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空は花を見つける~貴方が私の運命~  作者: 小畑 こぱん
私立清泉小学校編―1年生の1年間―
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Episode48-1 麗花の初恋、関係の向上

 お兄様が私の頭に手を乗せて、ポンポンと軽く叩いて――


「僕の宿題、解けたようで何よりだよ」


 ――と、優しい声でそう告げたのだった。




「相変わらず素敵ですわ、奏多さま……」


 ほう、と頬を押さえてうっとりとそう呟きをこぼしたのは、私の左隣で布団を敷いて天井を向いて祈るように手を組んでいる麗花である。


 ちなみに私の右隣では瑠璃子さんが敷いた布団の中で、うんうんと同意するように頷いていた。


「私も。あんなお兄様がいらっしゃる花蓮さんが羨ましいです」

「紳士的で、優しくも厳しくて、勉学もできてスポーツだってよく助っ人を頼まれていらっしゃって」

「奏多さまのお噂は私の通う学校でも広まっています。女子だけでなく、男子にも憧れの存在だって」

「そうなのですわ! ファヴォリの中でも奏多さまは特別な存在でいらして」

「ちょっとストップ、ストップ!」


 川の字で挟まれた真ん中である私、左右で交わされるお兄様談議にたまらず待ったをかける。待ったをかけられた方の左右はきょとんとして、私へと顔を向けた。


「どうしましたの?」

「いやどうしたって、さすがに恥ずかしいです! お兄様は確かに妹の目から見ても格好良いですが!」


 というか、瑠璃子さんの通っている学校って、ここから駅で四つくらい先のとこだよね!? すごいなお兄様!


 泣いて落ち着いたところを見計らって、声を掛けてきたお兄様。その後はいつの間に居たのかリビングの扉からお母様が、「花蓮ちゃん~~~~」となぜか泣きながら雪崩れ込んできたり、今度は私の状態を見たお父様が気絶して運ばれたりと再び混沌と化し。


 なんやかんやで結局麗花と瑠璃子さんは、明日が日曜日ということもあって宿泊していくことになり、ベッドを一時的に移動させて私の部屋に布団を敷いて寝ているのが現状である。


「こんな時じゃないと話せないから話すのですわ。それに実際のところ、どうなんですの?」

「あ、それって今すごく話題になっているあのお話ですか?」

「え? え? 一体何のお話です?」


 麗花と瑠璃子さんは頷き合っているが、私にはまったくのチンプンカンプン。


「奏多さまに、お付き合いされている方がいらっしゃるっていう噂ですわ!」

「……えっ」


 声を潜められて告げられたその内容に、一拍遅れて理解した。


 お付き合い? お兄様が誰かと?

 何それ初耳なんですけど!!


「し、知りません。えっ、お兄様誰かとお付き合いされてるんですか!?」

「それを聞いているのは私たちでしてよ! でも、花蓮さんがその反応ということは、噂はただの噂ですわね」

「そうですね。奏多さまなら、大事にされている花蓮さんに紹介する筈ですものね」

「大事にってそんな……えへへ」


 私の反応を見てホッとしたように息を吐く麗花と、ふわりと笑う瑠璃子さん。


 大事にされているという言葉に照れが襲うものの、ハッとして今度は二人へ気になることを問い掛けてみた。


「あの、その噂ってどうして出てきたんですか? それにお二人だってお兄様と近しいんですから、本当のことじゃないって分かったんじゃ」


 そう問うと、二人は互いに顔を見合わせて。


「まぁ、そうですけど。でもやっぱり気になるじゃないですの。『聖天学院初等部の一日でもいいからお付き合いしたいランキング』第一位の奏多さまの恋愛事情!」

「何ですかその俗世が過ぎるランキングは!」

「ファヴォリのお姉さま方監修の下のランキングですわ」


 キリッとして言う麗花だが、またコソッと周りの話を聞いてたやつだなこれは。


「えっと。私の学校でも、『他校で一度でもお目にかかりたい男子ランキング』第一位ですよ、奏多さま」

「私のお兄様どんだけですか!」


 攻略対象者じゃないのにすごくないか。

 ちょ、まさか私の知らない隠し攻略対象者じゃないよね? え、違うよね??


