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空は花を見つける~貴方が私の運命~  作者: 小畑 こぱん
私立清泉小学校編―1年生の1年間―
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Episode94-1 演劇発表会の演目

本編復活!

 季節は十月。すっかり自然にそよぐ風も冷たさが顕著けんちょとなり、肌寒い季節となった。秋と言えば食欲もだし、読書もだし、スポーツもあると言える。まぁ色々やりたいことやれって季節ね。


 と、そんな山々の木々も赤や黄色に色づき始めた、この十月。清泉の次なる一年生間の話題と言えば、来月に私達が行う行事、そう――――演劇発表会!




「はい、ということでやりたい劇があったら、どんどん発表していけよー!」


 本日最後の授業、いくつかの説明をした五十嵐担任からそう言葉が発せられた瞬間の、我が1ーBクラスの挙手率は凄まじかった。


「はい! 白雪姫!」

「オセロ!」

「いばら姫!」

「ロミオとジュリエット!」

「人魚姫!」

「ハムレット!」

「白鳥の湖!」

「リア王!」

「おーすごい出てくるなー」


 五十嵐担任が感心、感心と黒板に出てきた物語の題名をカッカッと書き留めていくが、何故だろう。ほらもっとこう、楽しい内容とかさぁ。ポピュラーなシンデレラとか赤ずきんちゃんとか、親指姫とかさぁ。


 何か納得いかずに首を傾げ傾げして見守っていると、一人の子が元気にまた挙手した。


「ヒロイン役は百合宮さんでお願いします!」

「「「「「それな」」」」」

「解せぬ!!」


 挙手率とともに共感率も凄まじいとはどういうことだ。今クラスの過半数以上の声が揃ったぞ。


 もしかしてそれであの内容!? 全部が全部ヒロイン何かしらで死んでるんですけど! シェイクスピアで三つも悲劇ぶっこんできたのは誰と誰と誰だ!!


 すかさず私はパッと挙手する。


「ヒロイン役を辞退します!!」

「「「「「ええーーっ!?」」」」」


 ええーーっ!?じゃないんだよ! ただでさえ死ぬことはないけど万が一、いや臆が一にでも将来路頭に迷うことになるかもしれないのに、劇くらいハッピーでいさせてくれよ!


「まぁまぁ。役どころは劇の内容が決まってからだ。ほら、もうないか?」

「シンデレラとか赤ずきんちゃんとか、親指姫とかもお願いします!」

「よし分かった」


 追加分を言い、そうして出た内容でどれがやりたいかを紙に書いて投票箱に入れるというやり方で決まった、1ーBの劇が何なのかというと。





◇+◇+◇+◇+◇+◇+





「「美女と野獣?」」


「そうです! 黒板に書かれていないものを書くとか反則です! まったくどうなっているんですか、ウチのクラスは!?」


 場所は春日井家の室内プール。


 学校ではとうに時期は過ぎたが、習い事に時期などない。夏休み前から始めたスイミングスクールは今も続いており、数日すれば飽きるかと思っていた緋凰も未だに先生役を続投している。


 一通り本日のレッスンが終わって休憩中、休憩中なのに緋凰が春日井を引きつれて本日の反省会を掲げて近づいて来たあたりから、話の流れで今日のことになったのだ。寒さはモコモコタオルを体に巻きつけているからいいものの、こんな長時間ゴーグルをしていたら顔にあとがついてしまう。

 最初はさっさと終わらそうと思っていたのに、何だかいつの間にか話に熱が入ってしまっていた。


「しかもクラスの過半数以上の意見一致です。これはもう、事前に仕組まれていたとしか思えません!」

「不思議だねぇ」

「担任の先生もしきりに首を傾げていました。最終的にシンデレラと書いて、それが一回だけしか読まれなかった私の気持ちが分かりますか!」

「分かんねぇな。俺らは劇の内容学年くじだから」


 緋凰のその言葉に、ん?となる。


「え? そっちも同じ時期に劇の発表するんですか?」


 聞くと春日井が頷いた。


「うん。僕のクラスはオズの魔法使いで、陽翔のクラスはアラジンだったよね」

「あぁ」


 お、ということはもしかして麗花ジャスミン!?

