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空は花を見つける~貴方が私の運命~  作者: 小畑 こぱん
私立清泉小学校編―1年生の1年間―
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Episode53-1 裏エースくんによる聞き取り

 やっぱりお悩み相談だったんじゃないか。

 一番仲の良い私に相談してくれたんじゃないか。


 裏エースくんを避けることになった原因の、下坂くんと西川くんには相談し辛いじゃないか。


 私を頼って今更言い辛いことを話してくれたのに、私というヤツは……!!





「……どうした? 何か……あー、俺で良かったら話聞くけど……?」


 とても聞き辛そうに、机に伏した私の頭上から裏エースくんが声を掛けてきた。


 それもそうだろう。いま私の半径一メートル範囲内では、もれなくキノコが自生している。

 ちなみにそのキノコが自生する範囲に、たっくんという名の希望の光はいない。


 彼は私を捨て置いて、下坂くんと西川くんの輪で彼等の戸惑いも知らぬ振りで陣取っている。


 朝は挨拶もはばかられるように視線を本に固定していたし、合間の休憩時間にはトイレに出ていかれるし、給食だって黙々と口に運んで一言も喋らない。


 完全に話しかけるなオーラ満載だった。


「私が悪いんです……。全面的に……。拓也くんを責めないで下さい……」

「いや責めるも何も、本当にどうしたんだよお前ら。クラス中が気まず過ぎて落ち着きなくしてるんだけど、どうにかしろよ」

「それ、私のせいですか……? そうですね、私のせいですよね……。全面的に……。拓也くんを責めないで下さい……」

「重症だなこれ。ほら、話聞いてやるから行くぞ。拓也! 俺ら非常口に行くから、来たくなったらいつでも来いよ!」


 大きな声で絶対聞こえるように裏エースくんが言っても、たっくんはこちらを見もしなかった。


 私がいることで、仲良くしたい筈の裏エースくんまで無視させてしまうことに……!!


「太刀川くんが無視されるのも私のせいです……。全面的に……。拓也くんに文句つけないで下さい……」

「はいはい。文句つけないからあっち行くぞー」


 大人しく付いて来ないと思われたのか、手を引かれて歩かされる。そんなことをしなくても、今の私には反抗する気力もないのに。


「私に触るとキノコ生えますよ……」

「キノコ?」


 なんじゃそりゃと言いながら、教室を出て廊下を進む。

 ファンレター運動まで発展するほど周囲の私に対する評価が変わったせいか、遠巻きに窺うような視線はほとんど感じず、むしろ憧れるようなキラキラとした視線が向けられているように感じた。


 こんな時でなければ嬉しくて舞い上がっていただろうが、今の私にはグサグサと突き刺さるその視線が痛くてしょうがない。


 こんなキノコ女にそんな視線を向けないで下さい……。


「で、何があったんだよ」


 障害もなく無事に非常口へと辿り着き、隣り合って体育座りをして数分。裏エースくんがややあって切り出した。


「何が……? ふふ、何があったんでしょうね……。夢でしょうか……」

「現実だから。おーい、俺が誰か分かるかー?」


 正面に回りこまれ、視線が合う。

 爽やかさが印象に強く残る、えらく整った顔が心配そうに私を見つめている。


「太刀川くん……」

「そうそう、俺。俺だったら何でも言えるだろ。言ってみろ。てか言え」

「何ですかそれ……。私にそんなこと言ってもいいと思っているんですか……。百合宮家の令嬢たるこの私……いったーい!」


 衝撃を受けてジンジンする額を押さえて涙目で睨めば、はぁ~とわざとらしく大きな溜息を吐き出していた。


「か弱い女子たる私にデコピンしましたね!? 玉の肌に傷が残ったらどうしてくれるんですか!」

「おう、やっとか。らしくないこと言ってけむに巻こうったって、そうはいかねーぞ。ほら、そのまま吐き出せ」

「うぅっ。太刀川くんなんて、太刀川くんなんてっ……太刀川くんのばかああぁぁっ! 拓也くんに嫌われちゃったじゃないですかあぁぁぁー!!」


 廊下に響き渡るような大音量で叫び、はっきりと口にしてしまったことで、改めてその信じられない事実が突き刺さった。

 じわりどころか、ボタボタと大粒の涙が両目からこぼれ落ちていく。


「言いたくなかったのにいぃぃ! バカバカおたんこなすうぅぅぅ!」


 罵倒しても文句やら突っ込みやらが飛んでこない。

 そんなことにも悲しくなってひーんと泣いていると、目の前にそっとハンカチが差し出された。


「言わせて悪かったな」

「……そういう、そういうところです!」


 ひったくるようにして思いっきりチーンッと鼻をかんでも、全然スッキリしない。うわー……というような顔した裏エースくんなんて知らない。


「そういう、爽やかで格好良いところが、拓也くんをたぶらかすんです。無駄に遠慮するほど、仲良くなりたいって思うのも分かります。でも、でも……っ」

「うん」

「わ、私だって言い過ぎたって自覚あります。でもおぉぉぉ」


 言葉に詰まって泣き出す私の背中を軽く擦りながら、根気強く待ってくれる。

 嗚咽を漏らし、ハンカチをギュウッと握り締めた。


「き、き、嫌いって、言わなくたってえぇぇぇ!」

「あー……。原因は?」

「太刀川くん」

「うん、なに?」

「だから太刀川くんです」


 ポカンと、まるで何を言っているのか分からないという顔をする彼に、ピキッと米神に青筋が立つ。


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