「同学年の言う誰が素敵だの格好いいだのという話は、今ならようく分かりますわ。こ、こういうのは少しドキドキしますわね」

「憧れの人ですものね。私も、奏多さま以上に素敵な方って思いつきません」

「私にとってお兄様はお兄様ですから、微妙なんですが。……そういえば、麗花さんはファヴォリのサロンとかでお兄様とお話はしないんですか?」

「ないですわね。そもそも私があまりサロンに行きませんし」

「え、サロン行かないんですか?」


 目を丸くする私にコクンと頷く麗花。


「社交の延長線上みたいな所ですもの。お茶を飲むかお菓子を食べるかお喋りするくらいしか、することないですし。特に私があまり行く意味を感じられませんから。面倒くさいのもいますし」

「面倒くさいの?」

「ハッ。そ、それはいいのですわ! たまに行っても既に他の方に囲まれていらっしゃいますし、奏多さまの方からご挨拶していただくくらいで」

「麗花さんは私のお友達なんですから、堂々と話し掛けてもいいと思いますけど。お兄様だって気にしないと思いますよ?」

「わ、私が気にするのですわ!」


 ムムッと眉間に皺を寄せて、頬を赤らめている麗花に目を見開く。そして何だかモジモジとしている彼女を見つめ、ふととある考えが頭を過ぎった。


 そしてその考えは私の中の根底を覆すもので、あまりの衝撃に口を開くことができない。瑠璃子さんも私と同じことを思ったらしく、彼女はそれを口にしてしまった。


「麗花さんって、奏多さまのことをす、好き、なんですか?」


 途端、真っ赤っかに染まる麗花の顔。


「あ、憧れ! 憧れですわ! そっ、そんな好き、好きだなんて……っ!」


 言っていてどんどん赤く染まっていく。

 ダメだ。これはまさに表情がものを言っている。


 うそでしょう? 麗花、あの太陽編のライバル令嬢である薔之院 麗花が!?

 同じクラスの緋凰でなく、月編ライバル令嬢である私のお兄様を!? なんてこった!!


「麗花さん!!」

「はぇっ、な、何ですの!?」

「いいと思います!!」

「!?」


 布団から跳ね上がり、素早く麗花の布団へと潜り込む。


「ちょ、いきなり何ですの!? お行儀が悪くってよ!」

「いいんですそんなことは!」

「良くないですわよ!?」


 詰めて詰めてと麗花を寄らせ、はっしとその両手を握る。

 いま、私の目は、輝いている!


「麗花さん!! 妹である私の目から見てもお兄様は優良物件です! 家柄よし、頭脳もよし、性格も多少あれっ?て思うところがあるかもしれませんが、麗花さんなら大丈夫! どうぞお兄様に恋をして下さい!」

「~~!!? きゅ、急に何を言い出しますの! こ、恋って」

「素敵、素敵です! 顔を真っ赤にする麗花さん可愛い!」


 あ、麗花の頭がボンって爆発した。


「かっか、可愛くなんてありません! 何を言うんですの!」

「麗花さんは可愛いですよ。今も、すごく女の子らしくて可愛いと思います」


 ニコニコ笑って瑠璃子さんが追撃した。

 ほらほら、それ見たことか。


 事実西洋人形みたいに綺麗で美少女な麗花が照れて顔を赤くした姿は、その理由もあって大変に可愛らしい。


「お兄様だって麗花さんのこと、絶対可愛いって思ってます!」

「……それは、違うと思いますわ」

「麗花さん?」


 お兄様のことを出すと、途端先程までの元気を失くしシュンとする。

 瑠璃子さんを見るも彼女も麗花の変化の理由は解らないようで、首を横に振られた。


「自分でも、この性格がキツイものだって思いますもの。それに、奏多さまにとっては私なんて子供です。来年には中等部へ上がられてしまいますし、お姉さま方も大人っぽくて。私なんて入学したばかりですわ……」


 二回言った。

 麗花が、私なんてって、二回言った!!


 性格がキツイって言うけど、麗花のはただのツンデレだ。ツンの後のデレはツンとのギャップが大きくて、多分デレられた同年代は身悶える。


 年齢にしても、恋愛に歳は関係ないって言うし。

 六歳差なんて、結婚できる十六歳の時ってお兄様二十二歳でしょ? 十歳差婚があるくらいだし、問題なくない?


「何を弱気になっているんですか。普段の強気は一体どこへ落っことしてきたんです。常にまとわりつくくらいの執念を持って下さい」

「実の妹が言っていい言葉ではありませんわよそれ!」

「麗花さんは、良いところいっぱい持ってます。真面目で、正義感が強くて。私はそんな麗花さんが大好きです!!」

「……っ!!」


 口をハクハクと動かして声が出てない麗花ににっこりと微笑む。

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