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空は花を見つける~貴方が私の運命~  作者: 小畑 こぱん
私立清泉小学校編―1年生の1年間―
181/641

Episode83-1 2学期の始まり

 ダブルベビー記念日ー!と騒いでいたものの、唐突にハッとした。


「あれ? 私の下に弟妹っていた……?」


 ゲーム上、お兄様は会話の中で数回出てきただけだが、一応その存在がいることだけは知られていた。

 しかし百合宮 花蓮に弟か妹がいる、などということはなかった気がする。あったら意識して覚えている筈だ。


 え? え?? 家族構成まで変わるの?

 お父様が定時で帰るようになったから??


 待って。人数増える分、路頭に迷う将来への責任が更に重くなってしまった! 原因たる私の責任が重大!!


 なので我が天敵である白鴎と秋苑寺には関わらないようにすることを一層心に誓い、残りの夏を満喫し終えれば――……。





◇+◇+◇+◇+◇+◇+





「拓也くん拓也くん拓也くーん! 会いたかったですぅーーーー!!」

「あ、花蓮ちゃん久しぶ……待って待って止まってわあぁっ!?」

「ああこの髪のツヤサラ感! 拓也くんからする本の匂い! 電話で声しか聞けなかったこの夏休み、どれだけ拓也くんに飢えていたことか!! 本当にお久しぶりですお元気でしたか私はこの夏ちょっと色々あり過ぎましたが何とか今日まで無事に生きることができましたそういえば今月は拓也くんのお誕生日がありますよね何か欲しいものとかありm」

「やめろ、離れろ。拓也困ってんだろ怖いんだよ!!」


 学校の廊下で目標者ターゲットを視界に捉え、すぐさま飛びついて思いの丈をノンストップで喋っていたら、後ろから首根っこ掴まれて引き離された。


 ぐえっ、ロープ、ロープ!


「一体誰です、私と拓也くんの感動の再会を邪魔するのは! ……あら、太刀川くんじゃないですか。いつからそこに」

「最初からだよ! どこが感動の再会だ。見てみろ拓也を!」


 言われ指差された方へ顔を向けると、窓側廊下の壁に頭を預けて、体育座りをしているたっくんの姿が。


「え? あれ? どうしたんですか?」

「皆が見ている前で抱きつかれた挙句、頬ずりまでされたらああなるだろ。恥ずかしいっていう感情、お前どこに置いてきたんだ」


 呆れたように言う裏エースくんは、あの催会で会った時より日焼けしていて、肌が小麦色になっていた。興味深くそれを見つめていたら、何やら訝しげな顔をされて少し遠のかれる。


「おい。俺にまで頬ずりするなよ」

「しませんよ。だって太刀川くんの髪、チクチクして痛そうですもん」

「そういう問題!? ……元気そうだな」


 少しの間を空けてどこか安心したようにそう口にする彼に、笑みが浮かんだ。


「はい。ご覧の通りです!」

「そっか」


 僅かにふわりとした優しい空気感が漂ったのも束の間、後ろから「皆久しぶりー!」と手を振る相田さんと、その隣で嬉しそうに笑う木下さんが近づいてきたことで、あっという間に夏休み前の空気感になった。


「太刀川くん、焼けたね」

「おう。家にいるより、外に遊びに出ることが多かったからな」

「柚子島くん何してるの? 暑いから冷やしてるの?」

「……花蓮ちゃんが全然自重してくれない。二学期からこんな恥ずかしい思いをするなんて……」

「えーと。取りあえずこうなった犯人は百合宮さんね」

「私犯人扱い!?」

「言い逃れできないだろ。俺が証人だ」


 そんな調子でガヤガヤしながら皆で一緒に教室へ向かい、そうして二学期が始まった。


 学校行事としては今月運動会があり、十月に授業参観、十一月にクラスごとの演劇発表会と、毎月何らかのイベントがあってすごく楽しみである。

 クラスの話題も運動会に関連するものが多くなってきた。出場する種目というと、短距離走に玉入れ、大玉転がしにあとは二年生と合同のダンス。


 そして目玉と言うと、やはり全学年の選抜生徒によるリレーだろう。


 運動が得意な生徒にとっては燃えるイベントだが、しかしそうではない子はどこか憂鬱気味だ。私はどちらかと言うと燃えている方だが、そんな子達の様子はどうも気にかかる。





「ねぇねぇ。ボールキャッチ特訓なんですけど、運動会向けにちょっと内容変えませんか?」


 昼休憩、いつものメンバー(たっくんと裏エースくん)で過ごしている中、私のその提案に二人はキョトンとした顔でこちらを見た。


「運動会向け? それって走ったり、玉を投げる練習に変えるってこと?」

「そうです。教室でも浮かない顔をしている子を何人か見掛けますので。練習をして、自信をつけた方がいいのかなって」

「なるほどな。まぁ花蓮以外はボールキャッチ特訓も上達したし、そろそろ解散してもいいかとは思っていたけど」


 そう漏らした裏エースくんの呟きに驚愕する。


「え。あの、私以外の皆さんって、もうそこまでの域に?」

「おう」


 何てことだ。いくら皆上達が早いからって、私しか残ってないってことある??


「ま、まさか拓也くんもですか?」

「うん。もうドッジボール得意って言えそう」

「そんな! 私を置いていくなんてひどいです!」


 一緒にやり始めたのは同じ日からなのに、どうしてこんなに差が出るのか。私なんて、すこ~~し投げるスピードを速くするだけに留まっているのに!


「まぁまぁ。俺も花蓮の案には賛成。強制はできないから、これも一応参加を取る形だな。内容、内容なぁ……」

「それって、さっきの走ったりっていうのじゃダメなの?」

「いいけど、でもただ走るだけで気分上がるか?」

「あ~なるほど」


 ふむ。裏エースくんらしい気遣いに私も思案する。

 運動会まではまだ二週間もある。その中でどれだけ皆の気持ちを盛り上げられるかが、勝負になってくるだろう。


「はい! 太刀川くん付きっきり権というのはどうでしょう」

「は?」

「ボールキャッチ特訓でも、太刀川くんの鶴の一声で皆さん集まったじゃないですか。男女から大人気の太刀川くんに付きっきりで教えてもらえるって、やる気出ませんか!?」

「一番ダメダメな花蓮を差し置いて、それでやる気出るヤツいるか?」

「いないと思う」

「ええっ!?」


 即却下されて落ち込む私をよそに、二人はハッとしたように顔を見合わせた。


「そうだ。花蓮ちゃんだ」

「花蓮だな」

「え? どういうことですか?」


 聞くと何故か二人は押し黙った。


 待て。何だか嫌な予感がするぞ。


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