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空は花を見つける~貴方が私の運命~  作者: 小畑 こぱん
私立清泉小学校編―1年生の1年間―
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Episode56-1 ケンカの真相と仲直り

 半眼で疲れたように言う裏エースくんと、彼に言われて落ち込みを見せるたっくん。

 そんな二人の姿を涙は止まらないまま見つめていると、たっくんがそろりと眉を下げて私を見る。


「嫌いって言って、ごめんね。花蓮ちゃん」

「っ! いえ、だって私が悪…」

「そうじゃないんだ!」


 言葉を遮られて口籠くちごもれば、ハッとしたように再度、「ごめん……」と謝られる。


「あの。言っておくけど、花蓮ちゃんが言ったの全部違うから」

「……? 違う、とは」

「全部。あっ、でも新くんと仲良くなりたいっていうのは否定しないよ。違うって言いたいのは、花蓮ちゃんが邪魔っていうことで」


 そこまで言って、ふぅと一息吐く。


「邪魔じゃないよ。何で邪魔って思うの。僕、花蓮ちゃん大好きだよ」

「!!!」


 止まらなかった涙がその瞬間ピタリと止まった。


 好きって。

 たっくんが私のこと、大好きって……!!


「ほら見ろ。これのどこがお前より俺にきてるんだよ。お前の一言ですぐ泣き止んで笑顔になったぞ」

「だって、花蓮ちゃんが新くんのことばっかり言うから……」

「え?」


 ポカンと言われたことを反芻はんすうし、けれどそれでも疑問符が頭上に浮かぶ私を、呆れた顔で裏エースくんが見る。


「本当、拓也が絡むと鋭いかポンコツか極端すぎるって。タネ明かしするとだな、拓也が嫉妬したのはお前じゃなくて俺。花蓮が俺に甘えてるって聞いて、自分はそうじゃないって思ったんだろ。ほら、拓也と俺じゃ花蓮の話し方違うじゃん。拓也は俺の方が花蓮と仲が良いって思ったんじゃないか?」


 そう裏エースくんが水を向けると、たっくんはムッと顔をしかめた。


「僕が花蓮ちゃんと最初に仲良くなったのに。だっていつの間にか新くん、僕の知らない内に花蓮ちゃんと仲良くなっているし。たまに二人でコソコソ話してる時あるし。僕の分からないこと、二人だけ分かってるみたいなことあるし。僕だって新くんみたいに、花蓮ちゃんに頼ってもらいたいのに……! 昨日だって中庭で本当は僕も花蓮ちゃんに、もっと言いたいこと言ってもらいたいし、言ったりしたいって思ったけど、素直に言えなくて。なのに、花蓮ちゃんが太刀川くん太刀川くんって、新くんのことばっかり! 僕が言い始めたことだけど、でも、あんなに新くんのことばっかり言わなくたって……!!」


 せき切ったように吐き出される真相の数々に、今度はポカンと口も開く。これ、どこかですごく似たようなことを聞いたような。


「なに他人事の顔してんだ。お前だろ、お前。だから言ったんだよ、花蓮と一緒だって」

「私……。え、えぇっ!? そ、そんな。拓也くんが私のことで、太刀川くんに嫉妬……!!」

「ニヤニヤするなポンコツ。拓也ー。花蓮もなー、お前が俺のことばっか言うから腹立ってケンカ腰になったんだとー」


 あっ! ちょ、なに暴露してんの!

 やめて恥ずかしい!!


 アワワとたっくんを見ると、彼も呆気に取られたような顔で私を見ている。ぎゃー恥ずかしい!!


「バカ! 太刀川くんのバカ! 乙女の気持ちを軽々しく口にするなど言語道断! 恥を知りなさい!!」

「へーへー。悪うございましたー」


 何っだ、その一欠片も謝意しゃいのない謝罪の言葉は!


「それ本当? 花蓮ちゃん」


 おずおずと聞いてくるたっくんにうっ、と詰まり、落ち着きなくモジモジと指先を擦り合わせる。


「……はい。だって二週間も会えなくて、拓也くんの方から二人で話したいって言われて、すごく嬉しかったんです。お友達が増えて二人だけっていうの、本当に久しぶりでしたし。それなのに、二人きりになっても話すことが太刀川くんのことなんて、あんまりじゃないですか。いなくても拓也くんの頭の中は太刀川くんでいっぱいなんだと思ったら、もう悔しくて悔しくて!」

「花蓮ちゃん……」

「そこまで言われる俺の方こそあんまりだろ」


 私だけが拓也くん大好きで、裏エースくんに嫉妬するばかりだと思っていたのに。

 拓也くんも私が大好きで、裏エースくんに嫉妬していただなんて。


 ふふふっと笑みがこぼれる。


「私達、一緒ですね!」

「うん!」


 ニコッと嬉しそうに笑うたっくんに、更にニコニコと笑むのが止められない。やだもう大好き!!


 そうして二人でホワホワ花を飛ばしていると、はあぁぁ~とわざとらしい大きな溜息が聞こえてきた。


「あら、どうしたんですか太刀川くん」

「いや……あー、これがあの時の花蓮の気持ちかと理解したところ」

「?」


 あの時? どの時?


 視線を窓から見える景色へと向けている裏エースくんに首を傾げていたら、「そういえば、」とたっくんが彼に疑問をぶつけた。


「新くん。どうして僕がその、新くんに嫉妬してるって思ったの?」

「あ、確かに」


 非常口で私の話を聞いて、何でたっくんがそう思ったんだって分かったんだろう? いくら周りのことを良く見ている裏エースくんだって、そんな、確信的に人の気持ちまで分かるものなの?


 裏エースくんは視線を戻すと、私達を交互に見遣る。


「はっきり分かったのは、やっぱ花蓮の話聞いてからだな。まぁ花蓮が拓也のことで俺に対してあーだこーだ言うのはいつものことだけど、拓也はさ、花蓮いない間ちょっとおかしかっただろ」

「え、僕!?」

「だってお前、花蓮が貰った手紙がファンレターって分かった時から、何か元気なかったし。花蓮いなくて寂しいんだろうなって思ってたけど、電話で花蓮と話したって言った時さ、お前俺に難しい顔してたんだよ。何か言ったか俺?ってなったんだぞ。そしたら何か知らないけど、拓也は怒ってるし花蓮は沈んでるし。花蓮からケンカのいきさつと、花蓮の方の理由聞いてピンと来た。結局ファンレターのこともお前、本当は気に食わなかったんだろ」


 ファンレターが、気に食わなかった?


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