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空は花を見つける~貴方が私の運命~  作者: 小畑 こぱん
私立清泉小学校編―1年生の1年間―
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Episode95-2 たっくん・裏エースくんと演劇練習

 キョトンとしていると、揺さぶり終わられた裏エースくんが気持ちぐったりとした感じになっていた。


「何じゃれ合っているんですか。私への見せつけですか」

「違うし。んー……、あーダメだ。思いつかねー。もう俺らさ、いつも通りでいいんじゃね?」

「えっ」

「いつも通りと言いますと?」

「役作んなくてさ。つか役柄普段の俺らだろ。ベル拓也に突進していく野獣花蓮に、それを止めるガストン俺。まんまじゃないか?」


 言われて、普段の私達を当てはめてみた。


 うん、しっくりきた。

 普段の私達でいいならそう難しくないな。


「でしたら、丁度いい役がそれぞれに当たったってことになりますね。私は怖い野獣じゃなくて、愛に溢れた野獣で拓也くんに向かって行くと」

「僕はその花蓮ちゃんを受け止めるベルをやると」

「本当に突進していくわけじゃないからな? 分かってるよな?」


 初めはブーブー言っていたそれぞれの役も、蓋を開けてみれば妥当だったということで、やっとこさ私達は台本に目を通し始める。


「えー、野獣③の私の最初の台詞と。『ベル。一緒にいると、楽しいか?』」

「『はい』」


 それから普通に台本の台詞を、流れで言い合っていると。


「『ベル。一体何をしてたんだ』」

「『あなたには関係……ない、わ。ガストン!』」

「拓也くん恥ずかしがっちゃダメです」

「うぅ。そんなこと言ったって、僕、女の子の喋り方したことないもん!」


 もん!って。たっくん可愛い! でもそんなものなのかな。女子である私は、男の子口調でも全然オッケーなんだけど。


「よし、そこで花蓮の出番だ。いけ本物っぽい令嬢!」

「ぽいって何ですかぽいって。私は血筋も確かな由緒正しい家のご令嬢ですよ。拓也くん。恐らくですが、今から言う言葉を真似して下されば、恥ずかしさもなくなると思います」

「う、うん分かった。何て言えばいいの?」


 縋るような目に見つめられて、鷹揚に頷く。


「つい昨日、私と似た家の御曹司の前でも実際にこれを言いました。気分もスッキリして、恥ずかしさも吹っ飛ぶことでしょう」

「え? 花蓮ちゃんと似た家? ……待ってイヤな予感がする」

「腰に手を当てて、もう片方の手は頬に沿うように」

「待ってちょっと止まって。なにその姿勢イヤな予感しかしない」


 イヤな予感なんてとんでもない。

 束の間の勝利だったとはいえ、あのスカッとした気分爽快さは、きっとたっくんの演技の糧になるはず。


「いきますよ。『フッフッフ、負けを認めるがよろしいです! ホーホッホッホ!!』」

「無理なんだけど!! どこの御曹司に言ったのそれ!?」

「つかどういうシチュエーションでそれ言った。学校から帰ってから何があってそれ言った」


 えー? 演技練習見てやるって、上から言われたのをお断りしただけだよ? 高笑いはご愛嬌ということで。


「まぁまぁ。血筋も確かな由緒正しい家のご令嬢の私が言った言葉なんですから、お友達の拓也くんも言えます。これさえ言えれば、あとの女の子言葉なんてお茶の子さいさい」

「確かにハードル高い分、ベルの台詞なんて簡単に思えるかもしれないな」

「新くんまでそんなこと言う!?」

「ほら拓也くん。リッスントゥミー。『フッフッフ、負けを認めるがよろしいです! ホーホッホッホ!!』」

「ねぇ本当にそれ言わなくちゃダメ!?」


 それからグダグダと数分間ほど抵抗されたが私が頑として譲らなかったため、観念したたっくんはそれこそヤケクソ気味に練習を始めた。

 周囲の他の練習をしているグループから、「え、ベルでそんな台詞あったっけ?」という顔と視線を向けられたものの、ヤケクソたっくんは気づく余裕もなく。


「『フッフッフ、負けを認めるがよろしいです! ホーホッホッホ!!』」

「手の角度が違います。もう少し甲を内側に向けて」

「何の練習だよこれ。ベル悪役になってるぞ」


 そうしてこの四時限目で私直伝・令嬢の高笑いを習得したたっくんは、最初の目論見通り台本に書かれているベルの台詞(女の子言葉)はどもることなく、スラスラと言えるようになっていた。


「うわ。どうしよう僕、全然恥ずかしくなくなってる……!」

「地味にショックな顔をするのは何故ですか」

「俺ベル役じゃなくて本当に良かったわ。ガストン役で本当良かった」


 そんな感じで始まった、私達の主役グループ③の演劇練習。


 ちなみに四時限目は劇練習だけではなく、全員でセットも作る(背景は段ボールで手作り)ため、日々交互にする感じで進んでいく予定となっている。取りあえず練習初日を経て、帰宅して薔之院家へと電話を掛ける私。



「麗花~。風の噂で聞いたけど、麗花のところも演劇発表会あるんだよね? 何するの何するの?」

『どこで吹いた風の噂ですの。私のクラスはアラジンをしますけど』


 知ってる~。


「麗花なにするの? やっぱりジャスミン!?」

『どうしてやっぱりって言葉が出てくるのか謎ですが、ジャスミンじゃありませんわよ?』

「えっ」


 思わず受話器を取り落としそうになり、慌ててしっかり持ち直す。


 うそでしょ!? 麗花、ジャスミンじゃないの!?

 麗花以外にジャスミンが似合う子いるわけ!!?


『私はジャファー役ですわ』

「……ジャファー? 何だっけそれ?」

『アラジンの敵役ですわ。ほら、赤いオウムを肩に乗せてる』

「うそでしょ!? え、うそでしょ!? あみだくじなの!? 当たっちゃったの!!?」


 待って何でそんなことになった! まさかの敵役!?


『そんなに驚くことないじゃありませんの。自主制ですので、くじじゃありませんわ。誰もやりたがらないので、だったら私がって手を上げただけですわよ』

「ねぇ。それクラスで反対されなかった?」

『まぁ、よくお分かりですわね? 上げた途端、やっぱり俺がって手を上げる生徒がいましたけど、最初に手を上げたのは私ですもの。責任持って最後までやり遂げますわと宣言しましたわ』


 そこは譲ってあげて下さい。

 顔面蒼白のクラスの面々が目に浮かぶようだよ……。


「ちなみに他の役は、誰が何をするの……?」

『そんな急にしょんぼりしないで下さいませ。ジャスミンは競争率が高かったんですから、仕方がないでしょう。大まかに言うと、アラジン役は満場一致で緋凰さまですわね』

「そのアラジン、ギッタンギッタンに叩きのめしてやりなさい」

『物語をギッタンギッタンにする趣味はありませんわよ』


 タコ殴りしそびれた私のかたきをぜひ。


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