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空は花を見つける~貴方が私の運命~  作者: 小畑 こぱん
私立清泉小学校編―1年生の1年間―
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Episode92-2 キノコ女化再び

「花蓮ちゃん……」

「大丈夫です……。拓也くん……」


 本当に大丈夫なんです……。だって私は無罪……。


「全然大丈夫に見えないよ。ね、一旦あそこ行こう。非常口」

「……あっ。私に触らないで下さい。キノコ生えちゃいます……」

「キノコ? 何それ生えないよ。ほら行こう」


 私は悪くない筈なのに再び自然とキノコ女化してしまい、見ていられなくなったたっくんが私の手を引いて席から立ち上がらせる。


「新くん。僕達、非常口にいるから。何かあったら来てよ」


 返事がない。

 どうしよう。私も裏エースくんも屍なのか……。


 何がどうなってこうなったのか。



 一時限目道徳:いつも同じグループで組むのに外れる。

 二時限目算数:特になし。

 三時限目体育:ペアにもならないしお守もしてくれなくて、代わりに相田さんがお守をしてくれる。

 四時限目生物:クラスメートが逆に気を遣って同じグループになったが、終始睨みつけられる。

 昼休憩:今ここ。



 こんな感じで過ごしていたら、キノコ女化するのは自然の摂理だった。

 それもたっくんと仲違いした時と違って、裏エースくんは誰がどう見ても不機嫌そうで苛々していた。触れば噛みつかれそうで、クラスの人気者だというのに誰も必要な場合しか話し掛けていない。


「本当、新くんどうしたんだろう」

「知りません……。大事に使っていたシャーペンがいきなり壊れた気分です……」

「分かりやすいような分かりにくい例えだよ、それ」


 いつか裏エースくんに話を聞いてもらった時と同じように、並んで座る。……たっくんも怒鳴られていたけれど、本人は気にしていないように見える。


「拓也くんも怒鳴られましたけど、大丈夫ですか?」

「え? あぁ、うん。びっくりした。あんな感情的な新くん、あの時以来だなって思って」

「あの時?」

「あー……。もう大分前のことだし、いいかな? ほら、花蓮ちゃんの机を交換した時のこと、覚えてる?」


 言われて記憶を振り返り、そんなこともあったなと思い出す。


「太刀川くんが私の机を破壊したとかいう」

「そう。西川くんと下坂くんに僕が色々ちょっと言われていたの、新くんがたまたま聞いちゃっていて。教室に乗り込んで二人にとび蹴りしたのが丁度花蓮ちゃんの机に当たって飛んで、その時に机の足が折れちゃったんだ」


 うわー……。あれだけ爽やかな顔しといて、とび蹴りとか。あ、水島兄も蹴られたって言っていたけど、あの時もとび蹴りした!?


「な、なるほど。でもそうですね。感情的と言うと、あんまり自分の意見、主張していないですものね」


 意外かもしれないが自分の意見を通すのではなく、皆の意見を取りまとめて良い感じにすることの方が圧倒的に多い子なのだ。

 人のことをよく見ているし、聞き上手だし。さすが出来過ぎ大魔王。そしてそんな出来過ぎ大魔王にストーカー容疑をかけられた私とは。


「うぅ……。私はストーカーじゃありません……」

「うん、大丈夫だよ。皆花蓮ちゃんがそんなのじゃないって、ちゃんと分かってるよ」


 よしよし、と珍しくたっくんが私の頭を撫でてくれた。癒し……。

 本当に何でそんなこと思われた。押し入れの下の段いっぱいのラブレター長者だからって、いくら何でも考えが飛躍し過ぎじゃないだろうか?


「太刀川くんは何を言いたかったんでしょう? 知っているって、本当に何のことなのか」

「ねぇ。夏休み始まってすぐに花蓮ちゃん、電話してきたことあったよね。それと関係ない?」


 思案顔のたっくんに言われ、確かにあの時は裏エースくんの家のこと気になったけど……。


 ふぅ、と息を吐く。


「……実は夏休み中に、一度だけ参加した催会があるんです。元々他の子と会うために行くのを約束しておりまして、拓也くんに電話する前に太刀川くんからもその催会に参加するかと聞かれたんです。けどその催会、お父様が仰るには結構大きな家ばかりが呼ばれているって聞いていたので、太刀川くんも参加するんだって少し驚いてしまって」

「あ、だからそれであの質問」


 合点がいったと小さく頷くたっくん。


「そうなんです。太刀川くんのこと、お家のこととか知らないことばかりなのに、そんな私が彼の何を知っていたと。それも清泉に入学前にですよ? 生誕パーティだって見ても大丈夫かどうかの確認で参加しましたのに。とんだ冤罪です!」

「見ても大丈夫かどうかの確認?」

「あっ」


 しまった、軽くて緩々なお口が!


「……私にも苦手な子はいます。それっぽい子が麗花にもいて、でも麗花はその子と同じクラスになっても問題なさそうでした。だから私も苦手な子がその生誕パーティに参加するって聞いて、わざわざ参加したんです。話すのはハードルが高いと思ったので、見るだけならと思いました」

「それが特別ミッションなの?」

「はい。失敗しましたが。あ、見てもダメだったとかじゃなくて、そもそも会わなかったっていう失敗です」

「そうなんだ……。花蓮ちゃんにも苦手な子いたんだね」


 うん? そりゃいるよ。ただの高位家格のご令嬢っていうだけで、聖人君子じゃないもの。聖人君子どころか、裏で人を唆してヒロインを陥れようとするライバル令嬢です。ならないけど。


「そう言うわけで、催会のことだって濡れ衣です」

「さすがに皆の前で言えないもんね、そんなこと」

「分かってくれますか!」


 苦笑して頷くたっくん、本当に天使ラファエル!

 たっくんにも何でも話せてしまう! 聞き上手! 好き!


「うふふ、拓也くんにお話聞いてもらって、自信つきました。私は断固無罪です!」

「うん」

「教室に戻ったら太刀川くんに言ってやります! 私が貴方に関して知っていることと言えば、クラスの人気者でサッカー好きで運動神経が良いのと、意外に頭良いのとすぐ抜け駆けするのとトランプ激強なのと、とんでもないスケコマシなことにラブレター長者で、足を踏まれるのが大好きなことくらいだと……!!」


「最後の三つ何だ。特に最後。足踏まれていつ俺が喜んだ!!」


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