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Episode7-2 麗花とのお付き合いと気になること

 私は麗花と一緒に過ごすことを居心地が良いと思い始めている。

 それに攻略対象と違ってライバル令嬢の麗花は、私にとって害のある存在じゃないしね。

 現実的に百合宮家と薔之院家の家格もどっこいどっこい。付き合う相手として、実はとても丁度良い関係だったのだ。


 と、そんなことを考えていると、ふとある懸念事項が頭の中に浮かんできた。

 麗花と今後も付き合う上で、絶対に避けて通れぬ道である。


「ところで麗花さん。ちょっと聞きたいことがあるのだけど」

「何ですの? というかいい加減起きて座りなさい。私相手に転がったまま聞くつもりですの?」

「えー」

「えーじゃありません!」


 仕方なく座り直せば、「まったく!」と言われる。

 想像以上に麗花は細かいことが気になる性分だったらしい。


「麗花さんって、緋凰さまと面識があったりする?」

「緋凰さまって、緋凰家の陽翔さまのことですの?」

「そう、その緋凰さま」


 緋凰ひおう 陽翔はるととは、麗花がライバル令嬢で登場する“太陽編”のメインヒーロー。

 つまり麗花が家の都合で婚約したのをきっかけに一目惚れして追いかけ回し、最終的に婚約破棄されて精神を患わされる相手のことである。


 この時点で麗花は緋凰と既に婚約しているのだろうか?

 私の問い掛けに麗花は首を傾げたが、次の瞬間にはそれを横に振った。


「いいえ。面識はありませんが、他の子が噂しているのを耳にしたことはありますわ」

「噂とな」

「……まぁいいですわ。お顔立ちがすてきとか、キラキラ光っているとか。私はあまり興味ありませんでしたけど」


 ああ、きっと麗花それどころじゃなかったんだよね。他の子が話しているのを聞きながら、何て声を掛けるか悩んでたり、タイミングを計っていたんだよね。

 目に見えて想像できるこの私の想像力の豊かさよ!


「ちょっと」

「はい?」

「今、とても失礼なことを想像しませんでした?」

「いえ? まさかそんな」

「……」


ジトッと向けられる麗花の視線を冷や汗流しながら受け止めた私は、噂について口を出す。


「でもまぁ噂なんて当てになりませんよ、本当。キラキラ光るって、まさか自然発光しているわけでもないでしょうし」

「自然発光……」

「そうです。あっ、本当に光っていたらどうします? ピッカ、ピッカ。点滅していたら目に痛いこと間違いなしですね~」

「本気で言っていますの?」

「ごめんなさい。冗談です」


 麗花さんの目が冷たい。泣きそう。

 はぁ、と先程より大きく溜息を吐かれてしまった。


「で、そんなことを聞いてどうするんですの? その緋凰さまがどうかなさって?」

「えっ。いやー、何となく気になっただけです。麗花さんもどう思っているのかなーとか」


 貴女が将来一目惚れする相手ですとは口が裂けても言えない。

 どうにか誤魔化せば麗花は微妙な表情をしながらも、「ふーん」と一先ず納得してくれたようだ。


 うーん、友達の立場としては出来れば麗花には緋凰を好きにならないでと言いたいが、こればっかりは麗花次第だからなぁ。


 私は前世を生き己の辿る結末を知っているからこそ、私自身の意志で白鴎を好きになることは絶対ないと断言できる。もし万が一にでも、世界の強制力というものが発動しなければの話だが。

 麗花は数日過ごして分かったが、ただ人と接しベタでものをはっきり言うだけの根は優しい女の子なのだ。


 最初はやっちまったと思っていた麗花との友好関係も、今では素直に続けていきたいと思っているし、ゲームの結末通りなんて以ての外。

 好きになってしまったらしまったで、婚約破棄しないようにどうにかするしか……。


「花蓮さん、聞いておりますの!?」

「え、わぁっ! へ!?」


 考えに没頭していたらしく、何か話しかけていたらしい麗花の声が全く耳に入っていなかった。


「何? 何の話ですか!?」

「あなたという子は本当に……! ですから、同じクラスは難しそうですわねって言ったのですわ!」


 え、同じクラス? 何のクラス??

 麗花の顔が強張る。


「ちょっと、花蓮さん。何それ?みたいなその顔何ですの?」

「何でも何も、クラスってえ、まさか……が、がっこう!?」

「他になにがありまして!?」


 がっこう、しょうがっこう……! 小学校!!

 そうだよ私たち今六歳じゃん! 小学校って六、七歳からじゃん!

 うっそ忘れてた!! あっ、ちょっと待った!


「麗花さん! 通う小学校はどこですか!?」

「は? 私だけではなくて主だった家の子供は皆、私立聖天(せいてん)学院の初等部でしょう?」


 何言ってるんだコイツみたいな視線は痛いが、これは重大な事件である!

 麗花曰く主だった家の子供がその学校に通うということは即ち、我が宿敵である白鴎 詩月も同じ学校に通う可能性が極限に高いということだ。


 何てこった!

 催会に出ないことで回避していたつもりが、まさかの義務教育による不可避だと?!


「恐らくですけど私たち位の家格となると、同じクラスは難しいですわ。初等部は確か五クラスあった筈ですけれど、同じ時期に入学となると……男の子だと緋凰・白鴎・春日井・秋苑寺は確実に離れますわね。女の子の方は私とあなた以外、目立った家はないですし」


 それ最悪じゃん。男子四人全員攻略対象だし、誰とも被らない平和なクラスって一つしかないじゃん。

 それに私と麗花、大人の都合で絶対離されちゃうんでしょ? あ、私終わったな。


「麗花さん……。私の人生は終わりました」

「急に何を言い出しますの!?」


 背中に哀愁を背負い、フッと笑った私の目は確実に死んでいたと思う。


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