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空は花を見つける~貴方が私の運命~  作者: 小畑 こぱん
私立清泉小学校編―1年生の1年間―
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Episode50-2 リーフの相談事②

 落としたペンを再度拾って机の上に置いたお兄様は、ふぅと息を吐くと私のベッドの上に座った。


「女の子ってそういうの好きだよね。花蓮も友達とそういうこと、話したりしてるの?」

「ないですよ。そういう話が出たのもその時が初めてです」

「そう。……まぁ中等部に上がるのもあと少しだし、放っておくか」


 少し前の私のように物憂げなお兄様を見つめて、ピンとひらめく。これはリーフさんの相談事を自然に相談できるチャンスなのでは!


「あの、お兄様。もしお兄様にどうしても仲良くなりたい女の子がいて、お友達になって下さいって言った時に、嫌ですって言われたらどうしますか?」

「え?」


 きょとんとするも、うーんと唸って考える素振りを見せた後。


「そうだね。僕は友達申請して作る方じゃないから想像だけど、まずは嫌な理由を聞くね。何が悪いのか原因が判らないとどうしようもないだろう? 原因がなくなったら、次にまたお願いする時に相手も断る理由がなくなる」

「なるほど」


 ふむ、お兄様はちゃんと相手の気持ちも踏まえた上で、原因を潰す解決策を練ると。


 何と理想的な回答。

 さすが紳士の申し子たる百合の貴公子さまである。


「ではもしその嫌な原因が、お兄様にとって直すのが難しい場合は?」

「どうしても仲良くなりたいんなら、出来る限りのことはするよ。それでも難しいのであれば、諦めることも一つの道だと思う」

「大変参考になりました。ありがとうございます」


 やっぱりお兄様は頼りになる人だ。

 リーフさんへの返答が解決できて安堵する。


 気楽になった私は早速文面の構成を頭の中に書き始めるが、そんな私の様子にお兄様が察した。


「僕に聞いたの、文通の返事?」

「あっ、えっとそうです。でもお兄様の考えを参考に私の考えを書きますので、そのまま聞いたことは書きません」

「あぁ、そういうことは心配してないよ。リーフくん、どうしても仲良くなりたくてお友達になってほしい女の子がいるの?」


 気になったのはそっちか。

 そうだよね。文通始めたの、リーフさんの女の子慣れのためだもんね。


「いえ。リーフさんじゃなくて、その従兄弟さんらしいです」

「え?」


 驚いたようで目をパチパチとさせている。


 お兄様からしたらお友達の弟の従兄弟ということで同じ聖天学院っぽいし、従兄弟さんのことを知っていても不思議じゃない。それでこの反応とは、余程意外だったのだろうか。


「へぇ……。知らなかったな。そうなんだ。そう、そんな相談までするようになってたんだ。随分仲良くなったよね」


 え、気になったのそっち?

 手紙の内容のことはお兄様も聞いてこないから普通に喋っちゃったけど、別に問題ないよね?


「そうですね。最初の頃のあの抗議文以降は楽しく文通しています。リーフさん、すごく素敵な文章を書くので私も負けられません! でも文通続けて思ったんですけど、手紙の内容みたいに女の子と話したらリーフさん、すごく素敵な男の子だと思いますよ。素っ気なさ、早く治るといいですよね」

「そんな風邪が治るみたいに。まぁ花蓮が楽しく続けていられるのならいいけど。……素敵。素敵ねぇ」


 何やら真顔で口元に指を当てて考え始めたお兄様にどうしたのかと思うが、思い浮かんだ文面の構成をメモするために普通の紙に書き留める。


 ふんふん、これでここはこうして、これをこう説明すると。


「私の文通経験値は多い! そんな私にかかればこんなものです! ふふん、リーフさんの感動に打ち震える姿が目に浮かぶよう!!」

「それは言い過ぎだよ。彼、そんな感じの子じゃないから」


 文章が湧き出るように浮かんでテンションが上がってドヤ顔で鼻を鳴らした私に、考え込んでいたお兄様からツッコミが入った。


 お兄様! テンションが下がるようなことは言わないで下さい!!





