表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空は花を見つける~貴方が私の運命~  作者: 小畑 こぱん
私立清泉小学校編―高学年の2年間―
265/641

Episode120-2 リーフの相談事③

 ギューッて抱きしめられ抱きしめ返していたら、お部屋の扉からコンコンと音が。


「花蓮いる?」

「あっお兄様。どうぞー」

「歌鈴いる……何してるの二人で」


 顔を出して私達を発見したお兄様は、またかみたいな顔をしてそう聞いてきた。


「鈴ちゃんに元気貰ってました」

「お姉さまをげんきにしてました!」

「あっそう。歌鈴、お勉強の時間だよ」

「!」


 勉強と聞いて、鈴ちゃんの口がへの字になった。

 あれれ? お母様の淑女教育の時は素直に聞いているのに。


「おべんきょう……。鈴、お姉さまとおえかきしていたいです……」

「本当母さんの時とはえらい違いだね。学院に入学する前に、ちゃんと予習しとかないとダメだよ」

「鈴ちゃんのそういうお勉強、お兄様が教えるんですか? お忙しいのに」

「学院でどこまでの範囲を習うかは僕で受けて知っているからね。未知の家庭教師よりも、僕から教える方が確実に理解できるだろう」


 おおう、さすが百合宮家の頼れる長男。本当に何でもデキる男です。

 それでもギュウウと私から離れない鈴ちゃんに、頭を撫でて顔を覗き込む。


「鈴ちゃん。お姉様も鈴ちゃんと同じくらいの頃、ちゃんとお勉強したよ?」

「お姉さまも?」

「うん。お兄様じゃない別の人からだけどね。だからいいなぁ。鈴ちゃん、お兄様から教えて貰えるんでしょ? お姉様もお兄様からが良かったなぁ。鈴ちゃん羨ましいなぁ」


 羨ましいなぁとか言うけど、現在も優等生で前世の記憶のある私には、未就学児で習うお勉強など赤子の手をひねるも同然。お兄様はさすが神童と褒められるのに、私の場合はさすが奏多坊ちゃんの妹君!という褒め方だった。

 私の力じゃなくてお兄様の妹だからできて当然って感じの、あの褒め方は嫌だったなぁ。うんまぁ前世というフライングがあるから、そこのところあんまり言えないけども。


 そして羨ましい発言を聞いた鈴ちゃんなのだけども、何故か口はへの字のまま眉をキュウウと下げられた。えっ、何で!?


「鈴、おべんきょうはいやじゃないです。おべんきょうのおじかんは、お姉さまといっしょにいられません……」


 鈴ちゃん、君って子は……!!


「花蓮、姉なんだから妹に負けないように。歌鈴。花蓮のようなお姉さんになりたいんだろう? 花蓮と一緒じゃ花蓮の方ばっかり見て、集中しないのなんて目に見えてるからね。我慢しなさい」

「お兄さま、鈴にいじわるです! お姉さまにはおやさしいのに! 鈴しってます!! お兄さまだって鈴がいないとき、おへやでねてるお姉さまのあたまナデナデしてわらってました!!」


 えっ、そうなの? 全然知らなかった。

 お兄様を見ると、若干目を細めて鈴ちゃんを見ている。


「大まかな性格は共通で似ているけど、どっちかと言うとこれは僕に似たな」


 ボソッと呟いたかと思ったら、ひっつき虫鈴ちゃんのお腹に腕を回して抱き上げ、私から引き剥がした。突然引き剥がされた鈴ちゃんはびっくりした顔をしていたが、何が起こったのか理解した瞬間に、私の方へと手を伸ばしてくる。


「お姉さまあぁぁ~~っ!」

「花蓮」

「うぅっ」


 言外に甘やかすなと言われて、伸ばしそうだった手をグッと握って我慢する。


 そのまま抱っこされた鈴ちゃんとお兄様は部屋から出て行き、遠くから聞こえる私を呼ぶ鈴ちゃんの声を聞きながら、最早日課となっている妹の可愛さに悶えるのであった。





◇+◇+◇+◇+◇+◇+





 お絵描き道具を片づけた後、私は途中になってしまっていたリーフさんへの返信のため、再びデスクに着いて彼への文をしたため始めた。

 今回使用するのはテンテテンテーン! この季節にピッタリ! 対の角に桜のエンボス加工が美しくも目を楽しませてくれる、オシャレ便箋~♪


「ふっふっふ、女子慣れを目指すリーフさん対策! 非モテの私でも所持する物は絶対的女子! 貴方の文通相手は、こんなに可愛らしくもオシャレなものを使っているという、オシャレ女子なのです!! これぞ女子力!!」


 そうしてテンションを高めて、早速ペンを走らせる。

 最近あったこと。特にゴールデンウィークに皆で遊びに行く約束をしていて楽しみなことを書き連ね、最後の最後で相談事への返答を。


 結局はリーフさんが自分で決めるしかないのだけど、始まりが特に悪くない子となら、私のようにその子とも仲良くなれるのではないだろうか。

 どんな話をするんだろう? どんな声なんだろう? どんな顔をしていて、どんな表情で笑うのだろう?


 知れば知るほど、どんな姿をしているのか知りたいと思うようになっている。手紙で話しているけれど、実際に会って話してみたいと。


「……違う人だよ。きっとそう。リーフさんは、彼じゃない」


 暗示のように自分に言い聞かせる。


 違う。違うよ。だから、大丈夫。

 私は私の書きたいことを書けばいい。


 大切な、私の友人へ――……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