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空は花を見つける~貴方が私の運命~  作者: 小畑 こぱん
私立清泉小学校編―1年生の1年間―
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Episode57-2 そこに至る回想の始まり

 そうして結局内野に残ったのは、味方チームだと私と相田さん。敵チームは裏エースくんと西川くんだけになった。


「もう、こっちの男子ふがいないわね! 何で残ったの、私と百合宮さんだけなの!?」

「まったくです! もう最後の方とか私、他の子の盾になりに行きましたのに!」

「やっぱな! お前ボールの前に出るなって言っただろ! あえて言うぞ。邪魔!!」

「邪魔!?」

「百合宮さん、下がって! 下がってください!」


 シッシッと手で追い払う裏エースくんと、どうしてなのかボールが当たらないようにと下がれと言う西川くん。


 くっそ、あくまでも私をドッジボールに参加させない気である。


「誰が敵の言うことなんて聞くものですか! 相田さん、私達女子の底力を見せつけてやりましょう!!」

「あ、ボールは私が取るから。百合宮さんは私の後ろに来て!」

「はい!」


 タタッと走って、素直に言われた通りに相田さんの後ろへと回った直後、そこでハッと気づく。


 あれ? もしかしてこれじゃ私、盾にもなれないのでは!?


「いいのか相田。それじゃ避けられないぞ!」

「いいの! 私が百合宮さんを守るんだから!」

「待って下さい。相田さんが外野に行ってしまうことになるより、私が行った方が動きやすくなりませんか? その方が外野も復活しやすい筈です」

「百合宮さんに当たった時点でゲーム終わっちゃうからダメ!」

「待って下さい! いつの間に私を守るゲームになってるんですか!?」


 そんなの知らなかったよ!?

 あーっ、だから誰も私に当てようとしなかったのか! どうりで仁王立ちしても狙われない筈だよ!


 大きなショックを隠しきれずにいる内にも、いつの間にかボールは西川くんの手に渡り、相田さんに当てようと振りかぶる。早い球が真っ直ぐ彼女へと向かうが、それを見事キャッチ。


 相田さんも素早く投げて西川くんへ当てようとしたが、それは間に入った裏エースくんに取られてしまう。それ、この間私がやる予定だったやつ!


 そして投げて体勢がまだ戻りきらない相田さんに向けて、裏エースくんがとどめと言わんばかりの速球をり出した。


「あ!」


 女子の体勢が戻らずして投げるとは、それでも裏エースくんか! 後ろに私がいるというのに卑怯なり!


 それでも何とか相田さんは受け止め、一旦ボールを外野へパスした。


「さすがに危なかったぁ」


 そう言って外野からのパスを受けて彼等とラリーを続けながら、狙うタイミングを見計らっている。外野とのラリーが続く間、私はこの勝負に勝つ方法を思考した。


 状況的には女子対男子の二対二(実質一対二)、後ろに私がいては相田さんが避けられず、外野からも私にボールは回ってこない。けど、先程の話では私がボールに当たったらダメで、ボールを取ったらダメとは言われていない。


「……ふっ。要は私が正規せいきルールでボールをキャッチして、離さなかったらいいだけの話です!」


 取ったボールは外野へパスし、相田さんに投げてもらう。完璧!

 さぁ来い! 今度こそ華麗にボールを受け取って見せよう!!


 後ろで密かにやる気に満ち満ちている私に気づくすべのない相田さんが、パスをもらった瞬間に裏エースくんの足を狙って投げつけた。

 しかし足に当たったボールはさすがサッカー少年というべきか、上手いこと上に飛んでそのままキャッチ。


 勢いをつけて投げられたボールはパシッと受け止めて、西川くんへ。彼も上手いことキャッチして投げつけてくるが、負けじと取る相田さん。


 ――そして、遂にその時がやってきた。


 再度西川くんに投げた時に、彼女の体勢が崩れた。

 その瞬間にバッと前に飛び出して、相田さんを守る立ち位置に陣取る。


「えっ、百合宮さん!?」

「あっ、花蓮!?」


 後ろと前から素っ頓狂な声が聞こえるが、問題ない!


 そして受け止めたボールを素早く投げるため、正面にいるのが私だと西川くんが気づいたのはボールを投げてからだった。


「あっ!?」


 投げたのが西川くんで良かった。

 ずっと見ていたが、彼はよく足や腕を狙ってくる裏エースくんと違って、腹のど真ん中に向けて投げてくることが多いので比較的取りやすいのだ。


 真っ直ぐ飛んでくるボールをキッと眼光鋭く見つめ、手を構える。

 今度は私が相田さんを守る番だ!


 バシッと受け止め、ボールを落とさないようにと手にしっかり力を加えた……!


「……。……えいっ!」


 見事ボールを落とさず受け止めた私は、作戦通りに外野へとボールを投げて渡す。


「百合宮さん!」

「相田さん」


 私の勇姿を後ろから見ていてくれた彼女が嬉しそうな声で呼び、それに応えようとゆっくり振り返った。外野からのボールが無事に相田さんへと渡ったのを見届け、そして。


「あとは、頼みました……」


 私はその場に、崩れ落ちた。


「ゆ、百合宮さん!?」

「おいっ! どうした!?」

「花蓮ちゃん!」


 地面にひざをついたことで、何らかの異変が起こったことを察知したクラスの面々がざわめき、相田さんと裏エースくんとたっくんが私を囲む。


「花蓮!?」

「……指」

「何だ!」

「……指、突き指しました……っ。痛い……」


 呟いた瞬間、またしてもクラスの空気は一瞬で凍った。


「す、すんませんでしたああああぁぁぁ!!!」

「担架! 急いで担架!」


 土下座する西川くんと何故か担架を呼ぶ下坂くんの声を遠くに聞きながら、負傷した私はその後保健室に送られて付き添いの裏エースくんに、


「お前、もうボールに当たるのも触るのも禁止な」


 と非情な宣告を下されたのだった。


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