◇+◇+◇+◇+◇+◇+





 その日の夜、裏エースくんから家に電話がかかってきた。


『あと一週間かー。ケガの具合はどう? 大丈夫か?』

「ええ。順調に膝の擦り傷もおでこの傷も薄くなってきています。ほっぺたはその日に腫れも引きましたし。クラスはどうですか? 拓也くん、寂しがっていますか?」

『まぁな。拓也だけじゃなくて遠足の班員は全員そうだよ。ところで療養中何してんの? ずっとベッドに寝たきりか?』

「そんなわけないじゃないですか。本読んだり、玩具で一人遊びしたりしてますよ」


 今日だって、リーフさんへのお手紙を書いていたんだぞ。


『……何か聞いてごめんな。あーそうだ。花蓮て勉強はできるから大丈夫だと思うけど、一応俺と拓也と木下で授業のノート、花蓮用にまとめてるから。登校する時に渡すな』

「えっ!? わざわざありがとうございます! 大変でしょう?」


 二週間分の授業ノートだよ!?

 自分用にきれいにまとめるのでも手一杯だと思うのに、私のためにそんな手間をかけてくれているだなんて……!


 メンバーの中に相田さんと下坂くんが入ってないことなんて気にしてないよ。本当だよ。


『休み時間とかにちょこちょこやってるから、思うほど大変じゃないぞ。気にすんな気にすんな。俺らだって好きでやってんだし、授業に出られない花蓮の方が大変だろ。あー、ちなみに相田と下坂は事情により俺が却下した。あいつら字が思ったより汚い』


 事情によりって言って、その理由暴露しちゃってるじゃん。

 ダメじゃん裏エースくん。


「でもその皆さんのお気持ちが嬉しいです。うふふ、学校行くの楽しみになってきました! あと、お昼休憩の時に皆でトランプしませんか?」

『トランプ? そうだな、登校しても一応大人しくしていた方がいいんだろうし。話しておくよ。でもトランプって久しぶりにやるなぁ。あれって結構心理戦なところあるだろ』

「え、心理戦? 運じゃないんですか?」

『運要素もあるけどな。ババ抜きとかは俺、相手の癖とか探しちゃうんだよ。言っとくけど俺強い方だぞ』


 ……もしや私の癖って顔じゃないよね?


「そ、それは楽しみです。必ずやババを私の手で太刀川くんの手札に迎えさせてみせましょう!」

『あーそりゃ楽しみだな。ま、花蓮も楽しみにしてろよ。学校来た時びっくりするから』

「びっくり?」

『そう、びっくり』


 どこか笑いを堪えるように言われたそれに、それ以上のことは教えてもらえず裏エースくんとの電話は終了した。


 びっくりってどういうことだろう?

 楽しみにしてろってことは、私にとって楽しいことだとは思うけど……。もしそうじゃなかったら裏エースくん呼び出し決定だからね。


 皆に会いたい待ち遠しさと何か知らないサプライズに悶々としながら、その日私は就寝した。





◇+◇+◇+◇+◇+◇+





<リーフさんこんには。

 私の学校の行事は遠足で、ルルグゆとり公園に行ってきました。

 見どころはフラワーロードとアスレチックで、私はフラワーロードの花の種類の多さに感動しました。


 中でも薔薇のアーチは見事で、まるで童話の中に入り込んでしまったように思いました。見て歩いただけですが班のお友達と一緒だったので、とても楽しかったです。

 その後も私も木の木陰で涼みながらお友達と会話を楽しみましたが、リーフさんと同じですね。


 いつか、リーフさんもルルグゆとり公園に行くことがあったら、フラワーロードはおススメなのでぜひ行ってみて下さい。リーフさんも親交行事が楽しいものだったようで、よかったです。


 そろそろ夏もやってきますし、夏休みにどこに遊びにいくか今から考えてワクワクしています。

 早すぎますかね? 去年は山に行ったので、今年こそは海に行きたいと家族にも相談するつもりです。


 それで、リーフさんの相談事のことなのですが。


 どうしてお友達になりたい女の子は、従兄弟さんとお友達になることがイヤなんでしょうか。

 理由も判らずに何度もお願いをしても、それは相手の子もイヤだと思います。


 相手の子のことを考えてあげて、それで相手がイヤだと思ったところを直してから、お願いしてみてはどうでしょうか?

 直そうとした努力と誠意が伝われば、どれだけ友達になりたいかという思いも伝わると思います。


 もし知らない内にイヤな思いをさせてしまったのなら、ちゃんと謝る。もしお願いする態度が軽く見えたのなら、ちゃんと相応の態度をとる。


 どうするのかは従兄弟さん次第です。

 従兄弟さんのご健闘をお祈りしております。

                                            

                        天より>


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