこやかに紹介を行う。
「鈴ちゃん。この子は瑠璃ちゃんの弟で、米河原 蒼佑くん。蒼ちゃん、この子は私の妹で百合宮 歌鈴って言うの。二人とも同じ歳で、来年の春には同じ学院に通うんだよ。だからせっかくだし、早くお友達になれたらいいよねって思って、今日は二人に来てもらったの!」
「るりお姉さまのおとうと」
「このこがかれんお姉ちゃんのいもうと」
「……あれ?」
鈴ちゃんは深く微笑んだまま蒼ちゃんを見つめ、蒼ちゃんは蒼ちゃんで、眉をギュッと寄せて鈴ちゃんを見ている。どうしたこれ。
「蒼くん。歌鈴ちゃんお誘いして、あそこでお外の景色見てくる?」
「えっ」
「鈴ちゃんも蒼ちゃんとお話する?」
「……はい」
うううん?
あんまり反応の良くない二人を取りあえず、見える範囲で近くを歩かせるという流れで見送り、三人顔を寄せ合う。
「ねぇあれどういう反応?」
「私も蒼くんがあんな感じの反応になるとは思わなかったわ。歌鈴ちゃん可愛らしいし、恥ずかしがるのなら分かるけど、微妙そうだったものね」
「歌鈴も歌鈴でちょっと違いましたわよね。緊張しているようにも見えませんでしたし」
うーんと首を傾げ合う私達だったが、その時ピシィッと再び音が聞こえたと思ったら。
「ちがうもん!!」
そんな怒った声とともに蒼ちゃんが鈴ちゃんによって、コロリと転がされていた。……待て。どうしてそうなった!?