 帰ったら確認しなくちゃ!


 水色のあの衣装似合うだろうな~と妄想していたら、「お前、」と緋凰に話し掛けられた。え、なに?


「同じ学校じゃねぇのかよ」

「誰が聖天学院に通っていると言いましたか。私は違う学校の、立派な一生徒です」

「チッ。無駄に注意受けた」


 何で同じ学校に通っていないだけで舌打ちされた!?

 おかしいでしょ!


「あー、何かおかしいと思った。猫宮さんだと思ったの?」

「鈍くさかったからな」

「何のお話ですか。失礼なことを言われていることしか分かりません」


 これでもビート板使ってのバタ足を開始してから、三回目でビート板なくすの、二、三回だけになったんだぞ。スクール開始してからほぼ息継ぎ練習していた頃と比較したら、すごい短期克服だ。

 ちなみに緋凰をしても、ビート板消失の原因は不明。ビート板練習初日に何度か滑らせて失くすのを見た彼からは、「宇宙人かお前は!」ともの凄い暴言を吐かれました。


「それで猫宮さんは何の役をするの?」

「役ができると思っているのか夕紀。できても鈍くさい亀子は、城の周りに生えてる木の役ぐらいがせいぜいだろ。あと道具係とか……ダメか、道具破壊する方だな」

「今すぐ失礼なお口を閉じなさい緋凰 陽翔! 私だってやるならナレーションが良かったです! 数人でわいわい聞いて、聞かせ合って楽しい思い出を作ろうと思いましたのに……よりによって主役!! 主役なんて、台詞が多くて孤独な戦いに放りだされるだなんて……!」


 思わず座ったまま、ペチンッと素足すあしで地団太を踏む。

 これが劇内容と同じくクラスメートの陰謀(?)であれば抵抗したが、何の仕掛けもない五十嵐担任お手製のあみだくじで選ばれてしまえば、どうしようもない。


 対人運もない、くじ運もない。ないないばかり!


「マジか」

「主役って。え、ベルなの?」


 グッと眉間に皺が寄る。


「野獣です」

「……ん?」

「美女と野獣の野獣役です!」


 言った途端、その場が静まり返る。

 そして。


「……ブッ! ブッハァーーッ!! ひっ、お、お前っ、つい、遂に野の獣に……っ!」

「遂にとかじゃありません! 今すぐ失礼なお口を縫い付けてやりましょうか緋凰 陽翔!!」


 緩々で軽い私のお口も大概だが、コイツのお口の極悪さも大概である! しかもビーチチェアから落ちて、お腹を押さえながらの爆笑である。天誅……天誅しなければ!


 近くにいいものはないかと探すも見当たらず、モコモコタオルでタコ殴りにするかと思い至ったところで、何の反応も見せていないもう一人からの視線に気づく。


「何ですか」

「うん。似合わないなと思って」

「聞いて床をバシバシ叩くのもやめなさい。似合わないって、春日井さまにしては失礼なことを言いますね」


 言うとキョトン顔をした後で、あっというような顔をした。


「いや、何ていうか。ほら僕は猫宮さんの素顔知っているし、猫宮さんが野獣になるって、大分似合わないなって。なっても可愛いだけで、ちっとも怖くないだろうなって」

「何ですって!?」


 確かに、私が野獣役に決定した時にクラスの多くの面々から、「「「「「ええーーっ!?」」」」」の大合唱を受けはしたけども。


 何と、あの大合唱はそういう意味だったのか。てっきりヒロイン役から外れたせいかと思っていた。だが、それならば話は別だ。


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