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空は花を見つける~貴方が私の運命~  作者: 小畑 こぱん
私立清泉小学校編―1年生の1年間―
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Episode95-1 たっくん・裏エースくんと演劇練習

 野獣役といっても、最初から最後まで一人でやりきるのではなく、間で交代する方式になる。

 そりゃ高校生とかなら頑張れるかもしれないけど、小学一年生に最初から最後までやらせるのは酷だし、到底覚え切れるものではない。だから台詞の多い役は複数人で同じ役柄をするのだが、これは私の野獣役も該当する。あと主に他の一役で複数人なのは、ベルとガストン役。


 まぁクラス皆に役が与えられるようになっているので、全員何かしら台詞を覚えて舞台に立つのだが、しかしあのあみだくじで望む役を得た者もいれば、私のように望まぬ役を得た者もいる。その筆頭として。


「「「はあぁ~~~~」」」


 来月十一月にある演劇発表会までの期間、三時限目までは通常授業で四時限目は特別授業で進行していく。そして現在その四時限目。


 長い溜息を吐き出したのは、私・たっくん・裏エースくんの変わり映えのしない、いつものメンバーである。


「怖い野獣……怖い野獣……」

「スカート……ドレス……女装……」

「嫌味……小馬鹿……。俺、酒場の盛り上げ役が良かった……」


 上から私・たっくん・裏エースくんの順である。


「私だってナレーションが良かったです。野獣役三人の内、女子私だけってどんな振り分けですか。獣三匹なら今からでも、三匹のこぶたに変更できないでしょうか」

「それこぶた役とおおかみ役しかいないよ。それ言ったら、僕もベル役三人で男子僕だけって。僕だってお城の周りに生えてる木の役が良かった」

「元からそんな役ないだろ。あー……、それ言ったら俺のガストン役は性別合ってるから、マシなのか?」


 会話からも分かるように、たっくんはヒロイン・ベル役で、裏エースくんは野獣のライバルであるガストン役なのだ。けれど私は二人が言うように、それぞれがそんなにイヤな役とは思わないのだけど。


 台詞練習ということで、自分の役と関わりのある役柄の子と組んで練習をしているのだが、何せ私達は揃いも揃って主役級。しかも舞台に立つシーンも同じタイミング。つまり物語を一・二・三部で分けるのなら、最後の三部が演じる場面なのだ。


「あ。そう言えば野獣ばっかり思っていましたけど、私最後に王子しなくちゃいけませんでした。あああっ! 怖さも格好良さも兼ね備えなければいけないなんて、何てハードモード!」


 そう、王子役は王子役で作ればいいのに、ほんのちょこっとだけだからということで、兼任しなければいけないことになっている。誰かうそだと言って。


 私の嘆きを聞いて、たっくんも嘆く。


「他のベル役って木下さんと立野さんで、女子でも可愛い子がやるのに。僕なんて男子で、可愛いのなんてできないよ!」

「え。拓也くんは可愛くないですか?」

「何か言った花蓮ちゃん」

「何も言ってないです」


 ヒヤッとした。何かいまヒヤッとした!


「あ~まぁ、見た目というか、衣装はもうしょうがないだろ。ベルって町一番の美人っていう設定だし。拓也は……うん、見れる方だと思うぞ。下坂がなるよりは全然だろ」

「同意します」

「問題は仕草な。でも可愛いとか女子っぽい仕草なら、ここに一番の見本がいるから大丈夫じゃないか?」

「見本? ……あ、花蓮ちゃん?」


 目をパチクリさせて私を見るたっくん。


 うん? そうね!

 怖いレベルゼロの私は、淑女・令嬢の技術なら伝授できるよ!


「ふふふっ。お母様直伝・淑女の何たるかを拓也くんに伝授する時が来ましたか」

「そんな時は永遠に来ないで欲しかったよ。それで新くんは、何でガストン役イヤなの?」

「俺? ガストンって、自惚れ屋で嫌味なヤツだろ? そんな顔とか作れるかなって思ってさ」

「そう言われると、太刀川くんとガストンって正反対ですよね」


 嫌味な顔する裏エースくん。

 うーん。でも彼、顔は整っているから、やってみたら多分様になる気がするけど。


 同じことをたっくんも思ったのか、「新くんは正反対だけど似合うと思う」と言っている。


「ですよね。実際ガストンって、ベル以外の女の子にはモテてる設定ですし。正反対なのは性格だけで、格好良いのはぴったりです。……あ、そうです。格好良いのは太刀川くんを見本にすれば間違いありません!」

「待て俺王子ってがらでもないから! ……そういや怖い野獣って言っていたけど、別に怖くならなくていいだろ。最終的に花蓮王子になるんだし」

「ダメです! 怖い野獣が格好いい王子さまになることで、私と拓也くんのラブが際立つのです!」

「僕と花蓮ちゃんのじゃなくて、ベルと野獣のだからね? あれ? 分かってるよね?」


 裏エースくんは半眼になって私を見る。


「あのな。その頃にはベルにとって、野獣はもう怖い存在じゃないだろ? 何のために怖い野獣になろうとしてんだよ」


 言われ、ハッとする。


「そ、そう言われるとそうですね。怖いイメージがあるので、怖い野獣にならなきゃって先入観が」


 野獣①と野獣②にはその要素も必要だと思うけど、そうか。私の野獣③は別に怖さ要らないのか。


 ベルとの愛に目覚めた野獣には、確かに怖さは必要ない。必要なのは、ベルをガストンから守るための強さと優しさ。そして――ベルへの愛!

 

「つまり、拓也くんラブを貫けばいいわけですね!?」

「あーそうだなー。頑張れー」

「投げやりにならないで新くん! このままじゃ絶対僕が恥ずかしい思いをする気がするから! 最後まで責任持って!!」


 たっくんラブなら任せといて! 得意です!


 やる気に燃える私の視界の端で、何やらたっくんが裏エースくんを揺さぶっているけど、何だろう?


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